福島県いわき市をオリーブの産地に!―プロジェクトの秘話を松﨑康弘さんに聞く。
『福島県いわき市をオリーブの産地にしたい』そんな想いで始まったプロジェクトがあります。そして、そのプロジェクトによってできた商品、【燻製めひかりのオリーブオイル漬け】が大人気。この活動を中心となっておこなってきた松﨑康弘さんに お話をうかがいました。
福島県いわき市でオリーブを育てられるのではないか?そんなアイディアが生まれたのは、震災発生の2年前、2009年のことでした。
「オリーブが育たないだろうか?ということを思って、研究会立ち上げて、いわきでのオリーブ栽培は、その翌年、2010年から実際の栽培を始めました。 いわきは、とても気候が良くて植物もよく育つし、海もあって、とても恵まれた気候風土なんですけれども、他の地方に比べると、『これ』というものがなかなかないんです。もしオリーブオイルが取れたなら、と考えました。その引き金になったのは、オリーブの生産地として知られるスペインのアンダルシア地方とほぼ同じ緯度にこのいわきがあって、そんな単純なもんじゃないんでしょうけど、緯度が同じだったらできるんじゃないのかと。あと、冬のいわきの空がスペインの空とよく似ているんですよね。抜けるように青くって。」
松﨑さん、スペインで暮らされていたことがあるそうで、いわきの空とスペインの空が似ている!緯度もアンダルシア地方と同じ!ならばオリーブを植えてみよう...、そんな始まりだったんですね。
いわきでオリーブがうまく育つのか...その結果を知る前に、2011年がやってきます。東日本大震災、発生。
「2011年3月、そのタイミングで、実は16番目の畑を用意していたところだったんです。3月末、4月に入る前に植えようということで、16番目の畑を用意して、苗も用意をしていたところでの震災ですから、もうそのタイミングでは植えられないわけですよ。実際に放射線量をはかったり、いろんなことをやって安全性を確かめなければいけないので。
そして、5月12日に、2回目のちょっと大きな揺れがいわきが震源地として起こるんですけども、そのタイミングの時に、実はもうすでにボランティアの人が何かお手伝いしようって言って来てくれていたんです。そのボランティアの中の1人から『苗も用意してあるし、畑もできあがっているんだから植えましょうよ』と、そういう一言があったんです。それで、確かにその通りだし、その人に言われて、 その人たちと一緒に16番目の畑を植えました。そこをきっかけに、実は、たくさんのボランティアの人が全国から来るようになったんですよね。」
力となったのは、全国各地から集まったボランティアのみなさんでした。その応援を受け、いわきオリーブプロジェクトは徐々に 広がりを見せていきます。
「うまくいくかどうかわからないけれど、とにかく新しいことをやっていきましょうよ、という意味では、象徴的な復興への動きとして理解してくれていた、ということはあると思います。それから、そういう動きに対してやっぱり1番大きかったのは、外の人たちからのボランティアという形での支援ですね。のべにすると、年間に500人、600人、800人、1000人という形でどんどん増えていって、それから、東京の中野には『オリーブのはばたき』という、オリーブのいわきでのそういう動きをみんなでお手伝いしようよ、という会ができたり。 本当にいろんな形で、そういう意味でも、オリーブを育てるということが、農業者の農業を応援するというのではなくて、これからの復興、、、その後もたくさんいろんなことありましたよね。このコロナもそうですけれども。コロナ禍は確かに来れなかったんですけれども、やっと来れましたっていう形で、また来てくださる。 本当にありがたい動きですよね。」
いわき市でオリーブを育てようというプロジェクト。当初は市内の15箇所500本でスタートしましたが、現在までに60箇所6000本、という規模に拡大。オリーブオイルや人気の【燻製めひかりのオリーブオイル漬け】をはじめ、パスタ、オリーブのお茶など 商品化も実現しました。さらに、この春、新たに始まろうとしていることがあります。
「このプロジェクトが現実的なオリーブオイルになったり、オリーブの商品になったり、みなさんと繋がっていけるひとつのアイテムとして流通に乗り始めて、ということを考えると、今度はじゃあ、人と直接つながっていくということを、ボランティアでみなさんが来てくださるという形から、オリーブの栽培をゼロから一緒に始めてみませんか?というプロジェクトを、今準備してるところです。土地の確保は、市の方から提供していただいて、集団移転跡地なんですけれども、津波の被害があった場所、海沿いの土地が整備されてある場所を利用してのオリーブ栽培を4月から始める予定でいます。これに関しては、ボランティアでみなさん来てください、というのではなくて、みなさんで一緒にオリーブを育てましょう。オリーブの里をつくりましょう。 実際にこのいわきという土地で、皆さんとつながっていきたい、そういう環境づくり、地球規模の自然に対し想いを巡らす、考えを深めていくような現場として、オリーブをこれから育てたい。ということで、今また土づくりからやってます。」
オリーブの里を作ろう、という新たなプロジェクト。JR常磐線の末続という駅のすぐそばでおこなわれるということです。そして、松﨑康弘さんは この活動に、こんな想いも込めています。
「特にこのコロナがあったじゃないですか。コロナの何が問題だったかというのは、やっぱりグローバリゼーション、グローバルなその世界のありよう、経済的なつながり、広がり、これが実はすごい引き金を引いて、コロナが全世界に蔓延してしまった形になった。それからその中ですごく経済的にも、社会的にも生活が厳しくなっていくのは、やっぱり資本主義経済だけに頼っていく価値観自体がやっぱり歪んだ形で現れた、大きな問題なので、経済をもう1回考え直す、それから自然との関わりということも見直す。すごく大事なタイミングなので、 この次のプロジェクトは、そういうことをみんなと一緒に考えていける現場にできたらな、という風に思っています。」