今回はaikoさんのニューシングル『ハニーメモリー』のHidden Story。aikoさんご本人に語っていただきました。
aikoさんは、とてもたくさん曲を書き、その中からリリースする曲を決めている。以前から、そんなお話をされていますが、この『ハニーメモリー』については、どうだったのでしょうか?
「この『ハニーメモリー』を書いたときも17曲書きました、18曲か。(笑)コロナがこんなに世の中を大変なことにして、緊急事態宣言が出て、その後どうしていいかわからなくて。ラジオをお聞きのみなさんもそうだと思うんですけど、普段の日常と全然変わるじゃないですか。家にいなくちゃいけないとか会社に行けないとか、気がついたらご飯のことと掃除のことと洗濯のことしか考えない日々が続いて。それももちろん大切なことなんやけど、大丈夫なんかな、じゃなくて、私曲書きたいなと思って、18曲書いた中の1曲でした。ビビリで1曲に全てを込めて勝負するということがとても苦手なので、書きたい分書いてスタッフの方に聴いていただいて、それで話し合って、どの曲にしようかという風に曲を作り続けてきたので、コロナ禍の中でも曲を書き続けてました。」
ちなみに、aikoさんの作曲はどんな風に進められているのでしょう?
「作曲と作詞は、詞先で、詞を先に書いて、そこから曲をつけます。なのでピアノの譜面台のところに歌詞を置いておくと、同じ歌詞でいろんな曲を作る、みたいな。その中で自分が一番気に入ったものをスタッフの方に聴いてもらう、という。だから時間によってできる曲が違うんですよね、同じ歌詞でも。夜中2時に出来上がったメロディ、明け方、空が白く明るくなってきている時のメロディは全部違って、それを録音しておいて、後で聴いて自分がハッとしたものを曲にするということが多いです。
『ハニーメモリー』も違うメロディがありました。あったけど、もうこれが一番よくて。『ハニーメモリー』はこのメロディが一番最初に浮かんだんですよね。その後も譜面台のところに置いてたから違うメロディで作ってみたりもしたんですけど、このメロディとこのリズム、テンポが一番いいと思いました。」
『ハニーメモリー』の曲作り、最初に出てきたのは、このフレーズだったそうです。
「歌詞は、1番のAメロの『いつも悪いなと思ってたよ。夜明け前に帰ると洗面所だけ電気がついてた』っていうフレーズから書きました。この時は自分がこういう気持ちだったというか、心境に陥っていてそれがウワーッと出てきた感じですね。今回の曲は一人称が【僕】。普段は【あたし】で書いているんですけど、この曲は【僕】で、出来上がった後に両方というか、相手はこんなことを思ってたのかな、わたしはこう思っていた、というのが混ざった曲という感じがしました。あたしってなると女性目線なので、女性として生きてきてお腹の中で考えているけど言葉にしないこともたくさんあるけど、男性目線で僕という言葉を使うと自分の中にとどめていたことが全部出てくるんですよね、なぜか。僕という言葉を使うとなぜか素直になれるというか、思ったことをわたし目線よりはもっと奥の方を書けている、言えている気がします。」
曲の途中、こんな歌詞が出てきます。「心臓は5個、あったらいいな。入れ替えたら あなたの前でずっと笑ってられるわ」
「これは本当に自分が思ったことで、好きな人に言われた言葉で嬉しかったり、悲しくなったり、心ないことを言われたりとか人と人なんで色々あるじゃないですか。その時にこの人の前でずっと笑ってるにはどうしたらいいやろ?ああ、1回死んで生まれ変わるしかないねんな、と思ったことがあって、それが強く、なんというか、心の底にこびりついてるんですよね、サビみたいに。それが歌詞になりました。その時は辛かったんですけど、なんでこの人こういうこと言うんやろうと思って、腹立つな~と思ってたんです。そのすごく悲しかったのが忘れられなくて、無になった時期があって、それがこの歌詞になりました。(笑)多分、悲しい曲の方が作るのが好きなんだと思います。あと多分、性格やと思うんですけど、楽しいことって一生続かない、っていうネガティブなところがあって、すごくいいことがあったら悪いことが来るんじゃないかと思って夜中落ち込んでしまうことがあるんですよね。だから、例えば好きな人が振り向いてくれて、あ、これ両想いなのかもしれないと思った時も、ふられた時のことを想像してダメかもしれない、と思うことが多くて、そういう悲しい曲の方が、その瞬間に歌詞にしたいと思うんですよね。楽しい時は携帯とか見てるんです。でも悲しい時は文字にすることが多い、っていう感じですね。」
aikoさんは、1998年、シングル『あした』でデビュー。それから22年、ラブソングを作り続けてきました。では、これから先、どんな音楽を作ろうと考えているのでしょうか?
「22歳の頃にデビューしたので、その頃インタビューしてくださったライターさんが、『やっぱり30こえて結婚とかされたらお子さんの曲とか書かれるんですかね?』『どうですかねー』と言っていたら22年経ってたんですよね。
だから、きっとこのまま変わらない自分の頭の中にある曲を永遠に書き続けて終わりが来たらいいなと思ってます。だからきっと変わらないと、このままずっと自分がやり続けて、もうあかんとなるところまで永遠にやりたいと思ってます。そんな感じに育ててくれたというか、その環境をくれたスタッフの方がすごいと本当に思いますね。
こういうテーマで曲を書いてほしいとか今まで1回も言われたことがないんですよね。こっちが不安になって、『クリスマスの曲とか書いたほうがいいんかな?』と不安になったりするんですけやっぱりできなくて、書けないんですよね。
だからその分いっぱい書いて、『たくさん作ったよ』って言ってスタッフの人が驚いてくれるのを楽しみにいつも書いているというか。(笑)やっぱり今、どういう状況になるかわからない状態で、わたしができることを一生懸命やろうと思って、わたしにできるのは何かというと曲を作って聴いてもらう、だからレコーディングいっぱいしようと思ってやってます。
あと2ヶ月ちょいの今年中に何曲かけるかな、っていうのを目標というか、絶対に曲を作るのを目標にしているので、また、スタッフの皆さんに、『すいません、15曲しかできませんでしたー』って言えるくらい、頑張って楽しくやりたいです。(笑)」