今回は、前回に引き続き あいみょんさんのニューアルバム『猫にジェラシー』のHidden Story。
まずこの曲のことから教えていただきました。ドラマ《降り積もれ孤独な死よ》の主題歌【ざらめ】。
「サスペンスドラマの主題歌が初めてやったのでちょっとダーク目な楽曲にしようとは思ってたんですけど、楽曲の内容自体はちょっと今の私自身の想いだったりとかをがっつり曲にのせてもいいのかなと。大きく言いますと、"無名の刃"っていうものがいわゆる現代においてよく問題になっている誹謗中傷だったりとか、言葉の刃みたいなものが刺さり続けているっていうイメージで書き始めました。本当の名前も知らない人たちから振りかざされる刃を抜くすべはどこにあるんだろうかという。もう一応皮肉たっぷりな気持ちでは書いてて、無名っていうところに皮肉はこめているつもり。名刀じゃないっていう。無名の切れ味の悪い刃っていうイメージです。」
一方、こんな曲も入っています。【偽者】というタイトルの曲なんですが、朝、目覚めてみたら知らない男性がベッドに。そういえば、昨日お酒を飲みすぎて...。ありゃりゃーというシチュエーションを描いた1曲。
「楽曲作りに関しては自分の日常生活が全てヒントになってるので、私のだらしない生活とか、なんかお酒で失敗することとか。そういうことがやっぱり曲になることもありますね。ありゃありゃ、みたいなエピソードはまだいっぱいあるので(笑)これからも書くんじゃないかなと思いますけど。私じゃない、これは私じゃないって思うことがいまだにあるというか。例えば、じゃあこの後家帰って、もう食器も溜まってて、なんか部屋がぐちゃぐちゃって時に、なんか自分のせいにしたくないというか。ちょっと逃げたい時に、私じゃないからこれは違う違う、って思ってしまう自分がいて、この曲もだからそういう曲ですよね。ちょっと逃げてるというか。」
このように、様々なヴァリエーションの曲を作るあいみょんさんですが、続いては、作詞作曲についてこんなことをうかがいました。どの曲も、すぐにメロディと歌詞が覚えられて口ずさみたくなる。この曲作りの秘訣はどんなところにあるんでしょうか?
「同時進行で作詞作曲をしているので、もう思いついたままなんですよ。もう秘訣とか全くなくて教えてほしいぐらいですね(笑)。もうほんまに思いついたまま作るので。音楽の理論みたいなのは全く知らないので、思いつくままにっていう感じなんですけど。それで自分がしっくりきたら、いいなって思えるっていう。もうギター持って適当にしゃべりながら曲作るみたいな感じなので。言葉選びもメロディー同様、自分からスッと出てきた言葉をそのまま採用することが多くて。たまにちょっとだけここやっぱ変えようかなとかはあるんですけど、ほとんどそのまま出てきた言葉をそのまま。もうなんか直感とかいう感覚もないぐらい、割とすーっと作るタイプではあるのかもしれないですかね作詞作曲は。なんか何年経っても作詞作曲のやり方とかって自分も説明できなくて、全く見てもらった方が早いかもしれないって(笑)」
ちなみに、作詞作曲を始めてからこれまで、ご自身の作る曲について、変化を感じる点はあるのでしょうか?
「気持ちはずっともう10代で曲作りを始めた時から熱量とかは変わってないですけど、やっぱり大人になっていって知る言葉も増えますし、経験値も上がると言葉の使い方が上手くなるんじゃないかなとは思ったりはするので。そういう意味で言うと変わってる気はします。なんか結構言うじゃないですか。アーティストがデビューすると、あいみょんなんか丸くなったねって言われますけど、なんかそうやって丸くなったんじゃなくて。自分は言葉の使い方が上手になったから棘がなくなったと思ったり。もともと棘があるなんて思ってないんですけど、自分はもともと丸いんですけど(笑)。だから、昔は【貴方解剖純愛歌 ~死ね~】っていう曲も作りましたけど直接的な言葉で1発で仕留めるっていうか、そういう曲の書き方でしたけど。今は経験値とその知った言葉の数でじわじわ攻撃するみたいな曲が書けるようになったからそれはだから丸くなったって言われちゃうのかなと思いますけど。よくよく歌詞読んだら、全然昔よりもっとグロいこと書いてるけどな、って思う時もありますね。」
さあ、ニューアルバム『猫にジェラシー』をリリースしたばかりのあいみょんさんですが、今後については、どんなことを考えてらっしゃるのでしょうか?
「私はもう割と次々って思いながら、じゃあじゃあ次は一体どんな作品を作ろうっていうモードに結構すぐ切り替わっちゃうタイプなんですよ。ないがしろにしてるわけじゃなくて、このアルバムを。良いものができたらからこそ、次はじゃあもっとさらにこんなものができるんじゃないかなっていう妄想が止まらないと言いますか。ラッキーなことに、まだスランプみたいなものは経験したことなくて、楽曲制作に関しては。なので、とにかく楽曲をきっと思いつく限りこれからも作り続けていくんかなと思ってます。」