今週注目するのは、オタフクソースです。

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お好み焼き専用のソース、その名も【お好みソース】で知られるオタフクソース株式会社。広島の会社ですが、数年前にイスラム教徒の方も安心して食べることができるハラール認証をマレーシアで取得。世界へ お好み焼きの食文化を広げています。きょうは、そのHidden Story、ご紹介します。

まずは、そもそも オタフクソースは いつから、お好み焼きのソースを販売しているのでしょうか?

「ソース自体の販売は1950年になります。この頃は、ウスターソースという、さらさらしたソースを作っていまして、1952年にお好み焼きのソースを販売することになりました。

もともと我々は会社としては1922年に小売業でスタート。そののち1938年にお酢、醸造酢をメーカーとして販売を始めました。そして1945年、広島は原爆が落ちまして、原爆投下後に広島は街の中が焼け野原になりました。そんな中で屋台で鉄板でお好み焼のようなものを作っているお店があって、それがおやつから食事に転化した時代でした。

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ウスターソースを大手メーカーさんが販売していましたが、ウスターソースだとお好み焼きにかけると流れ落ちてしまうのと、ちょっと味がきついなど、いろいろ不満があり、できるだけお好み焼きに合うような味付け、とろみだったりということで、お好み焼き用のソースを開発して販売しました。」

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取材にお答えいただいたのは、オタフクソース株式会社 国際事業本部の宮田裕也さん。オタフクソースが海外への展開を始めたのは、1990年代後半のことでした。

「当時は、今のように日本が少子高齢化になるから海外へ...というような理由ではなく、お好み焼きは、世界に通じるメニューだから普及しよう!ということで、98年にアメリカで、海外で初めての会社を作りました。

そして2010年くらいからアメリカ以外のエリアにも日本で作ったものを輸出するというスキームで、特にアジアを重点に活動を始めました。

エリアでいうと東南アジアをより積極的に活動しようというなかで、縁があってマレーシアの企業と合弁をすることになりました。

今まで未踏のエリアだったんですが、ムスリムの方達の文化や習慣を聞いて、お好み焼きを広めるという使命をもって活動できるのではないか、ということで合弁をスタートさせました。」

20200131h06.jpg(マレーシア工場)

そして、実際にハラール認証のお好み焼き専用ソースを開発することになるのは、開発課の吉廣空さんです。ハラールの商品は日本ではなく、マレーシアで作ることになりました。

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「マレーシアのハラール認証機関にジャキムというところがあります。そこは世界的にも認められている機関です。そのジャキムのハラール認証を取得するのがひとつの命題だったのですが、そのジャキムの認証はマレーシアで生産したものしか認証を受けられないというものでした。そのためマレーシアで作る必要がありました。

最初はハラールの商品であるために使う原料のすべてがハラールでなくてはならないという条件がありました。

日本での原料は使えなかったので、必要なものを現地で、ハラールの原料を集めるところから開始。

ポイントとしましては、宗教上禁止されている豚肉を含まない、アルコールを含まないというところが一番大きなポイントです。

それこそ、砂糖、塩から始まって、お酢、香辛料、野菜、果実などなど、現地の原材料には非常にたくさんのハラール認証がついています。

野菜や果実もハラールの認証を取得したものがあって、野菜のペーストとか果物の果汁がハラールの認証を取得しています。」

ムスリムの方が安心して食べられるハラール認証をマレーシアで得るため、現地でのソース開発がスタート。

従来の【お好みソース】とはまったく違う原材料で、どうやってこれまでの味に近づけるのか?開発担当、吉廣さんは、試行錯誤を繰り返しました。

「ハラールの商品ということで、宗教上禁止されている豚肉を含む肉系の原料が使用できないので、そのうまみの味を、どう代替の原料で補強するかというのがかなり苦心したところでありました。

いろいろ試行錯誤した結果、カツオとかオイスター、海産物のうまみを補強することで肉系の原材料なしで日本のソースの味に近づけるということをしました。

時間もかかりましたね。結構、最後のほうは現地のマレーシアで活動している社員の家に、原材料とか分析機器を持ち込んでその家に住み込みで試作をしていたりしていました。

なので、その現地の活動している社員の家には、たくさんの材料や分析機器もあって、狭くしてしまって苦労をかけたと思います。」

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マレーシアの工場が稼働を始める1か月前、2016年7月、商品が完成しました。翌年、2017年、世界的にも信頼度の高いジャキムのハラール認証を獲得。マレーシアで【お好みソース】の販売がスタートしました。国際事業本部の宮田裕也さんは、当時をこう振り返ります。

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「現地の日系の小売業さんと一緒になって、デリ・お惣菜のところでメニューを出して現地の方に食べてもらう機会を増やしてメニューに親しんでもらうということをやりました。今はマレーシアに工場があり、マレーシアを中心に活動していますが、隣国のインドネシアなど他のムスリムの方たちの社会へ向けても輸出を始めています。」

最後に吉廣空さんにうかがいました。ハラール認証のお好みソース、開発を担当してどんなことを感じましたか?

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新しい市場で開発に取り組めたことは非常に嬉しく思っています。また日本人の社員のほか、現地のマレーシア人スタッフといっしょにものづくりができたということが特に嬉しかったです。

また、今回作ったお好みソースを実際に現地のマレーシア人のスタッフに味をみてもらったら、これ美味しいねと言ってもらえて現地の人にとっても美味しいソースに仕上がったとことも大きな喜びでした。」

オタフクソースウェブサイト