海外のインデペンデント系の映画祭で数えきれないほどの賞を受賞し、話題となっている映画「最後の乗客」にフォーカスします。10月から日本でも順次全国公開中のこの映画ですが、東日本大震災のその後を描いた作品です。今朝は、宮城県出身でニューヨーク在住、この映画を手がけた堀江貴監督に事前にお話を伺った模様をお届けします。

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JK:堀江監督、おはようございます!堀江監督はNY在住ということで、時差があるんですが・・・堀江監督が手がけられた、映画「最後の乗客」。拝見させていただきました。

東日本大震災から10年、東北の街で夜の道を走らせていた一人のタクシードライバー。人気のない通りで乗せた若い女性客は、津波被害を受けた「浜町」に行ってほしいという。不審に思いつつも目的地に向かっていたところ、突然路上に幼い娘と母親の2人組が飛び出してきて・・・こちらは、55分の長さの自主制作映画ということですが、世界の様々な映画祭を席巻されています!

サンディエゴ芸術映画祭「最優秀インデペンデント映画賞」、カンヌ世界映画祭の最優秀インディペンデント映画(低予算部門)、スウェーデンのボーデン・インターナショナル映画祭(BIFF)の初長編映画ノミネート、モントリオール・インデペンデント映画祭の最優秀フィクション映画など・・もう数え切れないほど!どんな感想が寄せられていますか?

堀江監督:皆さん共感するのは親子がテーマというところ。例えばボストン映画祭の時ですとマサチューセッツ大学で行われるんですけどそこに出席された教授の方などは、すごく心に突き刺さったといってくださって。その教授は娘さんを半年前になくしてしまったそうで、すごく癒されたと言ってくださったり、あとは結構ニューヨークだといろいろな国から来てる方もいて、感動したとか、展開が読めなくて引きこまれたとか、若い人たちもあの感動してくださったりしてたんで、年齢とか性別とか関係なく共感してくれたっていうところがすごい嬉しいなあと思いました。

JK:自主制作ということですが、どんな経緯で映画を作ることに?

堀江監督:自分がニューヨーク在住で、そこに東北と北海道の北東会というのが、あるんですけが、そこで追悼式をずっとやってたんですけど、ニューヨークには、日本の様々な地方から人が来ている中で、最近は数多くの災害がある中で東北の東日本大震災を五年続けてると風化してちょっと話すのもはばかれるような感じになってしまったっていうところを感じて・・・ただ、宮城出身なのでそれを忘れないために何かできないかなと思いまして、で、今後どう被災地をサポートしていけるんだろう、活動していけるんだろうと考えた時に、映像の仕事してるんだから、映画を作ろう、と。

JK:クラウドファンディングでは2日で目標を達成。このほど、日本でも公開となりましたが、実際に被災された方たちからも感想が寄せられましたか?

堀江監督:今回、石巻で上映があったんですが、どのように受け止められるかって自分ですごく不安なところがあったんですけど、見に来て下さった方々が心にトラウマを持っていらっしゃる方も多くいらっしゃって・・・

例えばある男性は、東日本大震災の当日、逃げる途中で車が並んで渋滞になっていて、その窓を叩いて「逃げてください」って言いながら逃げたそう。その後、津波を目のあたりにして、自分はあの時もうちょっと強引に無理やりにでも引き出して一緒に逃げればよかったと自責の念に駆られた方がいて、そういった方がこの映画を見ることによって優しい気持ちで包まれたり、解放されてこれから少し前向きに歩いていけるっていうようなそんなあのコメントたくさんいただいて本当によかったなって。

JK:ついつい「あの日を忘れないために」という言葉を使ってしまっていますが、その言葉で苦しんでいる人もいたり・・・難しいですよね?

堀江監督:そうですね。もともと義援金集めなどニューヨークでやってた時に追悼式などに絶対来ない方もいらっしゃって・・・5年目にお会いしてそういう気持ちを聞いて、それがこの映画のきっかけにもなっています。

JK:更に、この映画のきっかけともなっている『リバース Tohoku 2021 ~輝く未来へ~』プロジェクトとは?今後の展開は?

堀江監督:もともとこの映画をやる時に映画を作りました、というだけではなく、この映画を通して、宮城の次の世代の人たちと一緒に何かできればと。例えば映画祭とかに持っていくポスターを学生さんたちが担当したり、メイキングを作ったり、この映画に関わることでそういう経験ができたら、これからの未来で自信を持って、いろいろ未来に向けて頑張ってくれるかなと思って参加してもらってたんです。

あと、これだけじゃなくて「卵おにぎり」というのが出てくるんですけどその卵おにぎりを出そうと思ったのは、もともとお米や海苔が宮城の特産だったので、そこで紹介できるかな、と。

次回作でも卵おにぎりを作って食べさせてもらったりとかしてそういったことを体験してもらってまた未来に繋げばいいなとかそんなことを考えて今活動してます。

10月から順次全国公開中の映画「最後の乗客」の堀江貴監督にお話を伺いました。

震災から10年を機に作られたこの作品、「あの日を忘れない」という言葉の一方で、「あの日」から前に進めない人たちの存在に思いを寄せた作品となっています。ちなみに、お話に出ていた「卵おにぎり」は、堀江監督の次回作、ドキュメンタリー映画  「BENTENYA×ROUTE66」の上映会場でも、振る舞われるようです。「最後の乗客」は、渋谷ユーロスペース他で公開中です。