J.K.: 去年はコロナ禍で、多くの夏のセールが見送りになったり、店ごとに時期をずらすという分散開催だったようですが、今年はどうなのでしょうか?
和泉: 昨年は五月雨式に開催した百貨店などもありましたが、会期やスタート日がわからないという声が多くあったようで、今年は施設全体で6月25日くらいから一斉に開催されました。ちょうど緊急事態宣言が6月20日で解除された初めての週末にあたり、開店前の行列ができていた店もありました。
J.K.: ボーナスとかは減っているようですが、売れ行きはどうなんでしょう?
和泉: まだ期間中なので全体像はつかめませんが、ある百貨店ではセール初日、入店客数は減少したものの、売上は前年比およそ120%となりました。みんなお買い物したかったんだと思います。カテゴリー的には、リビングのファブリック関連が前年比約180%、衣料品が紳士・婦人ともに約140%と好調。コロナ禍で在宅時間を快適に過ごす「巣ごもり消費」だけでなく、ワクチン接種で多少希望が見え、前向きな消費につながったようです。
J.K.: セールというとどうしても「密」が心配になるのですが、その点はどうでしょう?
和泉: 昨年に比べると確かに人は出ているのですがコロナ以前~2019年に比べると、それほどの人ではないようです。店舗側も、セールの期間を長期間にしたり、入場制限をしたり、オンラインに誘導したり(店頭より先にオンラインのセールを始める)など、工夫しているようです。 行列に関しては、以前のように、足跡マークで十分間をあけてね・・といったことまではしていないところも多い印象で、心配は残ります。
J.K.: 百貨店や大型商業施設は、4~5月の緊急事態宣言に伴う臨時休業もあったので、経営への影響も大きく、セールで挽回したいでしょうね。
和泉: 春夏商品の在庫消化促進策として、6月上旬から前倒ししてセールを開始している店舗もあります。表立ってセールの表示はしていないものの、得意客へのシークレットセールを強化していたところも少なくありません。また、オンラインサイトでは店頭に先駆けてセールが始まっていました。2020年度決算を見ても、同じ規模の売上があるアパレルメーカーでは、EC化(ネットを使ったショッピング)が進んでいる方が、減益は小さくなっています。EC化をいかに強化していけるかが、今後の生き残りのカギです。