++ Introduction ++

朝比奈学之さんが代表を務める
株式会社「農 微生物発酵研究所」が手がけている
仕事の一つが乳酸菌の研究。
ここ最近は化粧品や調味料の原料として使用するために
ハーブを発酵させたいというニーズが多いということです。

ユニークなものでは“お茶”。紅茶、抹茶、ほうじ茶などを発酵させたところ
意外に美味しかったのが紅茶で、
ワインのようなふくよかな香りが出たとのこと。
試してみないと分からないのが発酵の面白いところだそうです。

『乳酸菌のサイズは１ミリの千分の１くらいなのでヨーグルトを食べていても
全く見えないのに人体の中でいろいろと良い働きをしてくれるじゃないですか。
味を変化させる楽しみがあり、腸内環境や肌の状態が良くなるなど
健康にも貢献できて・・・。
乳酸菌は目に見えない中で一生懸命働いてくれるので、やり甲斐があります』。

「農 微生物発酵研究所」が今年7月、築地にオープンしたレストラン、
「グリーン・キッチン」のテーマは「スパイス」。
カレーのイメージが強いスパイスですが、素材の味を引き出すために利用するのが
本来の使い方であり、アーユルヴェーダではスパイスは薬。
自然に摂り入れていたら体調が良くなるという効用もあるので、
“スパイスを強調し過ぎない美味しい料理”を裏テーマにフレンチのシェフが
海鮮料理をメインに提供されているということです。

また、スリランカで運営しているホテルのテーマも「アーユルヴェーダ」。
東京ドームと同サイズの敷地に8棟あり、スパイスの産地としても有名な
オーガニックな場所ではお米も作っていて、アーユルヴェーダの先生も常駐し
トリートメントを受けて、自然の中でゆったりした時間が流れるスタイル・・・

『のんびり過ごして、携帯電話を見ないだけでも元気になる人が多いです。
携帯が通じづらいので“もういいや！”となると急に頭がクリアになるという
効果もありますね。
そういう状況を日本国内で作り出すのも大変かなと思います』。


++ Until now ++

朝比奈さんが最も影響を受けたのは
浪人生時代の英語教師だった潮田先生で、
授業中に聞いた“百聞は一見にしかず”という名言を引用して例に挙げた
“百冊の恋愛小説を読んでも一回の恋愛にはかなわない”という言葉が
強く頭に残ったそうで、
旅行記を読むのが大好きだった朝比奈さんは大学に入学すると
いろいろな国に行くようになり、その時に現地で肌で感じたことや経験が
現在の基盤を形作っているということです。

「アーユルヴェーダ」に関心をもつようになったのは
中高生の頃に読んでいた
オカルト系の雑誌「ムー」。瞑想やアーユルヴェーダの記事が載っていて、
当時はある食べ物を食べると
不思議な体験ができるといった今とは全く異なる路線でしたが、
その後、いろいろ学んでハーブの力や伝統医学についての知識を
深めたそうです。

株式会社「農 微生物発酵研究所」の設立について朝比奈さんは・・・
『大学院の研究生として
一年間、乳酸菌を勉強しに行った時に本当に面白いと思って。
先生がいろいろな国から採取した乳酸菌を3,000種類くらい持っていて、
これを応用して商品開発できたらと思って始めました。
ただ、その時は同時にアーユルヴェーダのこともやっていたので
後付になりますが、
全体を括って“予防医学”をメインにした形で「農」を立ち上げました』。

++ Right now ++

アーユルヴェーダに関わっていることから
ヨガや菜食主義を取り入れている
イメージがありますが、お酒が大好きという朝比奈さん、
お酒の席で会話する中で
考えたことや思いついたことをビジネスにできる環境にあることから
趣味と仕事に区別がないそうです。

『3年前、チュニジアに行きましたが、
チュニジアはオリーブオイルの生産が盛んで
自然栽培のオリーブ畑の山の中腹の所から
湧き出ていている温泉の塩水を煮詰めて
乾燥させて塩を作っている場所があって、
面白いと思って輸入し始めてしまったりとか。
「山塩」という形で販売しているんですけど、
海に閉じ込められた「岩塩」で
クセが無くて美味しかったです』。

旅好きの朝比奈さんが今、行ってみたいのは「チベット」。
薬草や発酵食品もたくさんあり、
アーユルヴェーダが発展したような医学もあって、
残っている書物や画を見るだけでもワクワクするそうですが、
チベットは標高が高く体がきついので行けるうちに実現したいそうです。


++ From now on ++

常に未来のことばかり考えてしまうので、
面白いことが出てきたり頭に浮かんだら
それをやっているという朝比奈さん・・・

『過去のことを考えないというか、やりながら考えるタイプ。
今、スリランカでホテルを運営していますが、変化していくのも良いんですけど、
10年後に来てもこの場所は変わらないとか、ずっとやり続けられるものを
やっていきたいなと思っています。だから、それができる環境でいたいなと』。