一昨日水曜日、日本時間午前8時58分に台湾の東側、花蓮県沖でマグニチュード7.2の地震が発生しました。震源の深さは15.5キロメートルで、離島を含む台湾全土で揺れを感じ、花蓮県では最大震度6強を観測しました。今朝は、番組通信員で台北在住の片倉佳史さんに回線を繋ぎお話を伺います。
Q 地震が起こった時の状況はどうだったのでしょうか
私は台北市在住なのですが、大きな揺れが長く続いた印象です。本棚などが倒壊しました。ワインをコレクションしている友人がいるのですが、こういった人は悲劇でした。私も鉄道模型のディスプレイが倒壊し、大変でした。一方で、停電や断水はありませんでした。ただ、この日は終日、救急車や消防車が多く出動していた印象です。余震は続いたものの、昼頃には通常生活に戻りました。それでも時折やってくる余震におびえる状態は続きました。
Q 被害状況などは?
台湾の発表ではマグニチュード7,2で、日本の気象庁は推定7.7としています。現時点では、10名が死亡し、山間部に取り残されている人が705人、1099人がけがをしたとされています。
Q 台湾では以前も2000人もの死者が出た大きな地震がありましたね
1999年9月21日にマグニチュード7.3を観測した中部大地震がありました。その時は死者2400名を数える惨事でしたが、今回はそれ以来で最大規模の地震でした。
Q 被害が大きかった震源地近くは、どうなのでしょう
花蓮は台湾東部最大の都市で、人口は都市圏を含めて20万ほどですが、地域の中枢となっています。観光都市でもあり、台湾が誇る景勝地・太魯閣(タロコ)峡谷の入口でもあります。
花蓮市内ではビルや家屋の倒壊が見られたほか、交通面で大きな被害が出ました。台北と花蓮を結ぶ幹線道路では大規模な崖崩れと落石が発生。台湾の東西を結ぶ中部横貫公路でも多くの落石事故が発生し、いずれも道路は封鎖中です。太魯閣(タロコ)峡谷でも落石事故が発生しています。
鉄道については、落石事故があり、運行を見合わせていましたが、これをわずか一日で復旧させました。道路の復旧まではまだ時間を要するので、しばらくは鉄道が唯一の移動手段になります。その手際よさと熱心な働きぶりに、「鉄道員の使命感と誇りを感じた」という声も聞こえました。
Q 台湾の震災対策
1999年の台湾中部大地震以来、台湾は地震研究の先進国である日本と連携の上、あらゆる努力をしてきました。具体的には法整備の厳格化、新しい建築基準の採用、補強工事の義務付け、研究強化、新技術の導入などが進められました。日本の新幹線技術が採用された台湾の高速鉄道は2007年の開通ですが、今回も被害は出ませんでしたし、台湾で最も高い台北101をはじめ、台湾の高層ビルは多くが日本の建設会社が関わっています。
今回、倒壊した物件については、1999年以前に建てられた建物がほとんどです。台湾中部大地震以降に建てられたビルでは被害が少ないというのも注目したいところです。
ただ、家屋に限らず、老朽化が進んだ構造物、インフラ基盤は数多くありますので、そういったもの管理と補強は必須です。これは今後の課題にもなっていくと思います。
Q 半導体工場をはじめとする産業面の影響はいかがでしょうか
島の西側の被害は小さく、新竹科学園区(サイエンスパーク)はファウンドリー最大手で熊本にも工場がある「TSMC」が地震当日は従業員を避難させるため、操業を停止しましたが、すぐに再開。また、液晶パネル製造をはじめとするIT産業の業者も一時的に操業を停止しましたが、ほどなく復旧しています。産業界への影響は地震の規模から判断すると、比較的小さかったようです。
Q 日本のリスナーに向けて発信したいことがあれば、ぜひお話し下さい
台湾東部では被害は出ていますが、台北や高雄については通常通りの生活に戻っています。もちろん、余震の情報などはチェックしていただきたいのですが、ぜひ旅行などにもいらしてほしいと思います。皆さんと台湾でお会いできることをたのしみにしております。