今回は、前回に引き続き、Adoさん 初めてのCDシングル『桜日和とタイムマシン with 初音ミク / 初夏』のHidden Story。

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後編は、Adoさん作詞作曲による、『初夏』のお話を中心にお送りします。まずは、ご自身が作詞作曲を手がけた曲をリリースしようと思った理由を教えていただきました。

「『初夏』は、実は私の今回のアリーナツアー【モナリザの横顔】で先に披露しておりました楽曲でして。Adoの表面的な部分だけを見てほしくない、誰の型にもはまっていないAdoという姿を、誰にも決められてないAdoとして私自身を見せたいという思いが今回のツアーのテーマとして、そして私自身の思いとして怒りを通してそういった感情が芽生えていたので。かつ、私は人生のテーマが自分を愛すること、自分を好きになることですので、自分が背を向けてきたことや自分が向き合わなければいけないこと、自分がやりたいと思うようなことにもっと忠実になってみようという思い、その2つが重なったので。つまり、その怒りと自分自身の部分が重なったので、自分の曲を...もともと『初夏』っていう楽曲は作っていた楽曲だったんですが、それを世に出そうと決めたっていう感じですね。」

Adoとしてリリースはしてこなかったものの、以前から曲作りはおこなっていたそうで、この曲も17歳の頃に書いた曲をベースにしているそうです。

「この『初夏』も17歳ぐらいの時からタイトルは変わってないんですけど。夏っていろんなイベントがあると思うんですけど、花火大会だの、友達となんかお祭りに行くだの。夏って誰かの青春にいっぱいなる季節だと思うんですけど、私はその青春に沿ったことが1度もなくて。特に学生の高校時代ですとかはずっと部屋にいて。遊びに誘う友人もいなければ誘われることもなく、ただひたすら自分の活動に向き合わなきゃいけなくて、自分の歌を歌わなきゃいけなくて、でも周りは平然と遊んでいたりして。で、自分は東京出身なんですけど、夜、自分が部屋にいるときに、遠くから花火の音と花火が打ち上がってるのを見て、私はそこにいないんだっていう情けなさと、もう夏だ...みたいな、そういうやるせなさ。夏という季節も、もともと私はあまり好きではない、どっちかって言ったら冬の方が好きっていうのもあって。夏というものにあまりいいものを持ってなくてで。でも、そんな涼しい部屋の中で見る花火、1人で見て眺めてる花火っていう光景、そんなことをしている自分がなんかどうにも情けなくてっていう思いもあったりして。っていうので、初夏ではないんですが『初夏』っていうタイトルにして、17歳の時、その時感じていた自分の情けなさや自分の思い、それを思い出しながら書き直したっていうのがあります。」

20241101h03.jpgでは、具体的に、歌詞のこの部分についてうかがいました。[最低、酩酊で、ありのままの無茶苦茶な歌詞では救えない命がいくつもある]

「[最低、酩酊で、ありのままの無茶苦茶な歌詞]っていうのは、この『初夏』っていう曲もですし、私が書く歌詞っていうのがありまして。もちろん私もこれまでいろんな歌を歌わせていただきましたし、"私の歌に支えられました"というお言葉もいただきました。でも、私が書く歌や私が書く歌詞にそんな価値があるのかって言われたら、そんな自信もなければ、そもそも自分のことが嫌いだからそんなふうに思える日も絶対に来ない、そんなことはできないっていう。ましてや"歌は歌えるけど歌しか歌えないんでしょ"みたいなことだったりを世間から一部言われたり、あとは"曲が作れないんでしょう"みたいなプレッシャーだったり、ちょっと冷たい言葉を投げられることもあったりして。自分はダメだって思い続けてきた人生の中、自分がなすものや自分が作るものは決して美しいものでもなければ完璧でもないなんなら情けないものだって私は今でも思ってるので、とにかく私が書く歌詞は無茶苦茶だしっていう。しかも最低だし、自分という存在は酩酊で、でもどこかそんな自分にも酔ってて、楽をしててって、そんな自分じゃ救えない命がいくつもあるなっていうので、なんか書いたみたいなのはありますね。書いたっていうか、そういう思いがあります。」

そう語るAdoさんですが、曲の最後にはこんなリリックもあります。[いつの日にか描いた未来は とうに過去になって「何もしらない」 だから ここで歌う]

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「[いつの日にか描いた未来]ってのは、子供の頃思っていた、自室の窓を眺めながら、自室からの窓の景色を見ながら考えてた未来。いつか未来は大丈夫、未来はきっと救われるって思ってきましたが、子供のまま。でも、気づいたらもうその未来にきっと私は到達していて、そして大人になっていて。で、そんなことを描いていた自分はもう過去になっててっていう。でも、私は何も知らないし、何もできてないっていう。何が私にできるかって言われたら、歌うことしかできないんで、何も知らないから歌うことしかできない。だからステージで歌うしかできないっていうので、だから[ここで歌う]っていう。別に感動を、私の歌で感動するもしないも、私がロックかどうかも、どう思うかも皆さんには自由ですが、でも私はここにいるぞっていう。ここにいるから聞きはしてくれっていう思いがありましたので、なんかこういった言葉選びになったのかなって思います。」

いろいろお話伺ってきましたが、実はこのコーナー3年前にAdoさんご登場いただき、その時に、「子どもの頃からディズニー映画のハッピーエンドが好きだった」と語っていただきました。

そこで最後に、Adoさん自身のハッピーエンド、今の時点でどんなことを想像しているのか 伺いました。

「私にとってのハッピーエンドっていうのは、まず自分の叶えたいことを全て叶えるっていう。今の自分の目標は、世界中に日本の素晴らしさを知っていただくきっかけの1つになるっていう。そして日本のためになるっていう、私の存在が日本の役に立てるようになりたいっていう思いがあるので、誰かの役に立った上でその事実を見て、私は自分のことを好きになりたいっていう思いがありますので、それを叶えるところが明確な今の人生の1番の目標ではありますし。でも、それで私の人生が終わるかどうかはそこで考えるので。そうですね、今のところの私のめでたしめでたしみたいなところは、そこにしたいなと思っております、一旦の。Ado2はちょっと後で考えるので、Ado2とかAdo3とかは後で考えるので(笑)、Ado1の終わりは一旦そこにしたいなっていう気持ちです。」

Ado