++ Introduction ++

パンの研究所「パンラボ」を主宰されている池田浩明さん。
パンの作り手の方に対してリスペクトがあり、
ご自身が手を出せる領域ではない
という思いからパンは一切作らず、
ただひたすら食べて、その情報を本に執筆したり
ウェブに投稿していらっしゃいます。

ここ最近、ブームになっているのは
北欧発で世界に広まっている「カルダモンロール」。
以前からお馴染みの「シナモンロール」はフワフワの生地ですが、
より小麦感があってガツっとした食感のものに
シナモンより風味にパンチがある
カルダモンとシュガーと一緒に巻き込むのが流行っているそうです。

『食の世界の大きい流れは
ナチュラルでローカルになっていると思うんですね。
ビオワイン、スペシャルティコーヒー、
クラフトビールなどの“手作り”だったり
食材への“こだわり”だったり・・・
その生産者を訪れて会話を交わして現場を見て、
そこからの思いでパンを作るというのがすごく面白いというか。
パン作りをする人も
この人が一生懸命作った小麦の味を活かしてパンを作りたい
という思いがパワーになって、
そのストーリーは食べる方に絶対に伝わってきますし、
そういったところが今一番の流れかなと思います』。


++ Until now ++

長崎出身で両親がハイカラで、
土地柄からいろいろな店で買ってきたパンを
毎朝食べていたことが英才教育になって
パンが好きになったという池田さん・・・

『フランスに行っていた時、
道を歩いていてパン屋さんがある度にチェックしないと
気が済まなくて、バゲットやクロワッサンを１個買って食べていると
中々に前に進まないという話を人にしたところ、誰も頷かない・・・
そんなことから自分が“パン好き”だということに気付きました。
そして、10年くらい前にブリオッシュを食べた時、
“プルースト現象”が起きまして、
今までに食べてきたブリオッシュが走馬灯のように駆け巡って・・・
それ程いろいろな思いが浮かぶのであれば、
文章を書く仕事をしてもいいかなと。
僕の中でパンは神聖なものだったので
自分には無理だと思っていましたが、
その時、“パン様”にお許しをいただいたような気がして・・・
自分だけの勝手な思いでパン専門のライター、ブレッドギークになりました』。

++ Right now ++

日々、パンを食べている池田さんが
食生活で気にかけているのは「全粒粉」。
小麦はタンパク質、ミネラル、食物繊維、
良質な脂質など栄養は豊富ですが、
白い小麦は粒の外側を削って真ん中だけを食べているので
栄養素は偏ってしまう・・・
そのために全粒粉のパンがお薦めとのこと。

そして、池田さんのマイブームは「牛乳・レモン・鶏鍋」。
鶏肉をかるく焼いて、
水と牛乳を半々くらい入れてレモンとケッパーを加えた
ミルキーさと酸味が合わさった鍋料理で、
具材には白菜やマッシュルームも。
その途中でバゲットや炙った食パンを合わせて、シメはパン粥やパスタでも。


++ From now on ++

池田さんが「パンラボ」と並行して活動されている
「新麦コレクション」とは・・・

『その年に穫れた小麦をすぐに挽いて
みんなで食べて収穫のお祝いをしましょう
というプロジェクトで、
九州から北海道まで15の産地と協力してやっています。
解禁日が決まっていて8月10日の九州から10月20日の北海道まで、
解禁日が北上していく中、
どこの小麦が一番美味しいという価値観ではなく、
それぞれの特徴を楽しめるような文化が
日本に生まれたらいいなと思っています』。

今、池田さんが思うこと・・・

『社会の問題はいろいろな曲がり角にあると思っていて、
農業に目を向けても農業の平均の年齢は69歳とかなんですよ。
5年後、10年後は
誰が小麦や米を作るんだという世界になってくるので・・・
今の活動の中で生産者さんに会って美味しかったです！
と伝えると喜んでくれて、
それなら皆のために今後も美味しい小麦を作るよ！
となってもらえるので、
そういう人たちがどんどん増えてきたら農業も活性化するし、
今は耕作放棄地が増えていますが、
日本も小麦が増えればそれも解消されたり
みんなが新麦を通じて自分の周り、
地元の自然や小麦に目を向けてもらえたら。
日本中どこでも美味しい小麦が出来るので、
バゲットがフランスのパリの小麦から
生まれたように、
その都道府県で出来る小麦から名物パンを作りたいんですよ。
旅行に行ってその土地で出来た
小麦の名物パンを食べたら楽しいじゃないですか。
そんな日本になったらいいなと思います』。