今回は靴を預けると、その靴をケア・保管してもらえる、というサービス。クラウドシューズボックス【SHPREE】のHidden Story。
取材にお答えいただいたのは、鳥取県倉吉市にある株式会社 SHPREE代表の岸田将志さん。まずは、どんなサービスをおこなっているのか教えていただきました。
「コンセプトは【手のひらに靴箱を】で、自分のお気に入りの靴や大切な靴がスマートフォンのなかで管理できる、というサービスになっています。例えば、履かない時期のブーツをお預かりしたり、クリーニング、靴磨き、修理というのもスマホのなかで全部トータルでケアするという、靴に特化したクラウドサービスをやっています。」
靴に特化したクラウドサービス【SHPREE】。そもそも、岸田さんがこうしたサービスを始めようと思ったきっかけは?
「もともと僕自身、靴の小売り、販売する会社が実家なので、靴の販売をどういう風にしていこうかと考えていました。その時にすごく靴が好きな人が東京にいらっしゃって、『靴が好きなんだけど、置く場所がない。』という話をされていたんです。『鳥取は土地も安いし、靴を預かってくれて引き出せたらいいのにね。』ということで、そのアイディアをもらって、形にできないかなと思ったのがきっかけです。」
岸田将志さんは、鳥取県倉吉市の靴屋さん『シューズショップ コマツ』の3代目。今から5年ほど前に着想を得て、2015年に会社を設立。ただ、周囲からはこのサービスを疑問視する意見もありました。
「保管というところでは、鳥取の人たちからは絶対成功しないというか、そんなのニーズない、というようなことを結構、言われました。ほんとに預ける人いるの?みたいな。」
しかし、岸田さんは事業を進めます。2017年にはサービスをスタート。ポイントとなったのは、靴を保管する場所でした。
「靴専用の温度と湿度と空調を整えたところでやっています。保管いただく靴のなかでは革靴が多いんですが、革は湿度が高いとカビが生えてしまったり、湿度がなさすぎると今度はカピカピになってしまうんです。でも、ここはカビがはえにくいし、革がフレッシュな状態で保たれるような場所にしています。靴の知識もある程度あったんですけど、革の専門家の方に聞きに行ったりして、湿度を微妙に変えてデリケートな革の湿度と、普通の牛革とかの湿度と、場所を変えながら保管をしています。特に湿度が大事ですね。だいたい湿度を50%に保つようにやっています。ワインセラーの靴版みたいなイメージです。」
この、靴を預けるとその靴をケアし、保管してもらえる、というサービス。そこには、小澤力さんをはじめとする靴の職人さんの技がいきています。
「小澤さんはもともとこのサービスを始める前、うちの母親の代からお付き合いいただいている職人さんで、修理の若手職人の研修も小澤さんに見ていただいてます。こだわりもすごく強く、修理も基本的にお断りしない、NOと言わないのがその方のポリシーで、その想いを継げるように若手職人も今頑張ってやっているところですね。このサービスを続けていくなかで職人の育成もやりたい部分なので、その技が途絶えないようにしていきたいと感じています。僕がこのサービスを始めるときに修理の資材屋さんから話を聞いたら、営業担当ひとりでも、3~4軒くらい職人さんで廃業を考えている人がいるくらい、職人さんも減っている状況なんです。そういった職人の技にもう一度光を当てて伝えていきたい、というのもやっていきたいところです。」
【SHPREE】の代表、岸田将志さんに最後にうかがいました。サービスを通して伝えたいメッセージとは?
「うちの会社の理念は【足下から世の中を笑顔に】というものです。SHPREEのサービスを使っていただくことによって、大切な靴だったり、きれいになった靴が、新しい場所に一緒に連れて行ってもらえたりとか、一歩を踏み出すきっかけになれるような会社というかサービスで事業を続けていけたらなと思っています。捨てるのは簡単ですけど、長く愛用するからこそ、どんどん新しいものを買っていくのとはまた違うものがあるので、ケアもそうですし、靴を大切にする文化もつくっていけたらなと思いますね。」