商品ジャーナリストの北村森さんに、生活経済の観点から解説していただきます。今朝は「NYタイムズが発表したその年に行くべき52ヶ所」についてランクインした富山市出身の立場でお話をお伺いします。

J.K. 今年は30番目に富山市、38番目に大阪市が選ばれましたね。

北村: 選定にあたってはニューヨーク・タイムズの編集部や現地特派員、または世界各地を巡っている人材が担当しているとも言われています。紹介記事ではまず、富山を「能登半島の玄関口として重要な役割を果たしている」としたうえで、「2024年の地震と豪雨で壊滅的な被害を受けた能登半島は、依然として復興の途中にあるが、その取り組みの一環として観光客の誘致を進めている」と綴られていて、その点についてなるほどと思わせられます。大阪市は大阪・関西万博などのトピックがあるためと、わかりやすいものの、一方の富山は、地元でも「どうして?」との戸惑いも見られる様子。

J.K. その驚きのポイントとは何なのでしょう。

北村: 隈研吾が設計した富山市ガラス美術館や、歴史を刻む風情あふれる祭りの「おわら風の盆」にも触れているのは、インバウンドで訪れるには意味あるものと言えます。ただ富山の飲食店について5軒記述が見られますが、個人的にはちょっと意外なところを挙げている印象。確かにいいお店だが、観光客や地元の人に愛されている富山を代表する人気店となると、別の有力候補が正直まだある。つまりとびきりの寿司屋や富山らしさのある大衆割烹の名前はそこに挙がっていません。率直な感想を述べると、かなりクセのあるラインナップなだあという感じ。

J.K. 去年の山口市も現地では選ばれたことに驚きがあったようです。

北村: 私はちょうど、その去年の発表翌日に山口を訪れていたが、行政関係者も「びっくりした」のが印象的でした。ただ「行くべき52カ所」に選出されると、その地域は相応に盛り上がる傾向にあって、去年はこの機を逃さないようプロモーションを仕掛けました。

J.K. 地域の魅力をどうアピールするかが腕の見せ所ということでしょうか。

北村: 富山の選定やその紹介内容に関して、あえて超有名どころの地域や店を外そうという意識が働いているように感じられました。オーバーツーリズムは世界的な課題であり、そこに一石をと応じ意識が強いのかもしれません。とにもかくにも、観光振興に関しては、こうした「思わぬところから脚光を浴びる」という話が結構多いので、今回の選定された結果を生かして欲しいなあと感じます。