世界で注目を集める日本食品。海外からの旅行者の方たちも、来日の目的に「食」を挙げる方、多いですが、納豆にアイスクリームにパックごはん・・・実は、これ、近年、輸出量が急増しているという日本の食品なんです。そんな流れの中、これから海外でのビジネスチャンスを狙う生産者やスタートアップの方たちも増えているようです。そこで、今日は、アメリカ・シリコンバレーと東京を軸に日本発のスタートアップの北米事業化の業務支援などを行う、Wildcard Incubator LLC 代表の熊谷伸栄さんに日本のフードテックの海外進出事情、そして、進出のポイントなどについて、お話を伺いました。
日本企業やスタートアップの北米事業化の支援などを手がける熊谷さん、アメリカ市場の特性などもよくご存知だと思いますが、日本発のフードテックに対するアメリカ市場の反応、期待値はどんなものでしょうか?
スタートアップに対する反応に限って言えば、正直まだまだ薄い。そもそも、日本からのスタートアップの事例がまだ少なすぎて、反応そのものがまだ少ないというふうに捉えてます。
実際に、フードテックに絞り込んでいくとどんなイメージで、どんな展開や事例があるのでしょうか?
全体的にものづくりの技術を応用させたり、日本の発酵文化や、日本酒、ビールといった醸造文化と言われているものがあります。例えば、お味噌。味噌そのものもあれば味噌に少し手を加えて、西洋剣の食文化の消費者の方々に合わせたような、「和食の再定義」のような形で進んでいらっしゃるケースがあります。あとは、ラーメンですね、製麺で、こんにゃくラーメンというものがあると思うんですが、自社開発として、OEM(売り先のブランドで売る)っていうことですね。あとは表に出ない技術ですね。食品メーカーや外食メーカーの工場の中に日本のものづくりの技術が入り込んでいるケースです。
日本の企業がそういったところに入っていく可能性はどう開拓するのが良いのでしょうか?
いろいろな答えがあると思うんですけども、逆にそのスタートアップで進出できているものが少ないとお話した理由を突き詰めていくと、その理由としては、一つは政府系の機関に支援されて展示会に参加してもそこで終わってしまうケース、2つ目は、消費者の声を聞こうという動きが非常に少ないこと、そして、まず日本のマーケットで売上を作ってから次にアメリカを進めていこうと考えるケース、などがあると思います。結構回り道をしてしまうというか・・・あんまり頭で考えすぎちゃうと行動に移って行かないようで。
なので、私たちは、実務支援というか、ほぼ一緒になって行動させていただくので、コンサルタントいうより、商社に近いような動きをさせていただいています。
熊谷さんのWildcard Incubatorがスタートさせた「日本発のフードテック・スタートアップのアメリカ事業化支援プログラム」この第一弾として選ばれたのが、株式会社Kinish。こちらの選定理由は?
Kinishは、植物農業で乳製品関係を開発している会社で、サステイナブルなスタートアップではあるんですが、選定したポイントは、そこではなく、彼らの創業経営者の方が描かれているその経営方針が完全に我々と一致したというところですね。アメリカの消費者の声を聞く、なるべく早い段階でお客さんと繋がりたいという思いがあることが重要でして、私どもは、スタートアップの新しい商品を実験的に販売できるようなシステムになっていて、アメリカの消費者に実際に接してもらえるので、我々としてもそういうこうマインドセットなら一緒にやっていけるねということで、選定させていただきました。
日本企業といっても「和食」でないものが注目されていたり、和食好きの皆さんとはまた全く違う消費者の皆さんがいらっしゃる・・・これはどういう現象なんですか。
世界のトレンドとしてサステナブルっていう言葉に付随する動きがあると思うんですが、フードテックっていうのもその一環だと思うんです。そのテーマの中で日本の食文化の強さというのが、今、再評価というか再発見されている時期なのかなと思います。例えばその和食もアメリカですとその現地の感性に再定義してあげるところがポイントだと思うんです。例えば、アメリカの某大手オーガニックスーパーが日本のお煎餅に興味を示して、アメリカ人のテイストを少し施すことを考えたり・・・日本食をただ日本食専門店に売るではなく、どういうふうにリパッケージするかっていうところだったり、そういうところが難しいところでもありますが、面白いかと思います。
日本発のスタートアップの北米事業化の業務支援などを行う、ワイルドカード・インキュベーターズ 代表の熊谷伸栄さんに日本のフードテックの海外進出事情、そして、進出のポイントなどについて、お話を伺いました。
ちなみに、ご自身でもアメリカでの飲食の展開を考えているという熊谷さん、日本の食を「和食」というカテゴリーにはめずに考える、「フードテック」や「トレンド」といった言葉に惑わされない商品や開発を狙っていくことが重要とお話しされていました。