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僕がこの番組で再三紹介してきた中近東の音楽が一挙に見られる、J-WAVE後援の『ラマダンの夜』というイベントが10月にシアターコクーンであるんですが、パキスタンの音楽家とかイランの音楽家とかいろいろ来るんですけど、今回はこの中から1組紹介します。 トルコのメルジャン・デデという方で、スーフィー、イスラム神秘主義の宗教音楽家なんですよ。 尺八にそっくりな葦笛(ネイ)という笛を吹くことで、それを聞きながら旋回舞踊をしてぐるぐる回って神様に近づいていくという音楽です。 彼はイスラム教徒のわりには凄くパンクな髪型をしてるんですけど、デデというのは老人という意味なんですね。 なので、ライブでステージ上にパンクな若者が出てくると彼を知らない人からは「あいつは“デデ(老人)”じゃない!」って言われたりするんですよ。 イスラムというと戒律が厳しいと思われているんですが、スーフィーは仏教でいえば密教のようなものなので、自分の祈りを通じて神様に近づいていくというイスラムの中でも特殊なんですね。 で、葦笛という笛はトルコでも一般的じゃないんですよ。 去年、イスタンブールで彼に取材したんですけど、どうやって葦笛にあったのかを聞いてきました。 葦笛は当時だったらなおさら普通では手に入らないはずだと思いまして。 そしたら80年代やっぱり葦笛は手に入りにくくて、自分で笛を作ってみたりしたんだけど、うまくいかなくて知り合いに聞いたら金細工をやってる敬虔な老人の店で葦笛を教えてもらえるということでそこへ出向いて行ったんだそうです。 そこでおじいさんに「葦笛をください」と言ったら 「何!葦笛!?三ヶ月後に来い。」 と言われ、三ヶ月後に行くと… 「葦笛か。用意できるかもしれないけど、今はまだない。三ヶ月後にまた来い。」 と、それを結局6回繰り返して、一年半後に老人のもとへ行くと美しい葦笛を持っていて 「お前の葦笛じゃ。」 彼はちゃんとお金を渡そうとしたら 「なんじゃ、それは!?葦笛はお金で買える物ではない。授かるものなのだ。」 という。。。いい話ですよね! それで彼と葦笛が出会って、そこから葦笛の勉強を始め、毎週先生の所に習いに行くんですけど。 ある日、先生の所に行ったら 「料理を作ろう。タマネギを炒めろ」と言われて 「俺は何でこんな所でタマネギを切ってるんだろう。葦笛を勉強したいのに、なにやってるんだろう。」と思っていた彼に先生がガツンと一言! 「タマネギを炒めるのは強過ぎてもダメ、弱過ぎてもダメ、それは葦笛も同じだ!」 と言われたらしいんです。 こういった葦笛にまつわる素晴らしい話は本当にたくさんあるんですよ。 彼から「キル・ビル見たことある?」って言われて 「キル・ビルの中でソニー千葉っているじゃない、あれがスーフィーに似てるんだ。」 と言うので、どう似てるのか聞いたら、 「普段は沖縄で寿司職人をやっていて、来る人が来ると2階で日本刀を作っていてサッと授けてくれる。スーフィーはそういう存在なんだよ。」 という、真理を求める奴が来た時に初めて葦笛を手にすることが出来るということなんでしょうね。 メルジャン・デデ、葦笛の音色も含めて音楽はとにかくかっこいいので是非聞いてみてください!
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アフリカ、中近東など、第3国のHOUSE,HIPHOP TECHNOシーンにめっぽう詳しいツワモノライター。 大学卒業後、音楽ソフト販売、フランス留学、2年半の放浪、インディーズ系レコード会社、クラブ運営会社を経て「よろず風物ライター」としてTVブロス、ソトコト、STUDIO VOICE、MUSIC MAGAZINE、流行通信、フィガロ、PEN、SWITCH、POP ASIAなど連載多数。 |
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