去年の夏、ソニーが開設したウェブサイト First Flight

ページをのぞくと、アロマディフューザー・腕時計・電化製品のリモコンといった商品が並んでいます。たとえば、新しいアロマディフューザー"AROMASTIC"の下には『達成金額』として、ある金額が表示されています。この商品はいま、クラウドファンディングを受け付けているのです。このような手法も使ってソニーが挑戦している、新しい事業を生み出すプログラム。その始まりをソニー株式会社 新規事業創出部 担当部長の小田島伸至さんにうかがいました。

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「だいたい今から2年前くらいに新規事業にかかわる現場のメンバーで集まって、どういう風にしたら合理的に科学的に新規事業が生めるだろうか?ということを夜な夜な話しました。ブレインストーミングみたいなことをして、少しずつ課題をあぶりだしていって、こういう風にしたらうまくいくんじゃないかということをプログラムにしたんです。それを社長直轄でやる、というプログラムにするという風に仕立てて社長に提案をして始めました。もともとソニーは新しいことをやりたい人がたくさん集まっているので、ずっと昔から新しいことをどんどん出していたんですけども、そこにいろんな現代の新しいツールを当てはめていくともっと生まれやすくなるんじゃないかなと考えたのがきっかけで。」

2014年、全社員に向けて、新しい事業の募集=オーディションがおこなわれました。実に、1300人から500件ものアイディアが届きました。

「そのどれもが今の事業部では拾い上げられないものなので、眠ってたんだな、と。すぐに実現できるものもあればもうちょっと検討したほうがいいものもあるので、レベルには差がありますが、このプログラムはこのオーディションを通ったあとに育成プログラムがつながっているので、すぐに出せるものはそこですぐにお金と組織を提供して育成して出せると。その出せる先がFirst Flightだったり、あるいはデパートで売ったりとかしています。これが最速で1年とかで出せるようになっています。」

クラウドファンディングやEコマースの機能を持ったFirst Flight というウェブサイトを立ち上げた理由。それはどんなことだったのでしょうか?

「まったくの新規領域なので、ソニーの社員だけ十分な知識があるとは必ずしも言えないとか、ユーザーの声をもっと取り入れながらよりユーザーにささる商品を出したい。あるいはアーリーアダプターと言われるお客さまにスピーディに少量で販売できないかというような課題にあたりまして、このFirst Flightを立ち上げることにしました。これは7~8割の完成度の段階でお客さまに見ていただいて、声を聞いてフィードバックを取り入れながら120点を目指していく、ということを狙っていまして。具体的には、Teaserというサイトで企画をお見せしたりとか、その中で評判のいいものは販売開始の数ヶ月前にクラウドファンディングのサイトにのせて、そこからさらに完成度を高めています。なので、今まで100%だったのが120%まで持っていけるんじゃないかなと思っています。」

開発中の商品をサイトに掲載。クラウドファンディングを実施しながら広く意見を求める、という仕組み。では、実際どんな商品があるのかというと、、、

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「wena wristという時計なんですが、ヘッドの部分は従来のアナログのデザインをそのまま搭載していまして、おさいふケータイとかログをとるなどの機能を裏側のバンドに詰め込んでしまう、というコンセプトの商品になります。スマートウォッチのデジタルの機能を楽しみたい、でも時計のデザインが好きだというお客さまに2度美味しい商品になっています。この"詰め込む"というところにソニーのものづくりの技術がいきていまして、ここに詰め込むことが難しいんですが、こういうところで役立てる商品を出していきたいと思っています。

7~8割の段階で見せることがよかった、という一例なんですが、ここのメンバーは若いメンバーなので針がよく見えるんですけど、シニアの方は針が見にくいという声がありましてその意見を取り入れて、文字盤の視認性を上げています。」

このプロジェクトのチームは、まだ入社2年目。年齢に関係なく誰でもチャレンジできるのが、ひとつのポイントです。そして、そのチームにも直接応援の声が届きます。First Flight プロジェクトマネジャーの小澤勇人さんはこんなことを教えてくださいました。

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「このサイトにはコメントという機能がありまして、支援してくださった方からコメントをいただけるようになっています。やってみて驚いたのは、ネガティブなコメントがひとつもなく、素晴らしいポジティブなコメント、もしくはメンバーを応援してくれるコメントのようなものがすごくたくさん集まった、ということです。

こういったお客さんというのは実際、本当にほしいと思った方が真摯に向き合ってコメントをしてくださっているので、本当にこういった価値がほしいとか、こういう機能がほしいというのを強く受け止めることができる、という声をプロジェクトメンバーも上げてくれたことが、これまでなかなかソニーにはなかった価値観として、我々も受け止めることができたと思っています。

こういった、いま頑張ろうとしている人たちを応援してくれるみなさんが、場を盛り上げていろんな人を巻き込んでいくという時代になってきている、という意味でも、こういうストーリー性も商品の価値として提供できていると。」

最後に、ソニーの新規事業創出部 担当部長の小田島伸至さんにうかがいました。今後のヴィジョン、どんなことを思い描いていますか?

「ふっと見回してみると、ものづくりがないと成り立たないサービス、もっとものづくりとか商品があればよりよくなるサービスはたくさん眠っているので、その辺を全部手がけていきたいなと思っています。

やってみてわかったのは、ソニーは新しいことをやりたい人や元気なエンジニアが多いなと。ものづくりが好きな社員も多いと思います。日本中の元気でやる気のあるエンジニアが、ここに来れば一番早く自分の夢を実現できる、そういう場所にしていきたいと思います。それは日本に限らず、世界中のエンジニアやチャレンジャーが集まってくるようになるともっと面白いだろうなとも思います。世界中のチャレンジャーがオーディションにエントリーしてくれて、それが数ヶ月後にはFirst Flightから商品として出ていってお客さまを楽しませている。そんなことを実現したいと思っています。」

アイディアはまだまだ眠っている。

それは、人々の暮らしを、快適に・楽しく・豊かにするアイディア。

その発想を商品として届けるべくプロジェクトは、いまこの瞬間も進行中です。

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ウェブサイト First Flight