今週はITジャーナリストの三上洋さんに、「VAIOをノジマが買収」というニュースについて解説していただきます
ハリー :「VAIO」といえばソニーのノートPCとして、人気のブランドでしたよね。
三上: もともとは「長野東洋通信工業」という名前で、オーディオ機器を主体としてスタート。ソニー傘下の企業として、ノートパソコンの「VAIO」や小型ロボット「AIBO」の製造を手掛けてきました。特にVAIOは、薄くておしゃれで高性能なノートパソコンとして世界的に有名なブランドになりました。しかしライバルの海外勢が強くなったことやソニー側の方針により、2014年にソニーがPC事業を投資ファンドに売却。現在はソニーの子会社ではなく、投資ファンド主体による独立企業の「VAIO」として、長野県の本社工場を拠点に製造を続けています。
ハリー :今はソニーの事業ではないんですね。ただ今でもVAIOは家電量販店などで人気がありますよね
三上: 独立したこの10年間も、高性能、高品質とデザインにこだわった製品として日本国内で人気を維持してきました。ただ半導体不足などから2022年に赤字に転落。その後に、法人向けにシフトすることで急回復しています。2023年度には売上高、販売台数ともに前年度比2倍を達成するなど、急成長を遂げているんです。今年7月には、VAIO創立10周年を記念し、世界最軽量クラスの14型モバイルモニターを発表するなど、積極的な事業展開も見せています。
ハリー : なるほど、個人より法人向けなんですね。
三上: はい。現在ではVAIOの約80%が法人向けだといわれています。実はデジタル製品は、経済安全保障上の観点から国産品の需要が根強く、 外国製の部品ばかりで、ブラック・ボックスになっていない、というのは大きな強みです。
ハリー : 買収するノジマの目的は何なのでしょうか?
三上:ノジマは家電量販店などのB2C、つまり一般ユーザー向けのビジネスがメイン。家電量販店は利益幅が少ないことなどから、買収による多角化を進めています。その中で法人に強いVAIOを持つことで、B2Cだけでなく企業向けのビジネスとしてB2B事業を買収する意味があったと思われます。VAIOというブランドの強さも魅力でしょう。ノジマのバックアップにより、今後も日本のPCブランド「VAIO」が成長することを期待したいですね。