今回は、熊本県の阿蘇市で阿蘇産のフルーツ・野菜、そしてジャージー牛乳を使ってアイスを作る『阿蘇天然アイス』のHidden Story

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『阿蘇天然アイス』の代表は、石橋久美子さん。アイスのお店を始めるそもそものきっかけは、今から40年ほど前のことでした。

「結婚してすぐ子供ができまして。2人目の女の子を産むと、その子が発疹がたくさんできて、喉とかですね。お医者さんにもたくさん見てもらいに行ってたんですけど、その時はアレルギーなのかがあまり分からなくて。お医者さんと相談をしながら、"のど越しのいいものをあげてください"と言われたんですよ。それで、農家に嫁いだんでトマトができる時期に湯むきして、それを冷凍にかけるっていう、昔で言うなら製氷器っていう、細かく四角い氷を入れるのがあるんで、それに入れまして。で、色んな野菜を少しマッシュしたものを冷凍して、それをちょっと火にかけて少し自然に戻して口に入れてやるっていう。それで甘いのを入れるとすごく喜ぶんで、最終的にはてんさい糖を使いましたけど、だんだんアイス風に。アイスなんかが喜ぶんですよね、だから手作りでアイスを作りながら。どうしても子供の口の中へ美味しく入れたいというのがあって。」

そして時は流れ、お子さんも成長。石橋久美子さんが『阿蘇天然アイス』を始めたのは、今から19年前のことでした。

「50歳から始めたんで。50を目の前にしてですね、子供がいなくなって主人と2人暮らしになって、したいことがしたいなと思って。アイス作りとかケーキとか全部手作りで私作ってたんで、作りすぎて近所に配ってたんですね。で、なんかもらった方が評判いいんで、それが仕事にしたいなっていう気持ちがあって。天然素材を使ってですね、もうそこら辺にある、目の前に作ってる人がいるっていうところの素材を使って、これがアイスになると非常にいいだろうなと思ってたんですね。周りからも、すごいお金かけてバカバカしいって思われてたと思いますけど、やりたかったんです。なんかね、せっかくすぐ取れたての完熟したトマトが真っ赤になったものがあるわけですよね。トマトとか、ナスももうパンパンに腫れたような水分を吸った素材があるわけですよ。だから、これでアイスが作りたかったんですね。ケーキでもよかったし、なんでもよかったってみんな思うけども、そうじゃなくて、やっぱり1番ほんと子供が喜んだのがアイスだったからです。」

そんな阿蘇天然アイスの基本材料、まずは「阿蘇 小国ジャージー牛乳」

「ジャージー牛乳。私はそこで生まれたんで、同級生も未だにジャージーを作って、ジャージーで生計を立ててますし、小国っていうところでジャージー牛乳で育ってるんで、これを活かしたいなと思って。」

石橋さんの地元、小国のジャージー牛乳。そしてもう1つ、重要なのが《新鮮な果物と野菜》です。例えば、キウイやハーブのミントは...

「坂梨っていうところにキウイ農家さん、おばあちゃんたちが作ってる組合があって、おばあちゃんたちだけで作るとこがあるんですよね。その方たちが作ったキウイで作ったり、それからハーブミントがすごくいいんですね。もうハーブだけで作るミント、ハーブミントっていう普通だと液体入れますけど、全然そういうのじゃなくて。本当に天然素材なんで。これはですね、小国の温泉が出るとこがあるんですね。そこで同級生がハウスでミントを作ってるんですね。その温泉を利用して、そのミントで作ってます。」

『阿蘇天然アイス』には、ジャージー牛乳を使ったミルク系のアイスと、トマトやブルーベリーなど、牛乳は使わず素材そのものを存分に味わえるシリーズの商品があります。その種類は、年間で50以上。

また、製造のポイントとしては、アイスクリーマーから出てきたアイスをひとつひとつ手作業でカップに詰めていること。手詰めにすることで、冷たいままカップに入れることができる。これが、おいしさの秘密なんだそうです。

そして、1つのカップで2種類のアイスを楽しめる【ハーフ&ハーフ】という商品もあるのですが、これも全て手詰めかなり大変な作業なのでは?と想像するのですが...

「めんどくさいことするのが私たち母親の役目と思って、もう他にはできないだろうなと思ってます。私たちお母さんとして子どもにこれも食べてもらいたい、これも食べてもらいたいと思って、じゃあ1つに詰めてしまおうっていうのがハーフアンドハーフで。1つのカップに2つ入ってたら非常にいいよねっていうことで。これも食べたい、これも食べたいっていうので、子供に食べさせたいっていうことで、二層にしたんですね。」

『阿蘇天然アイス』を始めてから19年。素材を生産する農家の皆さんや、一緒にアイス作りを行う地域のお母さんたち。そこには、いくつもの素敵な出会いがありました

「色んな人と一緒に、ほんとに出会いは素材を通じてからもあるし、持ってこられる方ともいろんなこと喋って興味持ってっていう風にしてですね。50からがすごく、わーって、あっという間にもう60、8から9になったなっていうぐらいです。それでも現役で、まだ手詰めでやってます。なんか今はですね、もう生きがいで。工場に入るのが楽しみで。みんな若い人と一緒に、だからまた楽しいです。お店の後ろに工場がありますんで、小さいとこなんですけど、私たち年齢のいったものは若さをもらい、若い人は知恵をもらうっていって、ありがたいなと思ってやってます。」

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また、代表の石橋久美子さん、最後にこうおっしゃっていました。《大変なこともあったけれど、家族の支えがあってこそここまでやってくることができた》ちなみに、今お店は、最初のきっかけとなった娘さんを含め、ご家族で運営されているそうです。

阿蘇天然アイス