お盆休みの間の台風で予定の変更を余儀なくされたという方も多いと思います。海外でも人気の旅行先の一つ、香港ではデモ隊が空港を占拠して、フライトがキャンセルになり、香港に行けない、香港から帰れない、という事態がおきました。
空港管理局が裁判所に申請した「禁制令」が一昨日の14日(水)に認められ、施設内の航空運行を妨げる抗議活動が禁止されたことで抗議活動は沈静化。
現在フライトはほぼ正常化しています。この抗議活動について、香港の番組特派員、富柏村さんに電話をつないでお話をお伺いします。
Q 現在の空港はどのような状況なのですか
A デモ隊はほぼ撤収していますが、空港の到着エリアの隅の方で2ヶ所、ごく限られたエリアで座り込みなどの抗議活動は続いています。
Q なぜ空港での抗議活動なのでしょうか
A これは香港の法治に関係するのですが、英国のコモンローに基づく香港では香港基本法でも市民のストライキやデモ行為の権利が認められています。企業や民間の商業施設などは適用されませんが、政府の施設も、その権利を尊重して立法会(国会に相当)にも屋外に「デモ区」が設けられていて。空港も公共施設ですのでその一環なのです。旅行者には迷惑かもしれませんが、これも市民の権利を尊重した法治の一つの形といえます。こうした一国二制度で守られるべきものが崩壊するのではないか?という危機感が、今回の抗議運動の重要な動機となっています。
Q 一般市民の生活や旅行者にとっての安全はどうなのですか?
A 報道であれだけ路上での抗議活動と鎮圧、空港の混乱など映像で流れますと、やはり市内全域が混乱のような印象を受けますが、抗議活動は特定の日時に特定の場所で行われる限定的なもので、日常の生活は普段通りです。18日日曜日にも数十万人規模という抗議活動が予定されています。
Q 香港在住の白シャツ集団の暴行など、香港内でもデモには賛否両論あるのでは
A市民はおおむね、暴力がエスカレートしない抗議活動については寛容です。地区によって例えば「新界」という、もともとイギリス統治下においても自分たちのテリトリーを主張してきた地域ではその限りではない事もありますが...。
Q 今後の収拾の見込みは?
A 香港政府に対して市民の抗議はいくつかの要求を出していますが、これに対して林鄭行政長官はゼロ回答ですし、譲歩する可能性は低いと思われます。中国政府は、林鄭行政長官の方針を支持していて、この反政府運動に米国の関与ありと非難し、問題が複雑化しています。そんな中香港居住民への税金の減免などの優遇措置を昨日発表して、なんとか抗議活動を押さえようと必死になっているといえるでしょう。つまりなかなか解決の出口が見えないというのが正直なところです。中国政府はこの事態に対して、このまま暴力化した場合、必要な措置、人民解放軍の出動等も示唆していますが、多くの市民の唯一の希望は、この抗議と鎮圧の暴力化を鎮めることです。どこまで香港が暴力を回避できるか。世界での有数の国際都市としての、そして一国二制度で特異な地位にある香港の真価が問われているといえるでしょう。