今回は燻製です。

20200110h01.jpg

徳島県の魚介類を燻製にして届ける、日和佐燻製工房のHidden Story。

徳島県南部の海部郡、日和佐の魚介類を燻製にして販売している 日和佐燻製工房。代表の濱真一さんにお話をうかがいました。まずは、濱さんが燻製を始めるきっかけは?

20200110h03.jpg

「30歳のときに地元の徳島に帰ってきて、徳島は魚がいっぱい釣れるんですけど、ひとりで何10キロも釣って来ていて、それをどうにかして活かしたいなと思って始めたのがこの燻製だったんです。ちっちゃいときから自分で釣りをしてさばいてみんなに食べさせてあげたり、料理を振る舞うのが好きだったので、ちょうどいい仕事かなと思ったんです。燻製は近くの役場の方に『燻製でもしてみたら?』と助言をいただいて、それでやってみたらすごく難しくて、全然うまくいかなかったんです。僕、結構、料理は自信あったんですけど、燻製だけは全然うまくいかなくて、それで火がついたような形というか、はまりこみました。」

役場の方が口にした『燻製にしてみたら?』という言葉をきっかけに、濱さんは燻製に取り組み始めます。

「最初はお金が10万円くらいしかなかったので、ドラム缶をもらってきて、自分でサンダーとかで穴をあけて、金網をしいて、自家製の燻製機を作ったんです。そこに魚をいれて、道の駅でいぶしながらそこで即売していました。そのころまだ全然おいしくなくて、自分では満足いってなかったんですけど、売らなきゃ生活できなくて。すごく悔しかったですが、もう納得していただけるお客さんにだけ試食してもらって『こんなんですけどいいですか』という形で販売してました。」

20200110h04.jpg

満足のいかない味でしたが、試食して納得してもらったお客さんにだけ販売する日々。では、どうやって燻製の技を磨いていったのでしょうか?

「すごく地道なんですけど、毎日お客さんにどんな風においしくないかということとか、試食してもらって、どないしたらいいのか、というのをずっと聞いていったんです。それを持ち帰って改良してを何年も繰り返しました。

それで3年くらいして初めて、自分でも納得がいく品質になってきました。

ほんとにおいしいなと思い始めたのは、5年目くらいからですかね。やっぱり、下味の付け方、燻製といってもうちはいろんな調味料を使っていて、例えばお味噌を使っていたり、みりん醤油でつけこんでたり、そういった漬け込み液の塩分濃度だったり分量をまず研究しました。あとは、いぶす温度と時間、これにかなり費やしたと思います。」

つづいて、日和佐燻製工房ではどんな魚を燻製にされているのか、教えていただきました。

「今はメインは競りで競ってきているんですけど、ヒラスズキという高級なスズキとか、こっちはボラがおいしいんですけど、きれいなところでとれたボラとかは僕が釣ってきています。20200110h02.jpg

ヒラスズキなんかは台風のとき僕が50キロも100キロも釣ってきたりします。一般的なものでは、タコとかアオリイカ、タチウオ、サワラ、ブリ。あと面白いのでいったら、マンボウ、アンコウとかです。旬のもので、脂がのってきてて、よくこえているものを買ってくるので、下手したら毎週違うものが入ってきています。だいたい100種類くらい魚種があるんですけど、今使っているもので、それに対してのマニュアルを作るのをずっとやってきました。

20200110h06.jpg

いぶす温度も違うし、漬け込みの濃度も違うし。5年でまあだいたいできたと言いましたが、今でもマイナーチェンジを繰り返してて、ちょっとずつですけどおいしくなっていると思います。」

日和佐燻製工房はインターネットでの販売はありますが、卸しはおこなわず、対面での販売を基本とされています。最後に、その理由をうかがいました。

僕が卸しをしない理由とか対面販売にこだわっている理由は、燻製の種類が多くて、だいたい毎回30種類くらいの燻製を作っているんです。

20200110h05.jpg

そのなかでも味が濃いものとか薄いものがあって、お客さんのお酒の好みもあると思うので、毎回試食をいっぱい出して30種類の中からお客さんの好みの燻製を探してあげるというのが気にしてやっていることです。

やっぱり、最初の燻製がおいしくなかったころに、だまして売るわけにはいかないんでお客さんに全部試食してもらってたんですけど、そのときのお客さんの声が商品開発につながったし、お客さんっていろんな好みを持っているので、いちがいにこれっていうようなすすめ方じゃなくて好みを探してあげるという販売方法になりました。

最初は悔しくてはまりこんだんですけど、なかなか美味しいのができなくて。でも、5・6年で変わってきたのが、お客さんがすごく喜んでくれて何回もリピートしてくれるんで、それがすごく嬉しくて、商売をずっと続けている感じがします。」

日和佐燻製工房ウェブサイト