今週はITジャーナリストの三上洋さんに、進化する形の戦争ともいえる「認知戦」について解説していただきます。

J.K. まず「情報戦」と「認知戦」にはどのような違いがあるのでしょうか

三上: 第2次世界大戦以前からビラや新聞報道、テレビやラジオの謀略放送などメディアを使った「情報戦」や「心理戦」は存在しました。しかしネット社会で、こうした仕掛けを国家レベルで行う攻撃が見逃せない状況になっています。インターネットを使った「情報戦」というだけではなく、より深く人間の心理に影響を与えるということで、中国とNATOが「認知戦」が体系化しました。SNSやネット動画を使うことで、素早くかつ強い影響力で敵国の世論、文化的状況、経済的状況をコントロールしようという戦いです。中国の政策に対抗することからNATOが「認知戦」の研究を進めています。

J.K. 具体的な事例はあるのですか?

三上: 例えばロシアによるウクライナ侵略では、明らかにロシア軍が起こした事件であっても、ロシア側がTelegramなどのSNSを使って「ウクライナによるもの」と徹底的に情報を流しています。フェイクニュースを流すだけでなく、映像の加工まで行っている状態です。西側の世論である徹底抗戦をやめさせるため、平和を祈る国民の映像を流す、インフルエンサーに平和の呼びかけをさせるといったこともしていると言われています。また中国は台湾への政策として巧妙な認知戦を行っていることが報道されています。

J.K. これに対抗するためにはどうすればよいのでしょうか

三上: まずは「認知戦」があるということ自体を理解し、防御態勢を国家レベルで整えること。フェイクニュースや偽映像を政府や国の研究機関がすぐに実証してアナウンスするべきでしょう。人々がネットでのリテラシー、真偽を見分けることや噂に流されないようにすることが重要になってくると考えます。最近の例だと、ハワイ・マウイ島の大火事で偽動画がTiktokなどで拡散しています。レーザー光線で攻撃されたなどの映像です。災害や戦争など国民の不安がある状態ではこのようなデマ、認知戦でのフェイクニュースが流れる可能性があります。ショッキングな映像・ニュースが流れた場合、怪しいぞと疑う必要があります。

J.K. 特にネットでは簡単にものごとを決めたり、判断する危険性がありますね

三上: いろいろな情報が短く細切れになっていることへの警戒は必要です。