商品ジャーナリストの北村森さんに、生活経済の観点から解説していただきます。今朝は「無名の山のブランディング」についてお話をお伺いします。

J.K. YAMAP」による、山のブランディングが盛んなようですね

北村: 「YAMAP」では富士山や北アルプスなど有名な山ではなく、それほど有名でない山にも十二分な魅力があるという点を再認識できるようになっています。これは2つの意味で興味深いと考えます。まずは標高の低い山の人気を反映できるコンテンツや、登山提案をなせる部分。標高の低い山だからと言って登山が楽だとは限らないところもあり、登山愛好家が欲しい情報に応えています。もうひとつはこのアプリで、山を訪れた記録を残せる点。まだ見ぬ存在を体験でき、アプリを通して愛好家同士で絶景などを共有できるのはユーザーにとって嬉しい励みとなります。

J.K. そして山の情報が地域の活性化に繋がるポイントとは何なのでしょう。

北村: 地域ブランディング、地域おこしで大事なのは、「すでにそこにある存在」を生かすこと。コストも最小限で済み、またおのずとプロモーションに無理が生じない。必ずしも有名でなくとも、そこに存在する山が地域の宝物として生きる(生かそうとする)という点がとてもいいといえます。

J.K. 「YAMAP」がひとつのメディア媒体となっているわけですね

北村: 国内の登山人口と「YAMAP」のアプリダウンロード数がほぼ重なるという点もまた見逃せません。そこまで浸透しているアプリを生かす、ここもまた「すでにある存在」を活用するという点で、地域にとっても「YAMAP」にとっても意義ある取り組みとなる。

J.K. 地域の魅力の掘り起こしを上手にやるヒントかもしれませんね。

北村: こうしたムーブメントを通して、ぜひ自治体には「地域にはちゃんと人を振り向かせられるものが、たとえまだ広く知られていなくてもあるのだ」と再認識して欲しいと、私は考えています。それは山に限らない話です。大きな契機になれば、このムーブメントに限らず、意義ある事例として各地の地域ブランディングの取り組みはまだまだ深化する余地があります。