今回は、障がいのある人たちが作るアート雑貨・ハンドメイド雑貨を集めたセレクトショップ。東京・吉祥寺にある『マジェルカ』のHidden Story代表の藤本光浩さんにお話をうかがいました。

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まずは、藤本さんがお店を開いたきっかけについて教えていただきました。

お店は2011年にオープンしてるので、もう12年になるんですけども、きっかけとしては障害者のために何かをやりたいっていうスタートではなくて。当時ちょっと関わっていたお仕事で、国産のいろんな手仕事の製品を集めて販売する企画のバイヤーをやっていた時に、たまたま興味を持って見つけたものが後から調べたら障がい者施設で作ったものっていうことで。それまでは私自体、それこそバイヤーやってたって言いましたけど、障がい者施設で作ったものイコールそういうビジネスで扱えるような商品だとは想像もしてなかったし意識にもしてなかったのが、それが障がい者施設で作った、障がいのある人たちが作ったものだっていうことで、それまでの私が持ってた考えと全く違ったんで、結構驚いたんですよ。」

藤本さんはこう考えます。障がい者施設の生み出すアイテムに、自分が出会ったような素晴らしいものが他にもたくさんあるのではないか?その直感は当たっていました。しかし...

「ただ、やっぱりそれらは地元の福祉バザーとか福祉ショップで、本当にひっそりと従来の福祉的な売り方でしか売られてない。私もそれまで知らなかったように、ほとんどの人の目につかないような、知る人ぞ知るっていうんですかね、売り方をされていて。でも、ちゃんと見ればすごく魅力的なものだし、価値もちゃんと備えてるものっていうのがいっぱいあって、というところからのスタートですね。」

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20119月、マジェルカはまず杉並区の西荻窪にオープン。さまざまな人が〈混ざる〉こと、色んな人が混ざり合う社会を目指し、『マジェルカ』と名付けられました。そして掲げたテーマは、福祉を意味するウェルフェアとフェアトレードを組み合わせた《ウェルフェアトレード》。

「私たち、《ウェルフェアトレード》という言葉を使って活動を表現してるんですけど。ウェルフェアは福祉、あとは、フェアトレードで。フェアトレードっていうのはだいぶ市民権を得てきていますが、主に東南アジア・アフリカなどの搾取されてる人たちや生産者に対して、きちんと利益もその人たちに還元しようっていう活動じゃないですか。 そういう意味ではウェルフェアトレードというのも、安売りされていた福祉施設のもの、障がい者が作っているものは安くて当たり前という感覚っていうのは、実は福祉業界には今でも根強くあるんですけど。そうじゃなくて、良いものは良いっていう。」

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ウェルフェアトレード、という考え方を広めるため、マジェルカでは福祉作業所のみなさんへ、"こういう商品はできませんか?"と提案することもあるそうです。例えば、山口県の〔はんぷ工房 の帆布バッグについては、こんなやりとりがありました。

「山口県にある作業所さんで、自分たちで帆布のバッグを縫製してオリジナルのデザインをしたものを作ってるんですけど、帆布って岡山県の倉敷帆布っていうのが国内でも、国外でも、評価が高くて1つのブランドにもなってるんですけど。倉敷帆布を織っている老舗のメーカーさんから生地をロットで仕入れて、バックをどんどん作ってるんで、もうプロの工房レベル。今年、ついこの間からなんですけど、それまでは比較的アースカラー中心でずっと物を作ってて。その中で、マジェルカからのリクエストでオリジナルカラー、うちで選んだ鮮やかな5色を今年から作ってもらうようにしたんです。そういうビジネスパートナー的な、こちらがやってほしいことをやってくれるみたいな関わり方もしてくれるところではありますよね。だから、そういう意味じゃお互いにウィンウィンの関係です。」

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マジェルカから【鮮やかな色の帆布バッグ】を提案し、それを商品化。現在、マジェルカで販売されています。このように一緒に商品づくりをする場合のほか、時折、福祉施設のみなさんへオンラインの相談会もおこなっているそうです。

「リアル店舗を持って、もう250もの作業所さんとのやり取りをずっとして経験値積んでるっていうのは、図々しいけれども、うち以上のところは現実としてないと思ってるんで。やっぱりその知見とか積み重ねたものを還元して、それで、ウェルフェアトレードっていうのは世の中の人が障がいのある人たちの物に対してちゃんと価値を認めるだけじゃなく、障がい者施設でものづくりに携わってるスタッフさんたち、福祉側ですよね。それ言ったら行政もそうなんですけど、福祉ショップ・福祉バーザー・物を作ってる福祉の人たち自体も、障害のある人たちが作ったものは福祉バザーじゃなきゃ売れないよね、福祉価格じゃなきゃ売れないよねっていうその呪縛。実は一般の人の理解を得るより、そっちをどうにかすることの方が間違いなく難しいことだって感じています。福祉の側の人たちの、"障害者だから"というところを改善したり、本当はチャレンジできるっていう部分を鼓舞したりっていうことをしたくて、自主的にそういうオンラインの相談会っていうのもたまにやっています。」

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現在は、吉祥寺で営業を続けているマジェルカ。代表の藤本光浩さんに最後に伺いました。オープンから12年、これまでの手応えと今後の課題とは?

「ウェルフェアトレードは、受ける側の人たちの理解は広がってきたとは思ってます。ただ、まだ知らない方はいっぱいいるだろうから、まだまだやっていく。最初は世の中の人たちに知ってもらうっていうところからスタートしたんですけど、やっていく中で、さらに広げていくためには福祉の側の人たちの意識改革が重要だし、それなくしてはできないなっていうのをすごく強く感じてるので。そこはもう、まだまだどころか、まだまだまだまだという感じなので。そういう意味じゃ、やらなきゃいけないことがいっぱいあるだけじゃなく、やりたいことがいっぱいあって、本当に人手と時間が足りないので。もしボランティアをやっていただける方、聞いてる方で手伝いたいという方がいらっしゃったら、とっても嬉しいですね。」

マジェルカ

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