2022.02.06

Transit / RIO

二十歳のウクレレ奏者、RIOくんのアルバム。

今どきの二十代、Z世代の音楽的志向の中にインストゥルメンタルが純粋に芽生えて来てるんじゃないかなという肌感があります。

Z世代の音楽というと、パソコンを使ってサンプリングしたり打ち込んだり、切ったり貼ったりする音楽が中心じゃないの?という気もするけど、パンデミック以降、生楽器のスーパーテクニシャンとか、デジタルよりもフィジカル志向がまた強くなってる気がしてるんです。インストゥルメンタルのリバイバルな空気みたいな。

海外で言うと、リル・ナズ・Xとかもとんでもない生楽器やカントリーのサンプルをする。ああやってカラフルな音楽を作り上げていくのが、インストゥルメンタルへの憧れだったりリスペクトみたいな物がたくさん込められている気がして、その進化系がジャズやインスト・ミュージックにフィードバックされている。

例えば80〜90年代のもろクロスオーバー、フュージョン・ブーム。Stuff、リー・リトナー、ラリー・カールトン、デイヴィッド・サンボーンなど、聴きやすくてインストゥルメンタルで演奏がめちゃくちゃカッコ良くて、名うてのミュージシャンが集まってる。そういう音楽が、今の若者の間に新しい音楽として根付いて来ている気がします。

無理くりボーカルと合体しない。インストゥルメンタルをインストゥルメンタルとして磨き上げていくというのが、パンデミックの中で広がった表現では? コロナ渦でのステホーム・ミュージックへのアンサーみたいな。

80〜90年代は速弾きなどテクニックを見せるような一面もありましたが、そんなのを通り越しちゃったような、さりげなくフレージングを散りばめているような世代です。

ジャンルは変わるんだけど、ショパン国際ピアノコンクールで反田恭平さんが2位を獲ったり、角野隼斗(Cateen)さんが登場したり、歌は無いんだけど楽器単体として歌っていく、成立させていく。そういう音楽の心地よさが改めて受け入れられています。

RIOくんはリー・リトナーに認められたり、ライブで小曽根真さんと共演もしています。ウクレレというとハワイアンというイメージですが、あくまでウクレレという楽器を使って表現をしている、ジャズやロックの造詣がしっかりしているミュージシャンです。

亀田誠治

1964年生まれ、音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、エレファントカシマシ、大原櫻子、GLIM SPANKY、山本彩、D-LITE、東京スカパラダイスオーケストラ、EXILE TAKAHIROなど数多くのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012年閏日に解散。2007年第49回、2015年第57回の日本レコード大賞では編曲賞を受賞。近年は自身が校長となり、J-POPの魅力をその構造とともに解説する音楽教養番組『亀田音楽専門学校(NHK Eテレ)』シリーズも大きな反響を呼んだ。

☆ゴダイゴのミッキー吉野さんの古希を祝う最新アルバム「Keep On Kickin’ It」が発売中。全10曲のプロデュースは亀田誠治。Char、岡村靖幸、JUJU、EXILE SHOKICHI、MIYAVI、Mummy-Dなどが参加。

☆毎週月曜から木曜、夜9時50分からの10分番組J-WAVE「SPRING VALLEY MY CRAFT TIME」ナビゲート。

☆「日比谷音楽祭2022」 6/4(土)・5(日)に開催予定。

誠屋 -MAKOTOYA- Official WebSite