STORY
名古屋市科学館主任学芸員の西本昌司さん
++ Introduction ++
名古屋市科学館主任学芸員で「石のスペシャリスト」の西本昌司さんによれば
石には地球の歴史や石が経験してきたことが刻まれていて、
石と会話することでそれらを教わっているとのこと。
特に注視するのは石の模様や顔つきで、そこから石のルーツを読み取るのが
地質学の醍醐味だということです。
『例えば石の表面に縞模様があったとするじゃないですか。
縞模様にはいくつかのパターンがあるんですけど、
一つは砂浜で砂がさーっと流れて
溜まっていった跡が縞になっていることがあります。
実はJ-WAVEの床の石材をよく見ると砂粒が平行に並んでいるんですよ。
これを見ると砂浜でできた石だということが分かりますし、
貝殻など珊瑚礁にいる
生き物の破片が沢山入っていたので珊瑚礁の海だと思います。
恐らくJ-WAVEの床に使われているのは一億年以上前の化石で、
一億年以上の時を刻んできた石がJ-WAVEの床を飾っているわけです』。
J-WAVEがある六本木ヒルズについて西本さんは・・・
『六本木ヒルズの周りでベージュの石が使われていますが
私の知る限りでは日本で
2ヶ所でしか見たことがない石です。
古生代のオルドビス紀という4億5000万年くらい前の石灰岩で、
よく見るとむにゃむにゃした線が残っています。
それが実は巣穴の化石なんです。何の巣穴かは分からないですけど、
海底にいる生き物が動いた跡が模様になって残っているんです』。
++ Until now ++
名古屋市科学館の学芸員として
石の魅力や科学をどのように分かりやすく伝えれば
いいかを考えて街中の石材や面白い石に着目するようになったという西本さん。
年月を経ていくうちに
石の種類が増えて石材のバリエーションも広がっている一方、
流行り廃りもあって科学という視点だけではなく、文化や歴史という視点からも
石材が興味深くなり、最近はむしろ石材を中心に扱っているとか。
『東京に来ると動けないんですよ。六本木ヒルズだけでも一時間は軽く過ごせる。
東京駅なんか大変ですよ。大理石のモザイクとかが有ったりすると、
いちいちこれは何だろうと気になってしまって歩けないんですよね。
最近、丸の内駅舎が復元したじゃないですか。
そのドームの下にモザイクがありますが
全部大理石で造られていて、しかも大理石の周りの壁も御影石が使われているので
光が当たると反射してキラキラ輝いています。
ちょっと気にして見てみてください』。
++ Right now ++
何をしていても結局は石が気になり、石と結びつけてしまうという西本さん・・・
『スキーにも行きますが山ですから石もありますよね。
ボウリングもしますが、穴を掘ることもボーリングと言うじゃないですか。
私が“ボウリングに行こう”と言うと“穴掘りに行くの?”と言われてしまって、
旅行も好きですけど結局は石を見に行ってしまいます』。
石材という視点からすると
石材の歴史が長いヨーロッパの街が興味深いということで、
イタリアやフランスに行くと石を見るだけでも一週間では足りないとか。
『石を使った古い建物の多くは地元の石だと思うんですね。
それを見るとこの辺にはこういう石があるのかなとか、
人々がこういう石をわざわざ選んで持ってきたのかなぁとか、
そんな視点で街歩きすると楽しめると思うんですよね』。
++ From now on ++
今、西本さんが考える石材についての課題は・・・
『地球科学、地質学という分野それぞれに歴史や文化がありますが、
それらを上手く融合、
ミックスさせて断片的な知識を体系化することだと思います。
例えば文化財の石造物が破損した時に本当は同じ石で修復できればいいのですが、
必ずしも同じ石が入手できるとは限らないので、今は似ているという理由だけで
石が選ばれて修復していることがあると思います。
でも、それだけではなくて石の後ろにあるルーツなども含めて石を選んだほうが
最初に作った人の意図みたいなものまで
修復できるんじゃないかなと思うんですね』。
明らかに多様化しているという石材の今後について西本さんは・・・
『以前であれば決して使われなかったであろう石が選ばれているんです。
何年か前に感動したのは東京日本橋タワーのビルを建設中に行って見たら
柱とかはグニャグニャ模様の石を使っているんですね。
昔は模様が無い石を選ぶのが普通でしたが、
今は敢えて模様がある石が選ばれていて、
そういうちょっと変わった模様の石を使うというのは、
個性を全面に出して建築物を造ろうとしている現れかなという気がしています』。
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