毎月1回、税についての「頼れるパートナー」として、税理士さんによるわかりやすい税のワンポイント解説をお届けしています。今朝は、リスナーのヨシアキさんからの質問にお答えいただきます。まずは、質問の内容です。

25年間勤めた会社を 円満退社することになりました。会社の業務整理に伴う、会社都合による退社で、退職金が支給されました。そこで質問ですが、自己都合と会社都合では税金の金額は違うのでしょうか?

はい、退職金について、自己都合と会社都合で税金の金額は違うのか?というご質問です。東京税理士会の岩崎恵利子さんに教えていただきましょう。

退職の理由によって、所得税や住民税などの税金の金額に違いはありません。自己都合の退職と会社都合の退職とで、大きな違いがでるのは、いわゆる失業保険ですね。これは、会社都合の場合に優遇措置があります。また、国民健康保険に加入される場合には、会社都合なら、保険料の軽減が受けられる場合があります。退職金の所得税と住民税は源泉徴収されます。勤務先に所定の手続きをしておけば、原則としてご自分で確定申告をする必要はありません。

「失業保険」、「国民健康保険」では、会社都合の退職の場合は優遇措置があるけれども、退職金にかかる「税金」そのものの金額については自己都合でも会社都合でも同じ、ということですね。それでは、退職金の支給金額によって税率は変わるのでしょうか。

住民税の税率は一律10%です。所得税は所得金額が大きいほど高い税率をかける累進課税の対象です。税率は最低で5%、最高は45%になります。ただし、退職金は長年の勤務に対して、一時金として支払われるものですから、「退職所得控除」を設けたり、ほかの所得と分けて課税するなど、税の負担が軽くなるようになっています。一般的な「退職所得」は、退職金の額から「退職所得控除額」を引いて、これをさらに半分にした金額になります。この「控除額」は勤続年数によって決まります。20年以内なら1年40万円、20年を超えていれば、超えた年数だけ1年70万円で計算します。ご質問の方は、勤続年数が25年ですから、40万円×20年分の800万円に、70万円×5年分の350万円をたした1150万円が退職所得控除額となります。

税金の対象となる「退職所得」、というのは、支給された「退職金の総額」から、「退職所得控除額」を差し引いた金額の半分です。長い期間勤めると「退職金の総額」は大きくなりますが、特に、勤続20年を超えると「退職所得控除額」が さらに大きくなります。

つまり、税金の対象となる「退職所得」が抑えられる、ということですね。今月のワンポイント解説は、「退職金」をテーマにお送りしました。東京税理士会の岩崎恵利子さん、ありがとうございました。