担当編集者が明かす、マンガ『進撃の巨人』誕生秘話。
空前の大ヒットとなっているマンガ『進撃の巨人』。著者の諫山創さんは、これが連載デビュー作。さらに、のちに担当編集者となる川窪慎太郎さんも、当時、入社1年目の新人でした。そもそものはじまりを川窪さんに教えていただきました。
「初めて進撃の巨人という作品に出会ったのは2006年ですかね。作者の諫山さんが福岡の専門学校からマンガを講談社に持ってきてくださって、原稿を見させていただいたのが僕だったんですけど、それが『進撃の巨人』という読み切りの作品だったんですね。それは今の連載している作品とはだいぶ内容が違うんですが、基本設定、人間が巨人に襲われる世界感とそれに立ち向かうというところだったり、主人公が巨人になるというところは今といっしょで、そういう原形を諫山さんが持ち込み、という形で持ってきてくださいました」
きっかけは、講談社、週刊少年マガジン編集部への「持ち込み」でした。
「諫山さんは専門学校の夏休みに、その学校が主宰しているみんなで東京に行きましょう、自分の行きたい雑誌の編集部にマンガを持ち込みましょうという会があってそれでいらしたんですけど、僕は当時会社入って1年目だったのでいわゆる電話番をしていて、諫山さんが電話されたときにたまたま僕が電話に出て、持ち込みだったので、僕が見させていただきます、という経緯ですね」
年間何百人もが、いわゆる「持ち込み」で編集部の門を叩きます。その中から デビューできるのは、、、、
「うちは2つマンガ賞がありまして、ひとつは毎月やっているMGPという月例賞と、もうひとつは半年に一回、新人漫画賞を主催していまして、半年に一回のほうの賞で佳作以上をとるとデビューになるんです。受賞作が掲載されるんです。最初の『進撃の巨人』という作品は月例賞に出しました、一作目だったので。そこで賞を取れたので、半年に一回の新人賞でいい賞を目指しましょうということで、絵の練習をしたり、お話づくりを一緒に打ち合わせしながら、2作ほど作品を諫山さんに作っていただきました」
諫山創さんは、新人漫画賞で入選。今度は、連載作品を考えることになりました。
「諫山さんに連載案を考えましょう、ということで話しているときに、ちょうどいま『進撃の巨人』を連載している別冊少年マガジンという雑誌がうちの編集部から出ることになったんですね。それのコンセプトが<あなたの絶望を描いてください>というものでそちらは、コンペ形式だったんです。で、諫山さんにコンペに向けて案をいくつか持ってきてくださいとお願いして2つか3つくらいアイディアを持ってきてくださったと思うんです。それでその話を聞いていたんですけど、もう一歩ピンとこない点があって、僕の中で『進撃の巨人』の読み切りがすごくインパクトがあったんで、あの『進撃の巨人』、読み切りでは書き切れていない設定とか、こんな風にしたかったという想いはあるんですか?と聞いたら、あれ、実はこういう設定があって、と話しだしたのがとても面白かったんですよね」
2009年の9月。 別冊少年マガジンにそのマンガは掲載されました。『進撃の巨人』が、ついに、動き出したのです。しかし、巨人の前に立ちはだかった「壁」がありました。「どうしてもメジャーとか分かりやすさとか大衆向きということを意識してほしいというのが僕の想いで、諫山さんはそれとは逆と言いますか、メジャーで誰もが分かるというよりは、一部の人しか仮に分からなくても、強いインパクトを残したいというのが諫山さんの目指す方向で、一年間くらいですかね、僕は諫山さんが提出してきたものに対して、もう少し分かりやすくしようと話して、諫山さんは、分かりやすくすることにどれほどの意味があるのかと話しあったりとか。あとはやはり、連載って結構特殊なんですね。毎話毎話、起承転結をつけなくちゃいけなくて、2話目3話目に続くので連続性もつけなきゃいけないし、1刊分でも起承転結をつけなきゃいけないし、1話分でも起承転結がなきゃいけなくて、じゃあ、どうやってお話を作っていくんだ、というのをつかむまで苦労した気がします」
単行本は、4刊目で100万部を突破。『進撃の巨人』は、人気を加速させていきました。いまや、累計5000万部の大ヒット。その理由はおそらく、編集者 川窪慎太郎さんが、最初に編集部に持ち込まれた作品を読んだときのこの感想にあります。
「まだまだ荒削りな作品だったんですけど、当時、諫山さん19歳で、たぶん原稿を完成させるのも2~3作目だったと思うんですね、きっと。なので技術的には荒削りだったんですけど、でもとにかく原稿から、大げさにいうと、ほとばしるパワーのようなものというか、自分はこのマンガを描きたくて描きたくてしかたないというか、このマンガを描かないと先に進めないという情念というかパワーが強く感じられました」
単行本は、現在17刊まで 発売中。
川窪さんいわく、「あと3年くらいは続くでしょう」という 『進撃の巨人』。はたして、どんな結末が待っているのか??物語は続きます。