第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、今年の日本経済、そしてNISAで関心の高まっている株式投資について解説。

藤代:今年の日本経済、そしてNISAで関心の高まっている株式投資についても。

J.K. 昨年は株価が上昇した一方で、物価高がきつい1年でした。今年は?

藤代: 今年も物価上昇は一段と進みそうですが、上昇の度合いは、政府が電力・ガスの支援を継続することもあって緩やかになりそうです。ただ、食料品など身近なものの値段が数年前の価格に戻る可能性はかなり低いと判断されます。あらゆる産業で人件費が相当上がっているので、仮に原材料の価格が落ち着いたとしても、値下げが加速するような状況にはならなさそうです。値上げというと、どうしても悪い印象がありますが、人件費が上がっているということは、働く人の給料が増えているということの裏返しですので、日本全体でみれば、値上げは必ずしも悪いことではありません。

J.K. 賃金も上がるが、物価も勢いよく上がっている。課題はなんでしょう?

藤代: 現在は賃金が30数年ぶりの上昇率ですが、物価も著しく上がっている状況です。生活をよくするために必要なのは生産性の改善だったり、エネルギーコストの低下です。資源に乏しい日本は、省エネに加え、安価なエネルギーの調達や自前の開発によって所得の海外流出を抑えることができれば、エネルギーの自国生産が進むアメリカのように豊かになれる可能性はあると思います。ただ、これが数年で実現するかは、なかなか難しい状況です。

J.K. ではインフレが続くとすれば、良い対策はありますか?

藤代: 個人でできる対策としては株式投資が有効です。あらゆるモノの値段が上がるインフレ、このあらゆるモノに、株式も含まれます。それはインフレ時には売上もコストも増加しますが、利益の絶対水準も増加するからです。たとえば売上とコストが一定の比率で上昇して2倍になれば、利益額も2倍になります。では、その時の株価はというと、理論上は2倍になります。これこそがインフレ対策で株式投資が有効と言われる理由です。デフレが30年近く続いた日本では、この考え方が定着していないので、インフレから家計を守るという発想が重要だと思います。