昨日は、79回目の終戦の日でしたが、その悲劇を二度と繰り返さないために、戦争の悲惨さ、そしてその教訓を次世代に伝えることの大切さを感じる日でもあります。そんな中、今日、公開となるのが劇場版「アナウンサーたちの戦争」。この作品、ラジオが戦争の武器として使われた時代のアナウンサーたちの活動と葛藤を描いた物語となっています。
NHKスペシャルで放送されたドラマを劇場版に再編集したもので、出演は、森田剛さん、橋本愛さん、高良健吾さんほか。ラジオが戦争の武器として使われた時代のアナウンサーたちの活動と葛藤を描いた物語となっています。今日はこの演出を手がけられた一木正恵さんにお話を伺います。
JK :一木さん、どうぞよろしくお願いします。個人的にも非常に数奇なご縁を感じておりまして、実は森田剛さんが演じる和田信賢さんがヘルシンキオリンピックの放送の為に給油のために立ち寄った那覇空港で、私の父、川平朝清がインタビューをさせてもらったというご縁があるんですよね。
これははっきりと明確にこの事実っていうのはNHKの歴史の中でも極めて重視されているところなので、昨晩、NHKに残る音声を確認してきたんですけれども実にしっかりと和田信賢さんの本質を捉えるインタビューをされていました。はいもう本当に驚きました。この題材、一木さんはどんな思いで取り組まれた作品だったのでしょうか?
一木さん:まずはNHKに残る資料というものがあったんですけれども、戦争で相当、本来のオフィシャルな資料を焼却処分して隠して行ったということがありまして、しかしながらやっぱりこの事実をなかったことにすることはできないと言うふうに考え、口述筆記や手紙という形で残された資料を放送百年を目前に控えて、一度体系的に時系列や正誤を調査しながら、しっかりと作品として作りたいという思いから始まりました。そして、この作品を通して、伝えたかったのは、
- この物語に登場する人物というのが極めて普通の常識人であったという事実。その普通の人々が飲み込まれていく狂気から目を逸らしてはいけないということ。
- アナウンサーたちというのは決して軍や国家の被害者ではないということ。
- ドラマという形にこだわり、ひとりひとりの心の内にはいかなる戦いがあったのか人間として理解して、この物語を通して、今を生きる人々に追体験してほしい、
そんなことを一緒に考えてもらいたいと思ってこの物語を伝えたいと強く思いながら作品に挑んで行きました。
JK :登場人物である各アナウンサーが思っていたことを言語化するにあたって、相当な思いと大変なことがあったのではないでしょうか?
一木さん:各アナウンサーや登場人物は、ほぼ99%実名なので、ドラマを盛り上げるために登場人物の生き方とか生き様とは違うセリフや考え方を提示することは絶対に許されないと言うふうに考えておりましたので、事実を取材し調査し、この人だったらこういう言葉を言うであろうということに関しては、あらゆる資料を丹念に丹念にあの読み込んで一つ一つ本当にここまであの調べるんだろうかと言うところまでたくさんのスタッフとともに調べて考えていたあの台詞の数です。もう一つ重要なこととして遺族とあのお目にかかって遺族の方が見る父祖父っていうことあの姿を丹念に聞き取ったっていうことが大きかったかなというふうに思います
JK :そして苦しくも昨日、ということになるわけですけれども8月15日、終戦の放送これ玉音放送で進行役を務められたのが和田信賢さんなんですよね?
一木さん:そうですね。和田さん進行役を務め、それからほとんど陛下の玉音放送で多くの物語が終わるんですけれども、実はその後もう一度、今のお言葉とはどういうお話であったのかということを40分にわたって解説しているのが和田さんです。
非常に情に訴えるとかそういったものを一切排除した鎮魂と何かを鎮める非常に淡々とした落ち着いた、人の心を鎮めるような言葉であったと言うような証言がありますので、そういったものを解きほぐしながら私たちはドラマにしてきました。
JK :監督から見た主演の森田さんの演技はいかがでしたか?和田信賢さん、演じ切っていますね!
一木さん:本当に彼の演技をみていると、なんかスキージャンパーみたい感覚を見てるような気がするんですけれども、何て言いますか本当に、ありえない高さからポーンと自分の身を投げるような演技の現場やその台本の世界やそしてまあ未知の世界に対して、自分の着地点があると信じて飛んでくるような。
和田さんの言葉、本そういったあらゆるものを彼は目をとうして和田さんの像を作り上げていったかなと思います。その準備があってこそあとはやっぱり現場に身を投げるような、現場を信じて飛び込んでくださるような本当に魂の演技というのが、このアナウンサーたちの戦争の本当に魅力の大きな魅力の一つであると思います
劇中にも「(ラジオという)夢の機械を悪魔の拡声器にしてしまった」というセリフが登場するんですが、ラジオアナウンサーが「電波戦士」と呼ばれた時代。その活動の記録、そして彼らの葛藤を、ドラマ版では泣く泣くカットした渾身の場面などを含めた劇場版として公開となります。ぜひ、劇場に足を運んでみてください。