今回、注目するのは【鬼ごっこ】!!
あの【鬼ごっこ】が【スポーツ鬼ごっこ】として競技となり、子ども達だけではなく、大人たち、さらに、全国各地、そして 海外でも楽しまれています。2010年に設立された 一般社団法人 鬼ごっこ協会 の理事、羽崎貴雄さんにお話をうかがいました。
もともと俳優や イベントプロデュースのお仕事をされていた羽崎貴雄さん。【鬼ごっこ協会】を立ち上げたのは、どんな理由からだったのでしょうか?
「もともと役者をやってた時期があったり、いろんなイベントの企画・プロデュースをしているなかで、子どもに関連したイベントの依頼が10年ほど前から増えました。いまはなくなりましたが『こどもの城』というところで父親が責任者をやっていましたので、いろいろ子どもにまつわる仕事を見てきたなかで、【鬼ごっこ】って使えるんじゃないかなと。そこで、子どもたちとやってみたら、ものすごく盛り上がるイベントがたくさんできたんです。そんななか父親が【スポーツ鬼ごっこ】というものを開発して、これはものすごい広がりを見せる可能性があるなというのを子どもがやっているのを見た時に感じたんです。これはオーバーに言うと、サッカー協会とかそのくらいの流れができるんじゃないかなということで【鬼ごっこ協会】を立ち上げてやっていくのもいいなと思いましたね。」
今回、取材におこたえいただいている羽崎貴雄さんのお父様、羽崎泰男さんが開発した【スポーツ鬼ごっこ】。普通の鬼ごっことは、少し違います。
「普通の鬼ごっこは、鬼以外はみんな逃げる役割で鬼がひたすら追いかけますが、このスポーツ鬼ごっこはチーム対チームでおこないます。ちょうどフットサルとかバスケットボールのコートでおこなうチーム戦の鬼ごっこなので、みなさんがイメージする鬼ごっことはかなり違うかもしれません。サッカーとかああいうコートをイメージしていただいて、真ん中あたりにセンターラインが引いてあるんですが、ちょうどサッカーとかバスケットボールのゴールが置いてあるあたりにトレジャーと呼ばれる宝を置きます。そしてその宝を相手の陣地に取りにいき、自分の陣地の宝は守り、時間内にどちらが多く宝を取れるかということで勝敗が決まる、というルールになっています。」
7人 対 7人のチーム戦。
相手の陣地に置かれたトレジャーをどれだけたくさん取ることができるのか、競います。そして、選手は相手から両手でタッチをされたら、一度、コートの外に出なければなりません。鬼ごっことは言え、かなりの運動量、さらに、『戦術』も必要なスポーツです。
「いま研究もしているんですが、単純に計算すると運動量はサッカーの1.5倍くらい。質の点でいうと、ポイントを打ってどういう角度で動いたりというのを見ても、サッカーよりも非常に質が高いというか、ものすごく鋭角な角度で動く回数が多い、という研究結果があります。それは運動ができるできないに関わらず、というのが非常に大きいですね。だから普段、全然運動をしない子も同じくらいちゃんと動くんです。運動嫌いな子に『スポーツ鬼ごっこ楽しい?』って聞くと『すごく楽しい!』って言うんです。理由がどこにあるのかまだ解明できていないんですが、そういう事実があります。やればやるだけゲーム性と戦略性が出てくるので、ボードで作戦を考えているのが楽しい、という子がいたりもするんです。単純に白い紙と鉛筆をチームに渡して『作戦考えて!』って言うと、普段バラバラとどこに行くか分からない子どもが10人くらい集まって作戦を考えます。特定の競技だとそれがうまい子が決めるんですが、スポーツ鬼ごっこの場合、いろんな役割もあるし、誰がうまいというのが見つけづらいというか、みんなが協力しないとできないので、意見もいいやすいというのがあるのかなと思いますね。」
運動が得意な子もそうでない子も、一緒に考えて体を動かし、楽しめる。それが【スポーツ鬼ごっこ】。協会設立から8年。今ではおよそ300チームが活動し、全国大会が毎年開催されるほど広がりを見せています。羽崎貴雄さんは、『指導者と審判のライセンス制度を導入したことも、大きなポイントだった』と 振り返ります。
「審判や指導者などちゃんとした人が育たないとスポーツはなかなか普及しないという中で、まだまだちっちゃい団体ですが、今のうちからライセンスというものをやっていこうということで、その制度を導入しました。そうすると、それに賛同してくださる方がたくさんいらっしゃって、いまは指導者のライセンスを持った人が2000人くらいになりました。これは多分、他の競技と比べても多いのかなというくらい増えてきています。スポーツ鬼ごっこは基本的に誰でもできる、というのが大きなポイントです。だからうちのライセンスはスポーツ関係の人が非常に少なくて、街づくりや子育て支援、教育関係の人が多いというのもひとつの特徴です。」
最初は、子ども達のために考案された【スポーツ鬼ごっこ】。いまは、大人も楽しんでいます。
「やっぱり運動は、大人も子どももみんなやりたいんだなと。でも、なかなかできるものがないというところで刺さったのかなと思いますね。もともとやる人は子どもが10割だったんですが、今は2割くらいは大人です。今『ONIリーグ』というリーグもあって、サッカーで大げさにいうとJリーグみたいなリーグ。それは6チームでリーグ戦を行うもので、今年第4シーズンに入っていくんですけど、こういうリーグもできいます。」
一般社団法人【鬼ごっこ協会】の理事、羽崎貴雄さんに最後にうかがいました。【鬼ごっこ協会】が思い描くヴィジョンとは?
「いま国内では普及が進んできているんですが、今後は国際的にもちょっとずつ普及を進めていって、今年はサッカーのワールドカップがありましたけど、将来的にはああいう国際大会のようなものも開催して、国際交流のひとつとしてスポーツ鬼ごっこが活用できれば嬉しいなと思っています。道具もほとんどいらないので、いろんな国でもできるんじゃないかなと。ある種、オリンピックに最も向いている競技なんじゃないかなと思います。なかなかオリンピック競技って道具がないとできないスポーツが多くて、そうすると、できる国できない国が出てきちゃうと思うんです。でも、これは全世界どこでも同じ土俵でできる可能性があるので、そういう競技があってもいいんじゃないかなと思っています。」