今回注目したのは、静岡県静岡市にある日本茶専門店『chagama』。

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特に若い世代にお茶の新しい楽しみ方を提案したい、という想いで営業するchagama』のHidden Story日本茶専門店『chagama』を手がけるのは1877年創業、老舗の製茶問屋【マルモ森商店】です。

「まずお茶の業界っていうのが、茶畑を持っている農家さん、そして私たち製茶問屋という農家さんからお茶を仕入れて焙煎したりブレンドをする会社、そして専門店、この3つに分かれています。つまり、農家さんが全部作ってるわけじゃなくて、間にそういう焙煎とかブレンドをする専門の会社、問屋兼メーカーがいて、その問屋兼メーカーを製茶問屋と言います。私どもは、マルモ森商店という、製茶問屋という位置付けになります。」

今回お話をうかがったのは、【マルモ森商店】の6代目・森宣樹さんです。製茶問屋である【マルモ森商店】が、直接お客さんにお茶を販売する 日本茶専門店『chagama』をオープンしたのは、2014年のことでした。そのきっかけはどんなことだったのでしょうか?

「先ほどお話したように、農家さんと私たち製茶問屋と販売店という3つの流れになってるんですけれども、私たちの販売先というのは全国のお茶専門店になります。やはりお茶離れというか、全国のお茶の専門店がなかなか売り上げが上がらないという状態になってきて、どうやったらお茶が売れるかっていうのはchagamaをやる前にも色々お客様に"こういうお店がありますよ"とか、"東京ではこんなものが売れてます"とお話をしていたんですけれども、自分が専門店をやってないのに そういうことばかり言っていても説得力がないなという思いから、実際に実験店としてこのchagamaというお店を開いて"こうやったら若い人にお茶が売れますよ"とか、"こういう売り方がいいんじゃないですか?"という実験をそこでして、自分たちの既存のお客様にそういうノウハウを展開していく。そのための実験店としてのスタートでした。」

実験店としての『chagama』、どんなお店にしようと考えたのでしょうか?

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「まず、30代とか40代の方に聞いても、"お茶屋さんに入るのにちょっと躊躇する"、"入ったら買わなきゃいけないんじゃないか"とか、"どういう買い方をすればいいのか分からない"、"街のお茶屋さんって入るのに勇気がいる"という声が非常に多かったです。あとは、10代20代がお茶屋さんに入るイメージが全く湧かなかったので、私が最初に考えたコンセプトが《高校生がお茶を買いに来られるお茶の専門店を作ろう》。だから、高校生がどうやったらお茶を買いに来てくれるかなというところからスタートしたので、chagamaがある立地は静岡の街中ではなくて住宅街なんですけれども、なんで住宅街を選んだかといったら半径500メートル以内に高校があったり専門学校があったり大学があるので、ここでお茶が売れるようになったら全国どこでも同じ展開ができるだろうなと思って。」

確かに1020代がお茶屋さんに入るというイメージはあまり湧かないかもしれないですね。そんな若い世代にアピールするため、森さんが考えたのは...

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「高校生が飲みやすそうなドリンクを提供すれば、お茶屋さんに入るきっかけになってそこからもう少し興味を持って、自分でお茶っ葉で急須を使ってお茶を入れてみようかなという気持ちに繋がっていくだろうから。まずは店内に足を運んでもらわなければいけない、一歩踏み込んでもらわなければいけないという思いで、煎茶エスプレッソとかラテとか、そういう商品を開発して入ってもらうきっかけを作りました。」

煎茶エスプレッソ、煎茶ラテとは?

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「自分が沸々とお茶業界で感じていて溜めていたアイデアがあったんですけれども。まずラテというものが流行っていたんですけど、コーヒーのラテというのは本当はエスプレッソ抽出でなければいけないですよね。エスプレッソじゃなくって牛乳を加えたものは本当はオレなので、ラテって本当はエスプレッソじゃなければいけないよな、本物のエスプレッソを抽出しなければいけないというのがまず1つあったのと、海外に輸出するために海外に営業をかけていた時に、お茶っ葉を売るためには急須を売らないと日本茶を飲んでもらえないという現実があって。でも、世界中に急須がある国っていうのは日本含め中国とか。そうすると結構時間がかかるなと。でも世界中にあるものって何かなと考えた時に、どこにもあるものはエスプレッソの機械で。エスプレッソの機械で日本茶を入れることができたら、日本茶ってもっともっと世界中に伸びるんではないのかな、この2つが合わさって煎茶エスプレッソというものを作ろうという考えに至ったので、chagamaのために考えたというよりも、本業の卸しで世界輸出をするためにとかいうものが合わさってできたのが煎茶ラテというものですね。」

エスプレッソの機械でお茶を抽出できれば、急須がない国でも茶葉の利用を促進できるのではないか? 実際、コーヒーのエスプレッソマシンで日本茶のエスプレッソ抽出に成功!今もお店で出されているんですがちょっとした設定が必要で、それを見つけるまで時間がかかったというお話でした。そしてもう1つ、chagamaがおこなっている試み。50グラムという少ない量でも 茶葉を販売されています。しかも、透明のパッケージ・四角いブロック状の形でお茶の緑が目にも鮮やかです。

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「お茶の品質劣化に繋がるものは太陽の光と酸素と温度で、この3つから守るために、お茶っていうのは中身が見えないアルミ袋に入れられて売られることが業界では当たり前なんですけれども、今の消費者は中身が見えるものではないとなかなか手を出さない。じゃあ中身を見せて、100グラムが基本だったのを50グラムと買いやすくしたら売れるんではないのかな、ワンコインで買えるものにしたらもっと手軽なものになるんではないのかなという想いから50グラムに。そして中身が見える袋で、中身が見えるとどうしても光で劣化が進みやすくなるから、じゃあUVカットの袋を開発して品質劣化も防ぐようにしながら50グラムのもの、と消費者目線に立って作ったものなんですけれども。あとは、お茶自体がみんな色とか形が違うから、外の袋をデザインするよりもお茶自体がデザインになるのではないのかなと。」

さまざまな挑戦を続ける 森宣樹さん。最後に、お聞きの皆さんへのメッセージをいただきました。

「今、海外から日本茶の有効性についてすごく注目を浴びていて、日本茶の輸出というのが国が目標として立てた数字を毎年クリアするぐらいどんどん輸出されています。それを逆に日本でも再認識してもらって、日本人に日本でできたお茶を飲んでもらいたい。日本人が毎日飲んでも全部自給自足、国内でまかなえる農作物って数少ないと思うんですけど、それの中にはお茶がありますから、もう一度お茶の良さに日本人に気付いていただいて、日本人に飲んでもらいたいっていうのが僕の想いですかね。」

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