今回は、前回に引き続き、アイナ・ジ・エンドさんのHidden Story。後半は、最新アルバム『RUBY POP』のことを中心にお話をうかがいました。

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今回のアルバムは、ファーストアルバム『THE END』、セカンドアルバム『THE ZOMBIE』、そしてKyrie名義の『DEBUT』を挟んで、アイナさん名義としては、BiSH解散後初のオリジナルアルバムということになりました。この制作には、どんな想いを持ってのぞまれたのでしょうか?

「そうですね、BiSHの活動中にソロアルバムを出すって言っても、やっぱりBiSH活動が自分の生きがいであったし第一の大事な守ることだったので、ソロは好きなことをやる、ぐらいの感覚だったんです。なんですけど、そのBiSHが解散してソロしかなくなってるという、その覚悟を持たなきゃいけないんだって気持ちでアルバムを出したので。そういう意味では生まれたてのような、ソロとしてやっと自分の足で立て始めたよっていう、そういうアルバム作りをしたいなって思いました。私のファーストアルバム『THE END』とかは、本当に私小説みたいな気持ちで書いたんですけど、めちゃくちゃ暗くて。もう自分の宿命は変えられないみたいな、ものすごい暗がりにふさぎ込んでいたようなアルバムを出して。それはもうそれで素晴らしい、本当にもう超えられない初期衝動だなと思うんですけど、やっぱりドライブとかで聞けないんですよね。ちょっと爽快感があったりとか、聞いていてキランと光る、きらめきを感じるような楽曲が欲しいと思ったので、今回アルバムの序盤にはドライブで聞けるような、スッと言葉もメロディも入ってくるようなもの並べてみました。」

まさに爽快感があって、きらめきを感じる1曲が、アルバムの2曲目に収録された【Poppin' Run】。

「この【Poppin' Run】は車のCMに書き下ろすことが決まっていまして。その車が黄色くてコンパクトで、ものすごく可愛い形なんですよ。ライトの形もこだわってて。この可愛らしい感じのサウンドって何だろうと思って、とにかく鍵盤でいろんな音色を試したり。かわいいメロディーなんだろうってやってるうちに、どんどん明るくなっていった、という経緯がありますね。やっぱりそういう車が走る、ただ走るじゃなくて、色んなことを抱えて走っていく人生と似ているような。ただのドライブじゃなくて、人生いろいろあるけど、どんな人生だってきらめくことができるんだ、自分の過去の傷跡もアクセサリーにしてこれから輝いていけるんだ、前向きな人生を走っていきたいなっていうことを可愛らしい車と重ねてちょっと作ってみたって感じで、今までで一番自分の傷も受け入れながら明るく進めるような楽曲になったなって思います。」

そして、この曲についても伺いましょう!凛として時雨のTKさんが手がけた【Love Sick】TKさんの曲について、アイナさんはどう感じているのでしょうか?

「やっぱりそのものすごいバランス感ですよね。音がシューゲイズみたいに飽和してる。ギターの音もドラムの音もものすごい。こういう言い方があってるか分からないですけど、混沌としているようなサウンド感なのに、めちゃめちゃ生命力があるっていうか、強い。そこに対してのものすごくギリギリに高いメロディーで歌っていく。その焦燥感と言いますか、ヒリヒリ感みたいな。それがやっぱり人間の生々しさをめちゃくちゃ表現してる。だから、すごく命の息吹を感じるんだなって思うんですよ。TKさんはやっぱ生きた音楽を作る人だと思います。」

もう1曲、なかむらしょーこさんが作曲・アレンジに参加したナンバー、【関係ない】。この曲についても教えていただきました。

「【関係ない】は、《キリエのうた》っていう映画に実は書き下ろしてた曲で。キリエって喋れないんですけど、歌う時だけ声が出せる女の子で。だからそういう叫びみたいな歌はものすごい合ってると思って作りました。なんだけど、劇中では使っていなくて、どこにも世に出す予定がなかったんです。でもほんとに好きな曲だったんで、いつかどこかに出したいって思ってたら今回アルバムに入れることができました。"都会の騒音に関しては、私は関係ない"って歌ってるんですが、これはキリエなんですよね、結構。キリエちゃんは色んな地域、北海道・仙台・大阪とかに行くんですけど、みんなを失って。色んな騒音を経験するんですけど、私はもう関係ない、私は私の人生を歩みたいんだっていう。ちょっと心に秘めた強いエネルギーを歌では放出できる、そういう曲を作ってました。」

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全17曲、さまざまなタイプの曲を収めた最新アルバム『RUBY POP』をひっさげて...現在、全国ツアー〔ハリネズミスマイル〕が開催中です!

「ハリネズミスマイルですからね。やっぱちょっとおちゃらけた楽しいツアーにしたいです。毎回グッズの歌とかも作ってるんですけど、今回めちゃくちゃ明るいし。♪ハリハリネズミスマイル、ってずっと言ってるんですけど(笑)。なんかそういう、ちょっと来てくれた人がみんなニヤケつける、来てよかったかもな、こいつのライブめっちゃ良いなあって思ってもらえる、そういうツアーにしたいと思ってます。」

最後にうかがったのは、 アイナ・ジ・エンド という名前について。[それまでのアイナを終わらせる]という意味で、BiSHとしてデビューするときにつけた名前、アイナ・ジ・エンド。この名前について、今はどんな想いをお持ちなのでしょうか?

「アイナ・ジ・エンドと名前を自分でつけた時は、やっぱり本当にうまくいかない日々が嫌で。BiSHになって夢を叶えるんだって、今までの自分を終わらせるんだって本気で思ってそうしたんですけど、気づけば過去があったから今あるんだなって思えるようになってるので、過去も一緒に連れていこうって考えるようになりました。だから、今後もこれからも色んなことを経験するけど、ちゃんと大事に抱えて、どんな経験もこぼさないように向き合って生きていきたいなって。そしたらいつの間にか、アイナ・ジ・エンドのジ・エンドがなくなってるかもしれないですよね。アイナっていう名前でやってるかもしれないし、何があるか分からんけど、どんなことも抱えて生きていきたいなと思います。」

アイナ・ジ・エンド