今週は、香りをいただくアイスクリーム、【FRAGLACE】のHidden Story。
最高の品質を誇る『食用のバラ』を使ったアイスクリームなど、香りを楽しむアイスクリームブランド【FRAGLACE】。こちらを手がける dot science株式会社、代表の小澤 亮さんにお話をうかがいました。
会社設立の理由は、『食の分野でいいものを作る生産者さんを応援すること』なんだそうですが、まずは、その想いに至ったきっかけについて 教えていただきます。
「もともと僕は建築のデザインを学生時代に専攻していたんですが、いいものを作ったとしても、しっかりブランディングやマーケティングをしていないと事業としてうまくいっていない建築家の方が多いことに衝撃を受けたことがきっかけです。それ以来、ITを使ってPRするスキルを学ぶことでいいものを作る方を応援できないかと思いました。その後、ヤフージャパンに入社しています。どうやってプレゼンテーションをしたら売れるのかを中にいながら勉強させていただいたんですが、食の分野についてはブランドが育っていなくても紹介の仕方やストーリーの発信の仕方でノーブランドのものが勢いよく売れていくというのを見たので、食の分野であれば自分が発信のお手伝いをすることで売り上げ増加に貢献できるなと思って。」
ヤフージャパンを退社後、小澤さんは 全国の生産者さんをめぐる旅に出ます。 そしてそこで 一つの出会いがありました。
「２年間かけて２５０名ほど生産者さんを回って、写真を撮って、なんなら1日でホームページ作ってプレゼントして次、という武者修行をしていました。その中にバラ農家の横田敬一さんという方がいて、彼が『自分の食用バラは自信があるんだけど、ブランディングしてもらえないか』という依頼をいただきました。その時に僕一人だとホームページを作って情報発信くらいしかできないんですけど、星付きレストランでも経験があるシェフがそのバラを認めたなら、彼にアイスクリームを作ってもらって加工品にしてアピールできるなと考えたり。もう一人の役員が科学者なんですけども、彼と一緒に食用バラの成分分析をしたところ、横田敬一さんの食用バラは一般的な食用バラと比べて香り成分が３８４０倍、というものだったんです。そういったシェフと科学者と一緒ならどんな食材でも品質が良ければしっかりブランド化して世の中に出していけるな、ということで会社を設立しています。」
代表の小澤 亮さんが、シェフの田村浩二さん、そして、農業にまつわる科学者木村龍典さんと共に始めた dot science株式会社。この会社で販売しているのが、 アイスクリーム【FRAGLACE】。
製造を担当するのは、茨城県にあるNPO法人 歩実 の障害者福祉施設なんですが、こちらに依頼することになったのは、どんな経緯からだったのでしょうか？
「その福祉施設に植物工場があるんですけども、その植物工場でいろんなエディブルフラワーを栽培しています。この植物工場は弊社の役員の木村がもともとプロデュースを手掛けていて、そこでご縁をいただいて、彼らのエディブルフラワーも販売させていただく話になりました。そこで、現場を見学に行ったら、『アイスクリーム工場もあるよ』と教えていただいて、ほんとにたまたまで、なんならアイスクリームの牛乳も福祉施設で牛を飼っていてミルクをしぼっていて、すごく美味しいのができるというのを現場で知りました。」
アイスクリームのレシピを作ったのは 田村浩二シェフ。シェフのレシピでアイスを作ってほしい、という依頼に、福祉施設の皆さんは どんなリアクションだったのでしょうか？
「はじめは、ぜひぜひやりましょう、というリアクションだったんですけども、シェフが書き出したレシピを渡したら、やっぱり表情が曇って、これは難しいねという話に一時はなりました。やはり、牛乳にバラの香りを移す、というような普通のアイスクリームにはない工程もあるんです。この量の牛乳にバラの花びらを入れて、何分間グツグツ煮て香りを移したらバラの花びらだけ取り出して、みたいな普段やっていることに対してはかなり複雑なレシピだったので、そこは苦労しながらも解決していただいた感じです。」
アイスクリーム【FRAGLACE】は、『ローズバニラ』『ローズチョコレート』『グリーンティ』そして『レモン・オリーブオイル・塩』というフレーバーの４種類。発売スタートから、およそ3年半。ここまでの手応えについて、最後にうかがいました。
「もともとアイスクリームのブランド名が【FRAGLACE】で、これは『fragrance（香り）』と『glace（アイス）』を掛け合わせています。その第一弾はバラのアイスクリームだったんですけど、そこからいい茶葉だったりオリーブオイルとの出会いがあって、シェフのインスピレーションで香りを生かした新しい2つのフレーバーができあがった形です。品質のいいものを作っているので、しっかり体験していただく場を作っていくとどんどん評判が上がっていって、周りの人に紹介していただいたり、徐々に成長させていただいている形です。しっかりといいものを作ってさえいれば、報われていくんだなと思えている状態です。」