今回は、クリープハイプのニューアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』のHidden Story。
クリープハイプの尾崎世界観さんにお話をうかがいました。まずは、2023年5月に配信リリース、このアルバムでは 3曲目に収録されたナンバー【青梅】について。この曲、マッチングアプリのタイアップソングとして書かれた曲ですが、その曲のモチーフがなぜ、【青梅】だったのでしょうか??
「なんでこれ書いたのか、ちょっと前の曲なので今思い出せないんですけど。でも、恋は幻っていうのと梅干し、ってのが多分出てきたと思うんですけど。なんか2人で酸っぱい顔してる、というのもなんかいいなと思って、なんかどんどん出てきた言葉を合わせて。そうですね、でもこれは初期の曲で【ラブホテル】という曲があるんですけど、それを今やったらこんな感じかなっていうので作りましたね。令和のラブホテルです。令和のラブホテルっていうと変な印象ですけど(笑)」
続いて、この曲についても教えていただきました。大阪のラジオ番組、そして大阪駅の駅ビル「大阪ステーションシティ」とのタイアップソング、【人と人と人と人】
「自分の中の街のイメージって、人と人が隣り合ってるんだけど、でも目が合ってないというか。他人同士、知らない人同士が行き交ってることで、街が生き生きしてるという。人が出会わないことで街が生きてるなっていうのは、曲を書きながら思ったことだったんですよね。なんか出会わなくて、ただすれ違ってるだけでも、それにすごく意味があると思うんですよね。その街の景色というものも誰かが見てる。すれ違ってるのもその他の誰かが見てるし、それを見てる他の誰かも誰かとすれ違ってて、それもまた他の誰かが見てるというか。大阪のステーションシティという場所を改めて見た時に、やっぱりすごく色んな角度で楽しめる場所だったし、なんか人が作ったものが昔から好きで、山とか海とか自然よりも人工的なでっかいビルを見てるとなんか元気が出るんですよね。人ってこんなもん作れるんだなっていうので力をもらってて、街に対する思い入れはあったので。だから、元気ない落ち込んでる時に海に行くとより怖くなる。もう人間が太刀打ちできない自然を見せつけられてる気がして、元気ない時に海行く人とかほんとすごいなと思います。」
そして、【人と人と人と人】というタイトルは、クリープハイプが4人組のバンドである、ということもネーミングの一つの理由なんだそうです。
ちなみに、クリープハイプ、今でも町の練習スタジオに入ることがあるんだとか。
「ずっと、いまだに町のスタジオでやってますね。学祭シーズン、スタジオ取れないですから。通常はもう高校生たちが先に取っちゃうから。でも、そっちの方が大事だから、思い出を作ってもらって、こっちはその余った時間にやらせてもらうっていう。でも、本当にそういうところでやるのは、なんか大事ですよ。楽しんでやってる人たち見れるし。この間、たまたまファンですって言って声かけてもらったんですよ。で、"今練習してました"って言って、楽しそうに。そうだよな、バンドって楽しいもんだよなって。練習って楽しいもんだよなって、忘れてしまいがちなことを思い出させてもらいましたね。」
そして、クリープハイプは先日、現在のメンバーになって15周年を迎えました。続いて、先日、Kアリーナでおこなわれた15周年記念公演でも披露されたナンバー【天の声】について。ライヴでは、尾崎さんの少し長めのMCに続いて演奏されました。
「普段は結構主人公を歌の中で作って、その主人公に何かを託すという感覚なんですけど、これは自分自身として言葉を発していかないと成立しないのかなと思って。そういう時に何を言おうかと思って。このタイミング、15周年という節目でもあったので、ファンの方に改めてどんなことを普段考えてるかとか、ちょっとメッセージ性の強い歌詞を書こうと思って書きました。そういう曲を作って、15周年ライブ当日を迎えて。それで約2万人お客さんがいたので、やっぱりグッズ売り場とかもすごい混雑するんですよね。そういうことでどうしたらいいのかなっていうのをいろいろ考えながら整理券を配ったり、でもそれをやったらやったでその整理券がもらえなかった人から文句が出てしまったり、"ライブ前にテンションが下がった"みたいなことも今SNSで全部見えてしまうので、それを見てこっちのテンションも下がったりしてて。でもなんとかしたいなと思って、そういう人を救い上げるにはどうしたらいいんだろうと。それで、なんとなくMCする時にそういう気持ちになって喋っていったんですけど、結局自分が楽しみにしてるライブに来て、大好きでチケットも買って、時間も空けて来てくれたはずなのに、なんか違うな...っていう。私はそこにいるべき存在じゃないのかなとか。そういう気持ちは自分にもあるはあるので、心当たりがあるので、否定はしたくないけど、でもせっかくだったらやっぱり喜んでほしいし、そこに入ってきてほしいと思って、"自分はそこにいるべきじゃないと思うかもしれないけど、そういうお前にこそ歌ってるんだ"ってMCをしたんですよね。お前っていう言葉とか強い言葉だし、でも本当に伝えたいときに使うべき言葉って、ある程度強い言葉じゃなきゃ届かないところもあるし。好きで来てくれたんだろ、って思って"お前にこそ歌ってる。そういうところからいつもはじかれてしまって、自分には居場所がないんだと思ってる。お前に歌ってんのにな"って話をした後に【天の声】という曲を歌ったんですけど。やっぱり歌いながら自分でそこで理解していくというか。自分がなんで曲この曲作ったのかなとか、この曲はどういう人に歌うべきだったのかっていうのを、その曲を歌う前のMCで自分で喋りながら自分で理解していくっていう。自分自身もその言葉を、自分の言葉を聞いてたし。で、それがお客さんに伝わっていく瞬間っていうのも空気で感じたので、この【天の声】という曲がより特別な曲になりましたね。」
そして【天の声】には、こんな歌詞もあります。《君は一人じゃないからとか そんな嘘をつくよりも、君は一人だけど 俺も一人だよって》
「こっちもそういうところに目を向けて、そういう人を見つけてっていう意識もありますけど、見つけられるって感覚もありますよね。見つかるっていうか。自分も音楽活動してて、選ばれないこともいっぱいあるんですよ。なんかここには入らなかったなとか。やっぱり常に選ばれる立場なので。ダメだったかってこともいっぱいある中で、でも、それでもやるしかないし。そういう思いをしながら活動してるから、その気持ちはわかってるつもりなので。だからこそ、そういう人に向けて歌いたいし、だから本当色んなところに目を向けるというのは、改めてこのメンバーで15年やってきて今、強く感じてますね。」
このあと予定されているツアーのタイトルは、まさに、《君は一人だけど 俺も一人だよって》。クリープハイプの全国ツアーは来年2月に始まります。