今日は、最新のメディテック(医療科学)にフォーカスします。生活習慣病の中でも、世界で患者が急増し続けていると言われる「糖尿病」今後30年間で、その患者数は、13億人に達すると予測されていますが、昨年末、医学専門誌に掲載されたのは、人の声、喋り方で、2型糖尿病を識別できるというAIの開発。「声で、糖尿病?」と驚きの技術なんですが、今朝は、このAIを開発したカナダ・トロントの研究機関、Klick Labsに事前にお話を伺いました。

人の声、喋り方で、2型糖尿病を識別できるというAIを開発した、カナダ・トロントの研究機関、Klick Labsの副所長、Yan Fossatさんへインタビューした模様をお届けします。

まずは、この、声から糖尿病を識別するというこの技術、どんなものなのか、教えていただきました。

この技術は、人の声の「音響特性」を解析する技術。声に出した内容、言葉ではなく、ピアノの音色とでも言いましょうか、ラジオの世界なら、FM、AM、とか、周波数があると思いますが、声の中にもそういった要素があり、その部分が糖尿病患者とそうでない人には違いがあるんです。

喋り方ではなく、声の周波数に着目したと言うYan博士、では、実際にどんな部分が違うのでしょうか?

最初は、その人の喋り方、どこで止まるか、息継ぎの場所などに着目する研究もありましたが、我々の研究は、アクセントや言語の違いなどでの差が出ないよう、もっと声の深部とでも言いましょうか、違うアプローチで研究を進めました。昨年10月に論文を発表したばかりのものなんですが、ブドウ糖の研究を進めると同時に、患者の声にどのような差が出るのか調査したものを掛け合わせたところ、まさに驚きの結果が得られました。偶然の産物でもある、最新技術で、現在、世界各国の研究者の方々からも注目いただいています。

では、実際に2型糖尿病の患者さんと、そうでない方の声には、どんな違いがあるのでしょうか?

女性なら、喋りが速くなったり遅くなったりする際に、少し波形が揺れる、声が震えるような現象が見られます。一方男性は、音量が上下するような現象が見られます。ただこれは、普通に人間が耳で聴いてわかるような差ではないので、ただ話しているだけでは、識別できないものです。

ですが、この男女によって全く違うことに気づけたのは大きな成果でした。糖尿病は性別とは関連づけられていない病気なのに男女で違う特徴があった。

男性は、筋力の低下につながる病気なので、声帯は筋肉を使うものなので、発声の際に音量の差が出るようになるのではないかと考えています。筋トレの後に腕がプルプルしたりするのと同じ現象ですよね。

声の特徴に着目したヤン博士。そもそも、なぜ、この組み合わせを考えついたのでしょうか?

そもそも糖尿病というのは、血糖値のモニターなど、非常に数学的な要素も含んでいる研究なので、他のデータ解析と掛け合わせやすいと感じました。そして、自分はSF映画が好きなのですが、例えば「ブレードランナー」の映画の中では、ロボットか、人間かを見極める方法として「声」が使われていました。そんなところから、声が肉体の状態を表現するのではないかというアイデアが常に頭にあり、糖尿病は、世界的にも最も患者の多い病気の一つで、2億4000万人以上が治療を行なっているとも言われるものなので、その分野で活用できないかと、始めたわけです。

糖尿病は、発見できれば、治療が可能な病気でもあるところもこの研究を始めるきっかけになったというヤン博士、では、現在の研究は、どんな段階に入っているのでしょうか?

様々なアプローチでの研究を進めているそうで、トロントは人種も豊富で、他民族国家でもあるところから、色々な言語での研究を進めています。私たちの憶測では、中国語圏の方達は、特徴が違うのではないかと考えていて、声のピッチの安定性がより高いことがわかっています。なので、今年の年末には、中国語圏の人たちにおける2型糖尿病の特徴も発表できるかと思います。

また、年末ごろには、カナダにおいて、実際に声を録音することで、糖尿病かどうか、判別するアプリを開発予定で、同じような実験をより人口が多いインドでも行う予定とか。

ということで、今朝は、声、喋り方で、2型糖尿病を識別できるという技術を開発したカナダ・トロントの研究機関、Klick LabsのYan Fossat(ヤン・フォサット)副所長にインタビューした模様をお届けしました。

今、世界中のデバイス開発社や大手プラットフォームなどと話し合いを行なっているそうですが、この技術を活用したアプリがスマートフォンに搭載される日も遠くなさそうです。ヤン博士が、このラジオを聞いた日本の医師や研究者の方で、興味を持たれた方はぜひ連絡を!とおっしゃってました。日本での展開はまだのようですよ。