ドラマ『逃げ恥』に先立って作られた星野源さん『恋』のミュージックビデオ。ここでは振り付けを担当されたMIKIKOさんのダンスカンパニーELEVENPLAYがダンスを披露しています。"恋ダンス"の生みの親、MIKIKOさんにお話を伺いました。

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「ミュージックビデオの打ち合わせをしているときに、ドラマのエンディングでも踊ることになる、というのは聞いていました。ミュージックビデオのほうはダンサーがELEVENPLAYの子なので難しい振り付けというか、普段やっているようなものを今回は取り入れたいなと思って振り付けをしたので、ドラマのときはまたアレンジしてというか、簡単に振り付けしなおそうと思ってお話を聞いていました。」

星野源さんから曲に込めた想いを聞き、それを元に振り付けが考えられました。

「星野さんは、『契約結婚という特殊な形のふたりを描いたドラマの主題歌なので、そのふたりのことも思って書いたし、今この時代にはいろんな形のカップルがいて、いろんな形のふたりがいる。いろんな形の恋っていうのを思いながら書いた。』とおっしゃっていて。サビのところで"夫婦を越えていけ"や"ふたり"みたいなキーワードになる言葉が多かったので、そこはダイレクトに指を2本にして、それをくっつけて、最後1本と1本になって、というように直感的に振り付けをしました。星野さんからも、縦のノリと横のノリをイメージしながら音を作っていったと聞いていたので、首を横にブンブンブンとふるところもあれば、下にステップを踏むところもあったりして、そういうリズムの変化を意識したり。歌詞のリズムに沿ってるところと、その裏のギターやドラムをとってるところ、みたいにフリを踊るといろんな音が聞こえてくようになるといいなと思って振り付けました。チャチャ、チャチャって手をアタックがあるところで持って来ているので、そこが難しさでもあるけど、ハマると楽しいっていうのがあります。」

『恋』のミュージックビデオ、そして、ドラマ『逃げ恥』のエンディングのダンス。この制作期間、MIKIKOさんは多忙を極めていました。振り付け・構成・演出を手がけるPerfumeのアメリカツアーに同行。さらに、そのツアーの前後にはリオデジャネイロ・オリンピックとパラリンピック、それぞれの閉会式で東京への引き継ぎセレモニーを演出。このスケジュールのなかで撮影がおこなわれたのです。

「ミュージックビデオが完成したあとにドラマの方たちと打ち合わせがあって、そのとき『役者さんたちが踊る用に、簡単にフリをなおしますね。』というお話をしたんですが、プロデューサーさんは『星野さんの『恋』のビデオを見ながら難しいフリを真似しようとしている夫婦、というのが多分、お茶の間にもかわいく伝わるだろうからそんなに変えなくていいです。』と言われて。最初は変えようと思って難しいフリをつけていたので、そのまま覚えてもらって申し訳ないなと思いました。

打ち合わせはパラリンピックに行っているときにSkypeでしました。もうそのときには『恋』のビデオはできていて振り付けはあったので、多少ややこしいところを分かりやすくアレンジしなおしてからレクチャービデオを作って、役者さんたちにそれを見て予習してもらって。最初はゆっくりなカウントで説明したあとに、実際の音の速さで踊ったものを反転して、そのビデオを見てそのまま真似をしたらいいようなビデオを作って送りました。そのビデオを作っていたときはまだリオにいたので、泊まっていたホテルの会議室で真夜中にビデオを作ったのを覚えています。ひとりで、そーっと作るっていう。(笑)」

MIKIKOさんと星野源さんが 初めて一緒に仕事をされたのは『SUN』のミュージックビデオでした。この『SUN』も収録されたアルバム『YELLOW DANCER』は、星野さんが大好きなアメリカのダンス・ミュージック、ソウル・ミュージックに 日本のエッセンスを取り入れ、星野さんが『イエロー・ミュージック』と呼ぶ 日本のダンス音楽に挑戦した作品です。MIKIKOさん、実は星野さんのこの姿勢に共感を覚えています。

1年半くらいニューヨークに留学していたことがあるんですけど、留学する前からダンスシーンでもアメリカの流れを組み込んだダンスを習うのが主流で、わたしもその中のひとりでした。でも行ってみて、リスペクトはあるけれど、そのまんまを真似しても絶対にかなわないというか、彼らのダンスはしっかり生活や文化があって出てきているものなのでリアルさが違うというか。だから、日本人のこの体型でしかできないダンスっていうのを生み出さなければ同じ会話ができないなという風に思って。いつまでもフォロワーでいるんじゃなくて、やっぱりわたしたちにはわたしたちのダンスがあるんだよっていうのをやっていきたいなって、ただそれを思った1年半だったんです。そう思って帰ってきてPerfumeに自分が一番しっくりくる振り付けをつけて、それが計らずとも日本ぽいと言われて。そうやって海外にあらためて出て行けてるっていうことが、星野さんのおっしゃるイエロー・ミュージックへ落とし込んだ理由と共通するところがあるんです。日本らしさを求めてやったんじゃなくて、結果、日本人としてこういう風にダンスしたほうが似合うと思って振り付けをしているところはあります。」

日本人に似合うダンス。それを求めるMIKIKOさんの振り付けだからこそ、『逃げ恥』の"恋ダンス"が、これほど愛されているのかもしれません。そして、これもうかがいましょう。"恋ダンス"を楽しく踊るコツ、教えてください!

楽しく踊るコツ。2を作って1を作ってっていう話をしましたが、そういうフリの覚え方として、星野さんの歌を歌いながら踊ると一番フリが入ってくるんです。♪胸のなかに~っていうときに、胸をドキドキドキってやるようなフリにしてあるので、それを自分のなかで置き換えながらフリを覚えていくと、躍動感が出てくる気がします。歌詞を歌いながらっていうのもあるし、入ってくるチャチャっていう音も歌いながらやるとキレも増しまして楽しいです。首をぶんぶんぶんと振るときは、心のなかで♪ルンルンルンと思いながらやってほしいですし、間奏とアウトロのところは、しっかり肘の角度を意識しながら、肘を前に見せるようにやっていくと形が決まります。手をあわせても肘が下がっちゃうとだらっとした感じに見えるんですけど、肘を横にパッと張ると見た目も体の張りもしっかりするので、音の強度もちゃんと出てくるという仕組みになっています。ポイントは、肘です。」

MIKIKOさんいわく、ダンスには人柄が出る。そして、恋ダンスではこんなことに気がつきました。

「新垣さんが踊ると曲がゆっくりに聞こえるんだ、という驚きがありました。曲に遅れているわけではないんだけど、ゆっくりな落ち着いた曲に聞こえるっていうのが初めての経験で、さすがガッキーっていう。彼女が踊ってくれたから、みんなが踊りたくなった、っていうのが一番ですよね。私は踊りを踊ることで、しゃべらない分その人の人柄がすごくにじみ出てくるものだと思っていて、それが魅力的でやめられない理由もでもあります。自分の体で表現する、というシンプルなことなので、そこで何を表現するのかっていうことが、やっぱり人柄を表現しているということなんじゃないかなと思っています。振り付けをするときもその人の性格を見て振り付けをしていますし、楽曲もよく聞こえたらいいなと思うのもあるけど、踊る人が一番魅力的にうつるダンスをいつまでも追求したいのもあるし、踊る人も踊ることで初めて知る自分を発見してもらえたら嬉しいです。」

ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。主人公のふたりの恋の行方はまだ分かりませんが、、、ひとつ、これだけは言えるかもしれません。恋ダンスを踊った人は発見しました。ダンスのワクワクは、恋のワクワクに似ていることを。