今回は、飾り付けのアイテムを製造、販売するブランド『SOL LUNA』のHidden Story。

20241122h01.jpg

今回は、『SOL LUNA』の代表・堀口安奈さんにお話をうかがいました。『SOL LUNA』は、日本に暮らす外国人女性が持つ課題を解決することが一つの目標、ということ。まずは、このことについて堀口さんに教えていただきました。

「南米から来た女性たちと一緒に運営をしているんですが、彼女たちはいわゆる出かせぎとして来日していて、工場であったり単純労働に従事しています。で、彼女たちが日本で工場で働く中で日本語を使う機会がほとんどなく、日本で長時間生活をしていてもなかなか日本語が上達しない、学ぶことができないという現状があり、どうしても日本の社会から取り残されてしまう、孤立してしまっているという状況があります。そんな彼女たちなんですけれども、日本で子どもを育てている当事者でもあり、その子どもたちもやはり親の不安定な生活環境の影響をものすごく受けるんですね。例えば、親が孤立していることでなかなか日本社会と繋がれない。例えば、学校でもなかなかとけ込めないであったりだとか、日本語は話せるけれども学習についていけないという現状であったりだとか。親だけではなくて、どうしても子どもに影響しているという状況があります。そういった不安定な生活環境から抜け出すには、特に女性たちが日本社会と繋がって孤立を防ぐためにはどうしたらいいんだろうと思った時に、まずは彼女たちを経済的に安定させる手助けをしたいと思って『SOL LUNA』を立ち上げました。」

堀口さんがこのような社会課題に気づいた背景には堀口さん自身の経験がありました。

20241122h02.jpg

私自身も母が南米のコロンビア出身でして。父は日本人なんですけれども、そういったバックグラウンドがあります。ただ、私の母自身は日本語を話すことができたので、例えば日本人のママ友を公園で作ることができたりして日本の社会と繋がることができていたんです。なので、私が3歳の頃にあった阪神淡路大震災の時にも、本当に周りの日本人の友人と助け合ってなんとかその苦しい状態を過ごしたということがありまして。やはり私も前々から日本語ができることであったりだとか、周りとコミュニケーションを取ることで孤立を防ぐことが、やはり日本で生活する上において、とても重要であることをすごく認識していたんです。」

兵庫県ご出身の堀口さん、阪神淡路大震災の時の経験をお話しいただきました。子どもの頃の経験に加え、堀口さんは大学時代に外国にルーツを持つ子どもたちの学習支援活動。さらに、NPOで外国人支援。

また、大学院での研究を通して、この課題の解決のためには、まずは親のサポートが必要だと考えるようになりました。そこで、外国人の女性に自信を持ってやってもらえる仕事を生み出そうと考えたのです。

「私がNPOで働いていた時に、イベントの装飾をしたいなと思ったことがありました。その時に、その地域でお祝いごとのデコレーションを担当していたペルー出身の女性がいて。南米ってすごくパーティー文化が盛んな地域でして、子供のお祝いの日・誕生日などのお祝いにはものすごく盛大にお祝いしているんです。その方は独学でパーティーのデコレーションを学んでいらっしゃった方なんです。本当にすごく技術があるので、"こういったパーティーのデコレーションを仕事にしてみないの?"と尋ねたことがあったんですけど、その時に"私はずっとそれが夢だなとは思っているけれども、日本語ができないし無理だよ"と言われてしまって。言語の壁によって夢を諦めざるを得ないという状況を目の当たりにしたことが心に残っていたんですね。それがずっと私は忘れられなくって。何かソーシャルビジネスの形で生み出そうと思った時に、真っ先に顔が浮かんだのは彼女でした。」

その女性、ペルー出身のエリカさんと一緒に、飾り付けのアイテムを製造・販売しようと考えた堀口さん。さっそく、エリカさんと一緒に試作が始まりました。では、どんな飾り付けを作ろうと考えたのでしょうか?

「海外からの輸入品のものがすごく多いので、サイズが結構アメリカ規格と言いますか海外サイズなんですよね、飾り付け自体が。なので日本のお家で飾ると、壁一面に飾り付けが貼られて、写真で全てを画角に収めるようにした時に赤ちゃんの顔がすごくちっちゃくなるんですよね。なので、日本の狭い住環境だからこそ、ぎゅっとちっちゃいコンパクトな飾り付けにしてシンプルにすれば、飾り付けをしたことがない人でも簡単に飾ることができるし、赤ちゃんと一緒に写真を撮った時に写真の主役が赤ちゃんになるような商品を作れるんじゃないかなと思って、試作から始めました。」

20241122h03.jpg

『SOL LUNA』の商品は、2018年ごろから販売スタート。現在は、ペルー人の女性3人を含むスタッフ6人で飾り付けのアイテムの製造・販売を続けています。商品を使ったお客様から、こんな反響が届いたこともあったそうです。

「"『SOL LUNA』のセットを購入したことで、本当に思い出深いお祝いになりました"と書いてくださったお客様がいて、そのレビューをエリカに伝えた時に本当に目をうるうるさせながらエリカが"私は日本に住み始めて15年が経つけれども、初めて日本社会に認められた気がする。子供のお祝いっていうものすごく大切な日、そんな大切な日に私が作った商品を選んでくれて、レビューまで書いてくれて。こんなに嬉しいことはないし、本当に初めて社会に認められた気がする"と言っていて、私は本当にそれがものすごく印象的で。だって、15年も日本で生活しているのに社会に認められた感覚がないという。これまでは本当に孤立していたんだなと実感もしましたし、自分が誇りを持てるような仕事をすることがどれだけ彼女たちのエンパワーメントに繋がっているのかなっていう風に実感した経験でしたね。」

20241122h05.jpg

最後に、『SOL LUNA』の今後のヴィジョンについて、堀口安奈さんにうかがいました。

「まずは目の前の当事者をひとりひとりサポートしながら、彼女たちが孤立しないような社会を作っていきたいなと思っていて。それって実は両方向ありまして。私たちは実際の当事者と関わりがあるので、彼女たちをサポートする。で、彼女たちは自分が好きな仕事、自分たちがやってみたかったことにチャレンジしながらエンパワーメントされる、と同時に、私たちはお客様にオンラインで商品を発送する時に、ブランドのストーリーを書いた冊子も一緒にお送りしてるんです。やっぱり、日本でまだまだ外国人女性たちが抱える課題について知っている人は本当に少なくて、いかに外国人の女性たちが孤立しているのかということをお伝えできるタイミングとか機会があればなと思って冊子をお配りしていて。その中で、こうした社会課題が認知されることで、ゆくゆく大きな目で見て、みんなが暮らしやすい社会になるんじゃないかなと思っていて、私たちの大きなビジョンとしてはそこを第一に目標としているところです。」

SOL LUNA』をより広める活動に使いたい、ということ。12月14日(土曜日)に渋谷区千駄ヶ谷にあるポップアップススペースでイベントの開催も予定されています。

『SOL LUNA』

【instagram】