今日注目するのは、フィンランドの教育。フィンランドといえば・・・世界一幸せな国、としても有名ですが、その教育も日本とは全く違い、幼少期から「人生観の知識」、「より良い人生とは何か」「自分とは何か」を考える授業が行われていると言います。無償で、塾もなく、国立の大学で修士課程、博士課程へ進む学生も多いという高等教育が充実しているフィンランド。今日は、フィンランド在住で、ヘルシンキ大学非常勤教授、「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」など数々の著書をもつ岩竹美加子先生に事前にお話を伺った模様をお届けします。
*先生の新刊「フィンランドの高校生が学んでいる 人生を変える教養」では、まさに、「世界一」と言われるフィンランドの教育について書かれています。自分は何者なのか、自分にとっていい人生とは何なのか、社会はどうあればより良いものだと思えるのかなどを学ぶという授業。これはどう学ぶ物なのでしょうか?
教室の中では、特に際立って変わったということはなく、一つは、宗教というものに対する考えなんですよね。やはり宗教というのはフィンランドも社会に非常に重要な意味をもっていて、でも宗教は持ちたくない、宗教的には考えたくないという考え方もあって、宗教的に扱われてきた課題を宗教ではなく考えるというアプローチです。
*フィンランドの学校ではどんな教え方がされているのでしょうか?
基盤というか出発点として、子どもの権利というのが非常に意識されていて、自分に人権が認められていて権利がしっかり認められているということから出発しています。そして、実際にクラスを見学すると、例えば、YouTubeなどを見て、その時は、携帯電話をどんどん最新機種に買い変えていく白人男性がいて、でも一方ではその携帯を作るためには鉱石を手で掘ったりしているアフリカの人たちがいるという実情を見せたり・・・そして、こういうやり方でいいのか?消費行動、そしてグローバルな経済まで内容が及びます。そして、そのビデオを見た後に生徒が「良い人生に必要なものは何か」を考える、そんな授業でした。
*フィンランドの人生観の知識の授業と日本の道徳の授業、この違いはどんなところにあるのでしょうか?
やはりフィンランドではとにかく批判的に考えることがとても大事で、強調されています。批判的に考えなさいって。それはもちろん自分に対しても批判的で、批判的というのは反対するとか逆らうとかではなく、一般に言われていることを疑ったり、知識に批判的であるということを強調しているところがいいと思います。それは、民主主義のためにとても重要なんです。やはり基本的な批判視点を持っつことで、社会が変な風に流されたりしても止められたり、良い社会というのは良い人生を聞くために必要な物なので。そして、対話ですよね。人と本当に本当に対話すること。偏見などを持たないで相手を尊重しつつ考えを進めていくという。それが本当に重要視されています。
*そういう細やかな指導や対応にはお金もかかりますね?
フィンランドでは、少人数で指導が行われます。1クラス、最高でも25人、中学の平均は、教員一人に生徒8人と言われていて、実際それが普通だと思います。教育と医療が柱になっていて、サービスを提供するのは国の責任であるという考え方が浸透していますので。
世界一と言われるフィンランドの教育に注目して、ヘルシンキ大学非常勤教授、「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」など数々の著書をもつ岩竹美加子先生にお話を伺いました。日本の道徳と全く違う、フィンランドの「人生観の知識」の授業。先生の本、「フィンランドの高校生が学んでいる 人生を変える教養」は青春出版社より発売中です。