航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんに「夜行高速バスの進化」について、解説いただきます。
J.K.: 夜行列車が次々と消えた今、夜行高速バスはその代わりといえますね。
鳥海: そもそも高速バスは安価な移動手段としてすっかり定着しています。特に新幹線移動ではなく、在来線で時間がかかる目的地では、バスがメインとなるところも少なくありません。そして宿泊費が浮いて効率良く移動、時間の有効活用というニーズから、夜行バスは人気がありますが、ゆっくりと寝られるためというポイントでの競争も激しいです。最近では都内の宿泊代が高騰していることもあり、滞在時間を最大限に活用しつつ、全体の旅費を抑える意味で使っている人が増えています。
J.K.: 女性に配慮したり、シートがゆったりしているというのも聞きます。
鳥海: 寝心地が良く、熟睡できるということで、各社が趣向を凝らしています。例えば腰の位置からおよそ110度の角度で、胸の高さまで太ももを上げる航空宇宙局(NASA)の理論に基づいて、浮遊感を感じ深い眠りを感じる「ゼログラビティ・シート」を導入する会社なども出てきました。その反面日本では、インド、カンボジア、中国、ベトナムで導入されているようなフルフラット座席の導入が認められてきませんでした。
J.K.: 飛行機ではフルフラットはビジネスクラスなどで採用されています
鳥海: やはり急停車時に座席から飛び出してしまう恐れがあるという安全上の理由からですが、国土交通省は先月、高速バスのフルフラット座席に関する新しいガイドラインを発表しました。ただフルフラット座席の導入はニーズの高い路線からの段階的導入、コスト対策と標準化、安全性のモニタリングが重要で、一度に全車両に導入にはならないようです。完全にフルフラットになるのであれば、少し値段が高くても昔の寝台列車代わりに利用する人もいると思います。格安バスと贅沢バスの二極化だと思います。
J.K.: 今後はどうなっていくのでしょうか
鳥海: 本来は安いことがセールスポイントだった夜行高速バス、高級化して受け入れが進むのか。今年はインバウンドが年間3600万人といわれているなか、バスの運転手不足も含めて考えていくべきだと思います。