今回は今年のアカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞した映画【スパイダーマン:スパイダーバース】に参加した日本人アニメーター、現在は、カナダ・バンクーバーで活動している園田大也さんのHidden Story。
園田大也さんは、熊本県ご出身。小学生の頃、映画【トイストーリー】や【モンスターズインク】を見てCGを使う仕事に就きたいと考えるようになりました。大学ご卒業後、ゲームの制作会社でアニメーションを作っていましたが、そんな日々のなか、子どものころに思い描いた『ハリウッドで映画をつくりたいという夢』へ向け、一歩を踏み出す決断をします。フィリピンとカナダの語学学校で英語を学んだあと、映画の世界へ アプローチを始めました。
「語学学校を卒業するタイミングで、いろんな映画会社やアニメーションスタジオに自分の作品と履歴書を送ったんですが、その中でひとつ、ナイトロジェンスタジオというところが、『興味あるから面接しないか』と言ってくれて、そのままそこに採用されたという感じでした。そこで映像系のアニメーションを教えてもらっていたんですが、ワーキングホリデービザが切れたあと、就労ビザをもらわないと働けないんですけど、それはある程度大きな会社じゃないと出せないんです。どうしようと思って、今いるソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに応募したら、メールを送って2時間後くらいに『いつ来れる?』みたいな連絡が来ました。ちょうど日本だと『コウノトリ大作戦』というタイトルの映画の締め切り間近で人が必要な時期が重なったときだったので、タイミングがよかったというか、そこで採用してもらったという感じでした。」
ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスでの最初の仕事は【コウノトリ大作戦】。園田さんはどのように関わったのでしょうか?
「アニメーターというのは、アニメーションスーパーバイザーとう人がトップにいて、その下にリードアニメーターという人がいるんです。そのリードアニメーターが5~7人くらいいるんですけど、このリードアニメーターひとりにつきアニメーターが何人かつくんです。リードアニメーターがチームを持つ、という形なんですね。僕はひとりのリードにつくことになるんですけど、そのチームに入ってリードから『このカットを担当してほしい』、という風に仕事をもらってそこのアニメーションをつける、という感じ。映画だとひとりのアニメーターがアニメーションをつけられるのはだいたい1分か2分くらいです。1週間に多くて4秒とかですね。24分の1秒単位で作っていくので、時間がかかります。1秒が24枚の絵で構成されているので、気をつかって全部やっていく、という感じです。」
その後、園田さんは【絵文字の国のジーン】という作品に参加。そして、、、
「『絵文字の国のジーン』が終わるタイミングで『スパイダーバース』のほうにファーストクルーみたいな、初期メンバーとして行ってほしい、と言われました。アーティストマネージャーという配属を決める人がいるんですけど、その人に『オフィスに来て』と呼び出されて、そこで『次はスパイダーバースに行ってほしい』と言われました。ソニーは自分が担当している以外のプロジェクトも、どういうものを作っているのかを見られるんですが、『スパイダーバース』を見てたら初期の初期からもうかっこよかったんです。みんな、『やりたい、やりたい!』って言ってて。で、そのプロジェクトが見られるウェブページがあるんですけど、そこに僕が家でちまちま作っていた作品が参考動画としてあがっていたんです。なので、もしかしたらと思っていたんですが、実際に来てほしいと言われたときは嬉しかったですね。」
映画【スパイダーマン:スパイダーバース】。アニメーター園田大也さんの仕事はこんな風に始まりました。
「カットのひとまりをシークエンスというんですが、入った日にちょうど、実際の映画で使うシークエンスの絵コンテがあがってきていて、それに基づいてアニメーションを作るのが最初でした。それは、マイルスが墓地で初めてピーターBパーカーと出会うところです。あそこが映画の中で一番最初に作られた場所なんですね。最初って意外とアニメーションのスタイルが定まっていなかったり、キャラクターの表情をどうするかで大変なんです。後半になると今まで作ったものがあるのでそれを参考に作ればいいんですけど、最初は何もないので大変でしたね。」
今回の作品づくり、特に印象深かったシーンを教えていただきました。
「印象深かったのは、一番最初のティザートレーラーができたときのアニメーションです。マイルスがタクシーを飛び越えていって、3Dじゃなくて、2Dの絵が少し入って、また3Dに戻って、というところがあるんですけど、そこが大変でした。夜のシーンで結構暗いんですけど、スパイダーマンのスーツも黒なので、いかにマイルスが動いているのを見せられるか、そして、最初のティザー予告だったので、マイルスの顔だったり胸のマークが見えるように気をつかいながらやりました。」
およそ180人のアニメーターが参加した映画【スパイダーマン:スパイダーバース】。園田大也さんは、1年4ヶ月に渡って制作にたずさわりました。そんな作品が、第91回アカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞。このときのこと、そして、園田さんがご自身の仕事を通して伝えたいメッセージについて最後にうかがいました。
「これはすごかったですね、実際にとれてすごく嬉しかったです。ソニーとしても長編アニメーション賞は初めてなので、休みだったんですけど、会社のキッチンを開放してくれて、みんな集まれるようにしてくれました。飲み物とかも会社が準備して、みんなでわいわい騒げるようにしてくれていたので、ほんとに受賞したときはめちゃめちゃ盛り上がって、すごく楽しかったですし、嬉しかったです。やっぱり、時間を忘れて見て楽しんでもらえる作品を作りたいですし、そういう作品に携わりたいと思います。あとは自分がそうだったように、僕が制作に携わった映画でアニメーターになりたいとか、映画を作りたいとか、そういう風に思ってもらえたらさらに嬉しいかなと思います。」
『スパイダーマン:スパイダーバースWEBサイト