今回は、前回に引き続き、aikoさんのニューアルバム『残心残暑』のHidden Story

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アルバムには、劇場版《名探偵コナン 100万ドルの五稜星》の主題歌【相思相愛】も収録されています。"あたしは あなたにはなれない"このフレーズが非常に印象的なナンバーですが、これはどのように生まれたのでしょうか?

「このフレーズは、【星の降る日に】という曲のデモを録ってる時に、私はアナログのタイプなので、全部いっせーのせでボイスメモとかで弾き語りで録るんで、失敗すると全部1からやり直しなんですよ。で、【星の降る日に】をほんと40回ぐらい録っててもう無理!ってなって。台所に行ってお水取りに行って、自分の部屋に戻る廊下で"♪あたしはあなたにはなれない"ってフレーズが出てきて。ちょっと【星の降る日に】を中断して、わっーて書いたんですよね。自分の中のテーマでずっとあるのが、〔あたしはあなたにはなれない〕っていう。なんか大切な人がいればいるほど、100パーセント同じ気持ちで重なり合えることができないから、とても悲しく思ったりだからこそ相手のことを知りたいと思ったりするなっていうのがあって。この人にはなれないから私はどうすればいいだろうとか、この人今めっちゃ楽しそうやからどうやったらもっと自分も同じ気持ちで楽しめるかなとか、そういうのをよく考えてるのでこのフレーズが出てきたのかなと思います。」

このように具体的なフレーズについて、もう一つ、うかがいました。アルバム8曲目【blow】というナンバーにはこのフレーズがあります。"あなたが犬になっても見つけられる自信はあるのに"

「なんか生まれ変わっても見つけたくないですか、やっぱ大切な人ってね。あと、思い込むことが多いからか知らないですけど、虫とか飛んできたときに、'これ、おばあちゃんやったらどうしよう?'とかよく思うんですよ。漫画とかアニメを見てるからなのか。だから私、あんまり虫は無駄な殺生はしないというか、蚊とかも大体タッパーでカパッてしてベランダに逃がすというのをしてるんですけど。だから、自分がそうやって生まれ変わることもあるかもしれへんし...っていう設定をよく考えるんですよね。頭ん中で。でもなんか本当にずるい考えで生きてるんです。

〈あの時助けてもらった虫です〉って言って、自分が死んだ時に天国に連れて行ってもらおうと思って。〈あの時助けられたクモです〉って言って、みんなをこうクモの糸みたいに引っ張ってくれるっていうな、よこしまな気持ちもちょっとあるところもあります。」

さあ、デビューから26年。常にみずみずしく、切ないラブソングを書き続けるaikoさん。その秘訣はどんなところにあるのでしょうか?

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「心がけてるのは、楽しいこととか、面白いこととか、好きなことは自分の中でハードルをあんまりあげないっていうか。楽しいことはもっと楽しくしようと思うし、好きなものも自分の中でこだわりがそんなにないっていうか、良い人やなって思ったら、すごいその人のことすごい好きになる。好きになったら、その人にもっと自分を知ってほしいって思う、っていう。そのスピードがちょっと速いと思います。それで、そうじゃなかったら蓋すんのも速いみたいな。なんか、楽しく過ごしていこうっていうのは前よりも強く心がけてるところなんですけど、そっからなんですかね。あと、1人遊びはずっと子供の頃から変わらずに今もやり続けてる。どんなに忙しくなったりとか他にやることがあっても、全部遊びにするっていうゲームは続いてると思います。グッズ作ったりとか、曲作りもどっちかっていうとやらなくちゃいけないっていうことっていうより、遊びでやるっていうか。歌詞を書くことも、楽しかった気持ちを自分の言葉で歌詞にして変換するならこういう気持ちかなっていうゲームをやってるっていう感覚なんですよね。それは決まり事としてあるっていう。うん。」

ただ...aikoさん、こんなこともおっしゃっていました。

「でも人としてはすごいめんどくさいと思います。ずっと聞き分けが悪いので。あと問い詰めちゃうし。日常でも、周りのスタッフの人とかもめっちゃめんどくさいと思います。女性スタッフの人とかに'なんでaikoが前髪切ったの気づいてくれへんの?!'とかもういくつやねんみたいな(笑)。そんなんをずっと言ってるんですよ。歌詞やからこれオッケーとされてるんですけど、ほんまはもうこれ素でやってるから、地でやってるから、もうめちゃくちゃめんどくさいと思います。周りの人はごめんなさい。ありがとう、そしてほんとに。」

最後は、アルバムのラストトラック、【赤い手で】について。

「今回のアルバムはセットリストを組むみたいな感じで組んでみたんですけど。なんとなく【blue】をレコーディングしてるときに、これ1曲目にしたいな、って思って1曲目に【blue】を置いて。そこからセトリ組むんやったらこんな感じかなと思って組んだら【赤い手で】が最後だったんです。sそれで、この曲で終わりたいなと思って。この曲って、その赤い手で包んでくれたことで、私は今日ほんとに幸せだと思えたっていう歌詞があるんですけど、実際ほんとに手が赤くなるぐらい寒い季節にこの曲が出来上がったんです。だから、残暑とともにずっと聞き続けてたら冬になってたっていう風な感じになって、皆さんにとってもそういう風に時間が過ぎていったらいいなと。」

aiko