今回は、『ロン・ティボー国際コンクール』ピアノ部門で優勝!ピアニスト、亀井聖矢さんのファーストフルアルバム【VIRTUOZO】のHidden Story。

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まずは、アルバムに収録する曲はどんなテーマで選んだのか?亀井さんに教えていただきました。

「僕は超絶技巧だったりすごく華やかな技巧を伴って、華やかで豪華な音楽の着想を作っていくような作品がすごく大好きなんですけれども、そういった僕のレパートリーを存分に詰め込んで、僕の持っている曲の中でトップ5ぐらいに難しい作品が集まったようなレパートリーで組んだCDになっています。ヴィルトゥオーソというのは超絶技巧的なというか、名人芸的な技巧だったり、そういうものを巧みに操るみたいな意味があるんですけれども、今回はそういったコンセプトで、すごく聞きごたえのある作品が並んでいるかなというふうに思います。」

【VIRTUOZO(ヴィルトゥオーゾ )】は、イタリア語で、『素晴らしい演奏家』、『超絶技巧の名手』を意味する言葉『virtuoso(ヴィルトゥオーソ)』の、最後の『S、O』を、『Z、O』と表記した造語です。

Z O』の表記を 数字の『20』と見立て、20歳のときのレコーディング、という意味を持たせているそうです。 そして、、、驚きのコメントがありました。「収録した曲は、自分のレパートリーのなかでも演奏が難しい曲のトップ5」。

「特に最初、自分が小学校4年生のときから弾いている『ラ・カンパネラ』はじめ、世界で一番難しいと言われている『イスラメイ』と、それを超えるべく書いたと言われる『夜のガスパール』と、みたいな、本当にどの曲もすごく難しいんですけれども。ただ、この難しい曲を弾くっていうときに、僕はやっぱり難しい曲を弾いてるなと思ってほしくはないんです。すごく難しいし、たくさんの音符が書かれているんですけれども、なぜそういうたくさんの音符とか難しい技巧が必要だったのかな?とか、なぜそういう音符を書いたのかな?ということをこういう作品に挑戦するときには考えるようにしていて。やっぱり、例えば限界を超えるような狂気的な表現が欲しかったりとか、あるいは、曲によっては本当にすごく壮大で、そういう技巧を伴うことによって推進力を得られたりとか、本当に一口に超絶技巧といってもこの5曲それぞれ全く違った曲層が感じられる作品が並んでいるので、難しいということにフォーカスせずに、それぞれの曲が作る世界を楽しんでほしいな、というふうに思っています。 」

そして、録音はサントリーホールでおこなわれたんですが、収録は1日で完了させる必要がありました。 

1日でこの難曲5曲をしっかりと録り切らなければいけない、ということで、前日に丸一日どういうふうな進め方をしようかということをシミュレーションしました。1曲1曲、完璧になるまでやっていくと、やっぱりどうしても音のミスに気を取られてしまったりとか、音楽的に不自然になっていってしまったり、ということが起きるかなと思ったので、とにかく5曲ぜんぶを通して録って、また5曲を1曲目から5曲までやって、というような順番で録っていくことを基本にしてレコーディングしていきました。それで大きな流れを失わないように、やっぱり小さなミスとかに気を取られて、音楽が小さくなってこじんまりしてしまわないように、本当にこの5曲全体を通して大きな流れ、推進力の中で楽しんでいただきたいという気持ちのもと、そういう方法でレコーディングを行なっていきました。」

2022年9月15日、20歳の亀井聖矢さんが録音したアルバム【VIRTUOZO】は、先月リリース。そして、今年は、初の全国ツアーも決定しましたそんな亀井さん、今後の目標は、どんなことなのでしょうか?

コンクールだったり、もちろんコンサート活動・海外での活動も含めて、その時できることを本当に全力で100%・120%で音楽とちゃんと向き合って、ちゃんとそれを表現するということをどの本番でも全力で取り組んでいくことで、それが一つ一ついろんなご縁だったりとかいろんな運だったりとか、いろんな要素があると思いますけれども、とにかく全力で頑張っていくことが、一つ一つ次に繋がっていくと思っています。その中で、僕は作曲が好きでそういうことも絡めていきたいという気持ちはありますけれども、もっと他に好きなことが見つかっていくかもしれないし、またどんな分野に興味が出てくるかっていうのは、現時点ではわからないところに目覚めるかもしれないので、そういういろんなことに、とにかく自分の好きだという気持ちに素直に全力で取り組んでいくことで、まだ自分が今想像できていないようなステージに数年後数十年後、いけているようなピアニスト・音楽家になれたらいいな、というふうに思っています。」

最後にうかがいました。『ピアノ』という楽器の魅力、どんなところに感じていますか?

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「やっぱりすごく人間が出るというか、言語を介さなくてもその人の表現したいことだったりとか、特にどういうふうに向き合ってきたのかなとか、どういう性格なのかなとかも結構手に取るようにわかったりしてしまうので、それは表現者としては少し怖い一面もあります。でも、本当に自分の心をさらけ出して、音楽、このピアノという楽器を通して、音楽を共有するという瞬間は本当に幸せですし、自分がすごく素敵だなと思本当に偉大な作品がたくさんあるので、楽譜に閉じ込めたものをどういうふうに解凍していくかっていうのは、やっぱり同じ方法になるピアニストはいないですし、そこに自分の個性が出ると思っているし。もちろん楽譜通りに弾くんですけれども、本当に楽譜通りに弾いても音楽にはならなかったりするので、微妙な間合いだったりとか呼吸だったりとか、自分が心を動かされた作品を、その自分の表現を通してたくさんの方に共有して、その曲の良さを感じていただけるっていうこの楽器の魅力は本当に計り知れないなというふうに思いますし、たくさんの方と共有できる、その空間はその時間が僕にとってすごく幸せなことなので、今後も本当に人生の一番の軸として続けていきたいなというふうに思っています。」

亀井聖矢さんウェブサイト