今回は、北海道北部、音威子府村にある『名徳牧場』と、名徳牧場が開店したジェラートのお店【ジェラテリア ザ グリーングラス】のHidden Story。

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『名徳牧場』のオーナーは、名徳知記さん。実は、大阪ご出身です。そんな名徳さんが酪農を志すきっかけは、どんなことだったのでしょうか?

「自分が酪農を志したのは、中学生の時に北海道に旅行に行く機会がありまして。出身が大阪府なんですよね。それで、大阪では見ることのできないような風景がすごく広がってたんです。それで、その風景を見て、漠然と北海道に住みたいなとその時から思うようになりました。それで1番最短で北海道に住むのはどうしたらいいかなと考えたんですけれども、大学に行くのが1番早く北海道に住める機会かなと思って。無事に北海道の大学に入れて、そして北海道にせっかく住むっていうのであれば、一次産業というイメージがすごく強かったので、漁業とか農業とかそういったことに従事したいなと思いました。その中で、酪農は広い草原の中に牛がいるという、ザ・北海道みたいな景色の中で仕事ができると思って酪農を志すことにしました。」

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そして、名徳さんは大学卒業。さらに大学院修了後、酪農を始めるべく、動きます。

「酪農のオーナーになりたいなと自分は思ってて、牧場を譲ってくれる人をずっと探してたんですよね。ただ、その当時は、やっぱりお金と経験を持ってる人、そういう方に来てほしいっていう。当たり前なんですけれども、そういう情勢だったので結構色んなところで断られたんです。それで、たまたま今の自分が住んでる音威子府村が27年ぶりに新しく農業を始める人を募集するというのと、あとは、酪農の牧場を譲ってもいいという人が出たという話を聞きまして。最初は音威子府村が全くどういうとこかも知らなかったし、検討もしてなかったんですけれども、"音威子府村、せっかくなんだからちょっと話聞きに行ってよ"みたいな。そういうようなこともあって、実際に音威子府村に話を聞きに行きました。その時に、村長さんだとか農協の理事さんとか議員さんとか、あとは農業委員の会長さんとか、村の偉い人たちがたくさん待っていてくれて。"自分はお金も技術もないんですけれども、それでも牧場のオーナーになるのが夢で、やりたいんです"という話をさせていただいたら、"全部面倒見てやるからうちに来い"と言っていただけて、それで音威子府村に移住させていただきました。」

北海道北部、旭川市と稚内市のほぼ中間に位置する音威子府村。札幌からですと、車で北へ3時間以上かかる場所にあります。2015年3月、名徳さんは音威子府村に移住。2年間の研修を受け、その後いよいよ牧場を引き継ぎ、『名徳牧場』が誕生しました。

「自分の理想としてる牧場というのがまずやりたくて、ザ・北海道という感じですね。ひとつは放牧という形で牛を飼ってまして、広い草原の中に牛を放して牛が草を食べるみたいな。実際そういう飼い方をするのって、北海道の牧場のオーナーさんの中でも超少数派なんですけれども。自分はそのイメージで北海道に来たので、そういう飼い方をさせていただいてます。」

『名徳牧場』がおこなうのは、放牧による酪農。そして目指すのは、《100年後も続く牧場》です。

「今、音威子府村で唯一の牧場になってしまいまして。もともと牧場のオーナーになった時は5軒ぐらい牧場のオーナーさんがいたんですけれども、高齢化などありましてどんどん減っちゃって、うち1軒になったんですよね。なので、100年後も続く村の牧場になろうと思っておりまして。もちろん放牧とかそういうイメージ作りもそうなんですけれども、例えば、なるべく自分のところで採れた草で牛を育てるとか、外から買ってきて入れるものをなるべく少なくするということで、うちで採れた草を食べた牛がフンをして、そのフンを堆肥にして、それを牧草地の方に撒いたりとかして、それを栄養にまた牧草が生えてくる。ずっとぐるぐる回るような仕組みを作りたいなという風に思ってずっとやってます。」

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さらに、名徳さんは、去年の秋、ジェラートのお店【ジェラテリア ザ グリーングラス】をオープンしました。でも、なぜジェラートのお店をやろうと考えたのでしょうか?

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村人とか、周りの人たちから"牧場の乳製品使って何かやってよ"みたいなお話はいただいていたんですよね。村人からすると、うちの村の村章がサイロをモチーフにしていて結構酪農とともに発展してきた村なんですよね。それが、酪農が1軒になっちゃったっていうのもあって、やっぱり村民自体が酪農に対するその思い入れが結構強いんですよね。自分としても、牧場始めた時から、こだわりの牛乳・生乳を使って何か商品作りたいなというのもずっと思ってたんです。それで何を作るかなってなった時に、自分子どもの頃の夢が《お菓子の国に住むこと》でして。うちの牧場の生乳を使ってお菓子の国できないかな?と思った時に、ジェラートがいいなと思いました。ジェラートってもちろん甘いですし、色んな味が作れるんですよね。なので、自分の子供の頃の夢が実現できるかなと思って。ジェラートにしたいなと思うようになりました。」

ちなみに、特に冬は寒さの厳しい北海道。冬でもジェラート屋さんは営業されているのでしょうか?

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「冬も営業させていただいてます。冬も結構盛り上がったりとかすることもあって、それこそ大晦日に夜の9時から2時までオープンというのをしまして。そしたら、村にゆかりのある人たちが大晦日帰ってきてたりとか、ご家族とか。外がマイナス15度なんですけれども、すごい行列が大晦日にできたりして。ショーケースの温度はその時マイナス12度だったので、ジェラートもらって外で食べてると、どんどんジェラートが固くなってくるという。皆さんそれでいい思い出になったって、すごい言っていただきました。」

『名徳牧場』、そしてジェラートのお店【ジェラテリア ザ グリーングラス】を手がける名徳知記さん。最後に、今後のヴィジョンを教えていただきました。

「うちのお店で美味しいものを作って、皆さん食べて喜んでいただけて、その輪がこうどんどん広がって。音威子府村だけじゃなくて、北海道とか、それこそ本州の方もどんどん広がったりとかして、うちのお店の名前が有名になってくれば、外からうちの村に来る人がどんどん増えるかなと思っていて。"ジェラテリア ザ グリーングラスってどこにあるの。""音威子府村っていう村らしい"みたいな。"北海道旅行に行ったら行ってみようかな"という、そういう切り口からスタートして。うちの村、もちろんジェラート屋さんだけじゃなくて、そばが有名なそばどころだったりとか、他にも楽しめるものがあるんですよね。そういうので、どんどん人が増えて、村がどんどん有名になるというか、たくさん人が来るような村になるというような形で貢献できれば嬉しいなっていう風に思っています。」

名徳牧場

ジェラテリア ザ グリーングラス