今回は新潟のお菓子です。
新潟の伝統的なお菓子【ゆか里】を【浮き星】という名前に リ・デザイン。地元ではよく知られていたお菓子が、全国的に人気となりました。そのHidden Story、ご紹介します。
新潟のお菓子【ゆか里】。
見た目は金平糖のようですが、実は、少し違います。【ゆか里】の中身は あられで、まわりを砂糖の密でコーティング。お湯に入れると、外側の蜜が溶け、あられが浮き上がってくるのです。
このお菓子に着目したのが、『日常を楽しもう』というコンセプトのもと、様々な物やコトをクリエイトする集団『hickory03travelers』でした。
「我々は新潟市の上古町商店街というところにお店を構えていて、自分たちがデザインしたTシャツ、雑貨などを販売しているお店であり、いろんな方からデザインのご依頼をいただいていますので、それも手がけています。そして、それを自分たちの店舗だけで売っていると数が限られてしまいますので、全国のいろんなお店の方たちにご紹介して販売していただいている、という、活動名であり店舗名である、という感じです。」
お話をうかがったのは、『hickory03travelers』の代表、迫 一成さんです。迫さんが、【ゆか里】に関わることになったきっかけはどんなことだったのでしょうか?
「最初のきっかけは、新潟にしかないと言われている金平糖のようなお菓子を私たちのお店で販売しようということになり、そのお菓子を知りました。そして、販売を続けるなかで、これを作っているのがおじいちゃんひとりだけで跡継ぎもいない、ということだったり、新潟に昔からあるお菓子で他の地域にはない、ということを知りました。さらに、おじいちゃんの年齢を聞いたら当時78歳で、おやおやおやと。もし何かあったらこのお菓子を作る人がいなくなって、お菓子がなくなってしまう、と思ったことがきっかけです。」
以前は他にも作っているお店がありましたが、当時は、『明治屋 ゆかり店』で、小林幹生さんが ひとりで作っていた【ゆか里】。『hickory03travelers』の迫さんは、ここで 新たな一歩を踏み出します。
「そのころ、最初に取り扱い始めて5年くらい経っていたんですが、いろいろ商品開発の機会が増えたり、全国のバイヤーさんが集まる場で商品を紹介する仕事をすることがあったので、流通を作ることが重要だと思いました。そして、貴重なお菓子や産業の作り手さんが店をたたんだり、やめたりするのを聞いていたので、もしかしてと思っておじいちゃんに話を聞きました。驚きだったのは、跡継ぎがいない理由は、あとを継ぎたい人がいないのではなく、あとを継がせたあとにごはんを食べていけるか、売り上げをたてられるかがわからないのであとを継がせられないんだよね、とお話をされました。
私としては、逆に言えば、売れるようになったらあとを継がせられるのかなと思って、『売れたらいいんですね?』と聞いたら、『そうだよね』とお返事をいただきました。なので我々ちょっと頑張ってみていいですか、我々のお店だけじゃなく他のお店でも売れるようにしたいんですけど、とうことで動きだしました。」
そして生まれたのが、【浮き星】という名前です。
「もともとの名前が【ゆか里】で、ごはんにかけるしそのかけるやつがあるんですが、『あのゆかりですか?』と言われる方がいたので、名前を変えたほうがいいなと思っていました。また、【ゆか里】は、ゆずのかおりからきていて、"ゆ"と"かおり"なんですけど、ちょっとわかりにくいかなというところで、この商品のポイントはお湯に浮いてくるというところと、お星さまのような形でかわいいところということで【浮き星】という名前を思いついて名前を変えました。」
【ゆか里】という伝統的なお菓子が【浮き星】という名前で、全国に流通。多い時は 年間10万個を販売する人気商品となりました。その作り方は、今も昔も変わりません。大きな釜を回転させながら、あられに、砂糖の蜜をかけていきます。作業時間、実に、8時間。
「8時間くらいかけてやります。小林さんと話していると7時間という日もあるし、9時間という日もありますが、だいたい8時間くらいかきまぜているみたいです。小林さんいわく昔はそれを手でかきまぜていたと言っていました。この時期なんかすごく暑い中、ずっと大きい釜をぐるぐるかきまぜて蜜がたまったり偏った形にならないようにずっとそばで見てまわしながらやるという、すごいなと思います。」
最後に、嬉しいエピソードをひとつ。
以前は、『明治屋 ゆかり店』で、小林幹生さんが ひとりで作っていたお菓子ですが後継者ができ、ともに 商品づくりに励まれているそうです。
「たくさん売れるようになったので無事跡継ぎができて、娘さんのご主人があとを継いで作ってくださってるんですけど、ご本人たちも喜んでくださっています。買って食べる方がいないと成立しないですし、作る方がいないと成立しないですし、いろんな方の力で商品、ものは継続できるんだなとあらためて感じてますね。」