第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます。

藤代:今朝は日銀によるドル介入があったようですが、対ユーロなど、ドル以外の通貨も円安が進んでいる事についてです。

J.K. 最近は1ユーロが173円、ポンドが205円などの円安ですね

藤代: 為替の大きな流れを整理すると、FRB(アメリカの中央銀行)が利上げを開始した2022年以降、ドルが多くの通貨に対して強くなっています。ドル=円レートは110円程度だったものが一は160円を超え、同時にドルに対しても他の通貨も弱くなっています。このようにユーロ、あるいはポンド、豪ドルなど多くの通貨がドルに対して、弱くなっているのは事実ですが、円は先進国通貨で突出して弱いのが現状です。

J.K. 円が安くなる特定の理由はありますか?

藤代: やはり円の金利が圧倒的に低いことが原因です。では日銀はなぜ利上げをしないのか、あるいはできないのかを考える必要があります。大前提として利上げは景気を悪くさせ、賃金・物価を抑える手段です。現在、アメリカでは景気が強すぎて、賃金・物価がかなり上がっているので、それを冷やすためまた意図的に景気を悪くさせるため、利上げをしています。では日本経済に利上げが必要かと言えば、個人消費が弱く、経済成長率がゼロかマイナスなので、必要性はありません。為替を円高に持っていくために利上げをすると、経済に与えるダメージが大きくなってしまいそうです。

J.K.: 金融政策だけでは解決が難しいということですね?他に原因はありますか

藤代: 貿易赤字です。かつてアメリカを怒らせるほど日本は貿易で稼いでいました。2011年以降は原発が止まったことでエネルギーの輸入が増え、貿易収支は赤字に転落しています。貿易赤字の状態は常に円安圧力がかかります。どういうことかというと、輸入の代金は通常、ドルで支払います。貿易赤字ということは、輸出で得るドルよりも輸入のために支払うドルが多いということを意味しますので、常にドル買い・円売りの取引が為替市場で行われているワケです。このまま貿易赤字が続くと、円は更に弱くなる可能性があります。エネルギー政策の見直しによって貿易赤字が解消するとの見通しが立てば円高に振れるかもしれません。