今回は、佐賀県有田町のお菓子【ちゃわん最中】をご紹介します。
「一言でいうと、蓋つきのおちゃわんの形をした最中です。もともと20数年前に有田町で作られていたお菓子を私達が復活させた、というものになっています。」
お話をうかがったのは、NPO法人 灯す屋 の上野菜穂子さん。
この【ちゃわん最中】を販売するのは和菓子屋さんではなく、NPO法人なんです。主な活動は、空き家の利活用や移住・定住の支援。そんな『灯す屋』が、最中を作ることになったきっかけはどんなことだったのでしょうか?
「もともと私達は地域おこし協力隊ということで有田町の地域を元気にする取り組みをしていたんですが、その時に私達のオフィスだったところが、【ちゃわん最中】を作っていたお菓子屋さんの空き家だったんです。そこに、【ちゃわん最中】と書かれた木彫りの看板がありまして、これはなんだろうといろいろ調べてみると、昔そこで【ちゃわん最中】が作られていたことがわかりました。
ただ、ご主人が20数年前に亡くなられたのと同時にお菓子屋さんが閉店して、【ちゃわん最中】も作られなくなったというストーリーを聞いて、これを現代に蘇らせたいと思ったのがきっかけです。」
でも、NPO法人がなぜ【ちゃわん最中】を??
「まず、有田にめぼしいお土産品がない、というのを町の皆さんから聞いていたのと、春陽堂で作られた【ちゃわん最中】がすごく愛されていたと聞いて、なんとか私達が復活させられないかと思ったということもあります。
でも、私達は食品のプロでもないしどうしようと思った時に、やっぱり町づくりとつなげるのが自然じゃないかということで、【ちゃわん最中】を町づくりのツールとして提供していこうと考えました。
【ちゃわん最中】は昔は中にあんこが詰まっていてそれをパッキングしたものが売られていたんですが、私達の【ちゃわん最中】は、皮とあんこが別々の包装になっていて、好きな量をつめて食べられるのが売りになっています。中になんでも入れられる、好きなものを入れてくださいね、というお土産品にしよう。私達だけの商品にするのではなく、いろんな飲食店、事業者さんとコラボレーションをたくさん作ることで、私たち有田町に関係する人をふやしていくツールにできないかと考えました。私達が考えるまちづくりはいろんな人に関わってもらうことが大事だと考えていまして、そこから新しい動き、ビジネス、プロジェクトが生まれることを期待して
その媒介に【ちゃわん最中】がなれないかと思って今取り組んでいます。」空き家の利活用や、移住・定住の支援を手がけるNPO法人 灯す屋 の上野菜穂子さんが考える【ちゃわん最中】と空き家の共通点は??
「【ちゃわん最中】のコンセプトは自分で中身を入れられるのがポイントなんですけど、中身を自由に入れられるというのが空き家活用にも共通することかなと思っています。中身の不在がマイナスではなく、中になんでも入れられるという可能性なんだという、空き家も中に人がいないのはマイナスではなくて、中に人が入ることでいかようにも蘇るのが魅力だと思っていて。」
実際のお菓子作り、最中の皮は、石川県金沢市の最中の皮を作る『最中だね屋さん』に依頼。あんこは佐賀市にあるお菓子屋さん『鶴屋』が作ってくれることになりました。
「佐賀市の鶴屋さんは江戸時代から続く南蛮菓子の老舗なんですけども、マルボロ、ご存知ですか?佐賀の有名なお菓子なんですけど、今、そこの息子さんが新しいことに取り組む方で、私たち名もなきNPOが『こういうものを作りたい』と言ったときに『面白いね』『かわいいね』と言ってくださって、あんこも瓶詰めにしたいとお願いして、じゃあと作っていただけることになりました。このあんこは好きな量詰めてもらうんですが、あと私がよく言っているのはあんこだけじゃなくてアイスクリームを入れてみてとか、フルーツを入れてみてとか、いろいろアレンジしてみてくださいと言っています。」
上野菜穂子さんに最後にうかがいました。【ちゃわん最中】によって、どんな未来を作りたいと考えていますか?
「私たちの取り組みが移住とか空き家とかいうと間口が狭いと思うんです。そこに興味がある方も限られていて、有田焼も焼き物に興味がある方も一定数はいらっしゃいますが、それ以外の層の人に知ってもらうときに誰もが入りやすいのは食べ物だと思うので、【ちゃわん最中】がそういう間口を広げるものになればいいなと思っています。なかなか空き家の利活用や定住も一筋縄ではいかないこともありまして、その前にいろんな関係人口をふやしていくことが、ひいては空き家を動かしたり、こっちに住む人を増やすことにつながるのかなと思っています。
たくさんの事業者さん、特に異業種の方とコラボレーションをしてたくさん有田に関わる人をふやしていきたいと思っています。そこで、新しい取り組み、ビジネス、プロジェクト、そういうものが生まれればいいなと思っています。」