今週は、埼玉県日高市にあるお店『翔すけ』のHidden Story

「『翔すけ』は埼玉県の日高市という市にありまして、そこで企業配達専門のお弁当店から派生して、地元のお野菜、特に規格外のものを中心に乾燥させて粉末にしている野菜の粉屋になります。」

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野菜の粉末を製造、販売されている『翔すけ』。代表は、樋口麻子さんです。

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「私は昔からいつか自分でお店をやりたいなと思っていて、衣食住に関わるお店がやりたいなと漠然と思っていました。それで服飾の大学に入りまして、在学中にアルバイトをしながら調理師免許を取しました。その後、大学の卒業の時にちょうど東日本大震災がありまして、やはり地元で働きたいなと思って地元の病院給食の調理師として就職して働いていました。その在籍していた給食会社が吸収合併されることになりまして、そこで一念発起をして当時の10年以上先輩の上司とともに企業配達専門のお弁当屋をやらないかということで、お弁当屋『福すけ』を起業しました。病院給食の知識もあったので、忙しい方にお弁当で手助けになるようにという想いで、野菜を多く使って日替わり弁当だけをお昼の時間に配達するというお弁当屋を始めました。」

『福すけ』のお弁当、野菜もたっぷり、お味噌汁付きで550円!ちなみに、お弁当事業に加えて現在は日高市役所の地下にある食堂も、福すけ』が手がけられているそうです。

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では、そんな『福すけ』から、野菜の粉を作る『翔すけ」が誕生したそのきっかけはどんなことだったのでしょうか?

「配達先の福祉施設さんで"ペースト食のおかずをできないか"と言われたことがきっかけの1つで。私達がもともと病院の給食の調理師だったということもありまして、ペースト食をどうやって作るかとか、食事と薬の相性だったりとか、栄養士ではないんですけれどもある程度の栄養の知識があったので、そのままペースト食専門の冷凍惣菜店を作ろうと思ったんですね。でもプランを練っていくうちに、お客様、その福祉施設さんなどから"冷凍だと冷凍庫が結構埋まっちゃうんだよね"とか、"配送となった時に冷凍便だとコストもかかるんだよね"という問題も出てきまして。それだったら、じゃあ茹でた野菜を乾燥させて粉にしよう。そして、それをお湯で伸ばしてペーストにしよう、ということを思いついて。そこから野菜粉末を作るという技術と事業が誕生しました。」

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そして、その【野菜の粉末】こんなコンセプトのもと作られているそうです。

「『翔すけ』の粉末に関しては、アイデアの手助けになるような粉末にしようと思っていたので、"この粉があるんだよ"って提案したときに、その先にお客様がどういうアイデアで何を作るかっていうのをおすすめしながら一緒に作っていくという感じの商品だったので、その1番最初のお客様を見つけるのが結構大変で。そこは今も試行錯誤中です。」

そんな【野菜の粉末】、お客さんの中には、こんなアイディアをフィードバックしてくれた方がいらっしゃいました。

「特別支援学校の先生の方がいらっしゃいまして、その先生が本当にうちの商品をよく研究してくださって。その先生が1番最初に、これはこういう感じでというフィードバックをしていただくような形で購入していただいて。本当にまさに私たちがやりたかった、ちょっととろみっぽい感じの"こういうお粥っぽいの、ちゃんとできてるよ"というリアクションをいただいたり。あとは、その野菜の粉を使って災害の時にビニール袋で蒸しパンを作る。それに災害時、野菜がどうしてもとれなくなってしまうので、野菜の粉をさっと入れて。そうすると、さらに色がついて子供たちがちょっと楽しんで食べてくれる。そんな災害の食事を作りたいということで、それも作ったものを写真で見せていただいたり。本当にたくさんこういうフィードバックをいただいております。」

さらに、この野菜の粉末によって新たな繋がりも生まれました。地元の病院の先生と栄養士さんから 同じく日高市の和菓子屋さん『栗こま娘本舗亀屋』に、こんな相談が寄せられました。

それは、"高齢者に不足しがちな栄養を補って、皆さんが笑顔になるようなお饅頭はできないか?"というもの。

「その栄養士の方が和菓子屋さんに"キクラゲの粉を使って饅頭を作ってほしい"と提案したみたいなんですね。それで、その和菓子屋さんから"キクラゲの粉、作れますか?"と問い合わせがあって。うちがキクラゲの粉を作って、今そのキクラゲのお饅頭...ちょっと黒いなりをしたキクラゲ饅頭。和菓子で高齢の方たちも食べやすいような新しい商品をアイデアを集結させて開発していただきました。商品がアイデアの手助けになりたいと思っていたのを、まさに実現してくださった商品ですよね。つなぐ役割になれたらいいな、アイデアをつなぐ役割になれたらいいなと思っていたら、ほんとにちょっと夢が叶った瞬間というか。」

最後にこんなことを伺いました。『翔すけ』の今後のヴィジョンとは?

"抹茶を何に使うの?"って聞く人ってあんまりいないじゃないですか。"野菜の粉末を何に使うの?"って聞かない、"野菜の粉末はこう使うんだよね"っていう、"何に使うの?"という質問を聞かない世の中になったら、オーバーに言えば規格外の野菜なんてなくなるんじゃないかなと思っていて。それで私たちは、その生産者さんとお客様をつなぐアイデアの点の役割として、もうこれからもどんどん繋いでいく、継いでいくっていうお店でありたいなと思っております。」

『翔すけ』の商品、オンラインでも販売されていますが、9月28日・29日に恵比寿ガーデンプレイスで開催される《SHOP SMALLマルシェ》というイベントに出店されます。こちらへもぜひお出かけください。

『翔すけ』

SHOP SMALLマルシェ