今回と次回は、ユニコーンの奥田民生さんとABEDONさんにお話をうかがいました。
10月にリリースされた、ユニコーンのメンバーを模したAIによるヴォーカルでレコーディングされたEP、『ええ愛のメモリ』。これに続いて先月、アルバム『クロスロード』が発売になりました。『クロスロード』には、『ええ愛のメモリ』に収録された曲の、本人ヴォーカル・ヴァージョンも収録されています。まず、AIヴォーカルの『ええ愛のメモリ』のことから教えていただきました。そもそも、なぜ、AIを使おうと考えたのでしょうか?
ABEDON:これ、割と取材の最初の方なんで、だいぶ思い出しながら(笑)
奥田:ま、でも、AIのことについてはあなたしか知らないですから。
ABEDON:そうなんです、僕なんです。
奥田:他のメンバーいまいち分かってないまま進みましたからね。
ABEDON:私が話さなきゃいけない...。
奥田:そう、ABEさんが分かってれば、そこについていけばいいってみんな思ってました。なんでAIだったんですか?
ABEDON:なんでだったかなー(笑)
奥田:なんか、まあ、自分らが飽きないように、新しい風をちょっとでも入れて進んでいくわけよ、俺たちはね。そういうことの一環として、巷でなんかAIとか言ってるなってことでしょ?最初はね?もう、だから、その最初からABEさんが持ってきたんですよ。
ABEDON:いかがでしょうか皆さん。っていう感じで。テストで最初、みんなに説明するのに作ったテスト版みたいのがあって。それを 奥田くんに聞かせたら、"俺じゃねえ"って1人で言ってましたね。
奥田:なんかね、みんな、俺以外の人はね、俺が歌ってる歌って聞こえてるらしいんですけど。
ABEDON:そう聞こえてんの。
奥田:本人は違うのよね。違うのよ。"これ、俺、歌ってないです"ってなる。
ABEDON:そうなんよ。だから、ま、そこがAIなんですけど。
正解なんですよ。奥田くんじゃないんで、AIなんで。
奥田:そうなんですよ。でも、俺にしか分かってないってどういうことですか(笑)」
EP『ええ愛のメモリ』は、《宇宙兄弟》の漫画家・小山宙哉さんとのコラボ・ムービーがあります。そのストーリーは、【宇宙兄弟のふたりが、月にある巨大なクレーターで、ユニコーンのような5人が描かれた壁画を発見。そこにあった岩を持ち帰り解析したところ、音楽が入っていて、それが、遠い昔の誰かが残した『ええ愛のメモリ』】、というもの。
奥田:要するに今回、昔のが発掘された的なことなんで、若い声をAIにやらしてみたいなこと。でね、個人的には、常にいつも同じ声でやってないじゃないですか。普段いろんな声出すでしょ。ちょっと若っぽくしたりもするのよ。だって、曲によっては曲に元気そうに歌うじゃない。だからこの声も出るけどね、っていうのも思ったね、俺。まあでも実際はもう年とって声変わってるんで、違うでしょうけど。だからなん今回のやつって本人には分からないことが多いのよ。 他の人のやつの方が分かりりすいよ。
AMEDON:他の人が聞いたらもう絶対EBIだと思ったでしょ。
奥田:うん、思ったね。他の誰でもない。
ABEDON:誰でもない(笑)
このAIヴォーカルは、ABEDONさんを中心に作られたそうですが、制作は どんな風に進行したのでしょう?
ABEDON:実際やってみると問題がやっぱ発生するっていうか。オケは俺たちが実際にやってるんで、ちょっとヒューマンなわけですよ。それにAIを乗っけると歌じゃなくなっちゃうよね、あれ。
奥田:あいつ、だから自分勝手なんだろ。
ABEDON:自分勝手な
奥田:あいちゃん。
ABEDON:人のこと聞いてない、聞いてなく歌うから歌じゃないの。歌にするのが大変でしたね。
奥田:そりゃそうだよね、そこまでAIわかってくれないでしょ。おっさんのオケを(笑)
ここでこのテンションで来るか。みたいなこと結構あって、歌にするにはどうしたらいいのかっていうのをすごく考えたかな。それでね。『クロスロード』ってアルバム出すんで、それを超えちゃいけないわけよ(笑)
奥田:宣伝のためだからね、言ってみりゃ。
だって、本物来た時に、あれ?本物の方がダメ...みたいな。
奥田:え。メンバーでそんな人いませんでした?
ABEDON:いやいやいや、やめてください(笑)クオリティを落としたりとかして、わざと。
奥田:だから、違う方がいい。
ABEDON:面白いから。
奥田:うん、確かに。確かに。」
ユニコーン、87年のデビュー・アルバム『BOOM』に収録された、初期の代表曲【Maybe Blue】。AIヴォーカルの曲を作る時に、メンバーそれぞれがこれまで書いた中で印象的なものを!ということで、民生さんが今回書いたのが、【ネイビーオレンジ】というナンバーです。
奥田:AIに歌わせるのに、曲をどうするか。打ち合わせで、じゃあ、俺はやっぱり【Maybe Blue】ですよね?みたいなことでしたよ。自分から空気読んで"俺はMaybe Blueだよね?"って。"やればいいんでしょっ"みたいな。"どうせ、大迷惑か、どっちかでしょ?"みたいなことではあったんです。
ABEDON:分かってらっしゃるね。
奥田:でも、Maybe Blueって曲ね、ありますけど、最初の頃の。書かないでしょ、もう。だからね、逆にね、嬉しいっていうか、なんかこう、楽しかったですよ。その理由がちゃんとあって、【Maybe Blue】みたいな曲を作るっていうのを、やってて、楽しかったです。
ABEDON:うん。
このAIヴォーカルのEPが、アルバム『クロスロード』へ繋がっていくわけですが、そのお話は次回。今回は最後に、今回のAI企画の首謀者であるABEDONさん、そして奥田民生さんから、こんなコメントをいただきました。
ABEDON:余談ですけれども、ものすごい工程を何回も何回も色々やって完成させたんですよ。ベルトコンベアみたいに作業でやってスムーズにいくんだなと。なので、いつでも言っていただければ。
もうノウハウがあるんで。
奥田:なんかね、最初外部に頼もうとしたら、莫大な金額言われたんでしょう。それが何分の1ぐらいに。
ABEDON:もうちょっとね、スズメの涙みたいな感じで僕たち使われてるんだから、
奥田:なんならこっちに依頼してくれた方が安いよ。
ABEDON:だいぶ安い、もうだいぶ安い。もう、カビラさんのDJとかすぐ作れる。マジで。
奥田:そういうこと、ユニコーンはやります。ユニコーン、これから転職します(笑)」