今回は、ONE OK ROCKのニューアルバム『DETOX』のHidden Story。
前作2022年のアルバム『Luxury Disease』の際にもこのコーナーにご出演いただいた Takaさん。その時には、ロックをメインストリームに戻すべく、ロックを追求したと語ってくれました。
アルバムリリース後、北米ツアー。2023年には バンドMUSEのオープニングアクトとして北米、そしてヨーロッパでのツアーもありました。
そんな中、今回のアルバム『DETOX』は、いつ頃から、その構想を練っていたのでしょうか?
「これは実は、この『Luxury Disease』の制作に入った時か、もしくはその前ぐらいからなんですけど。僕いまロサンゼルスで生活をしてるんですが、アメリカは大統領選挙というものが4年に1回ありまして。僕はアメリカ国民ではないですけど、住んでる上で全アメリカ人が注目する選挙で、やっぱり右と左の攻防戦というか、国民はどちらか2つから1つを選ばなきゃいけないという図式なので。まさに僕は住んでて肌で感じるのが、このまま行くとどういう世の中になっていくのかなっていう不安はやっぱり少しあって。で、その中で、この4年後に行われる大統領選挙によって世界が大きく変わることっていうのは皆さんご存知の通りだと思うんですけれども、その中でやっぱりロックバンドとして、この混沌とした世界・時代にどういう作品をぶつけていくかってことはすごく重要だと思ったんですね。なので、今まで以上に政治的で攻撃的でヘビーなアルバムにはなるんですけれども、やっぱりそこに対してどういうアプローチをしていくか、聞いてくださってる方たちにどういうもので提供するのかっていうのをすごく考えて考えて、アルバムを『Luxury Disease』を作ってる時から自分たちの中で構想を考え、しっかりと今回の作品に向けて練ってったって感じですかね。」
もう少し詳しく聞かせていただきたいです。アメリカの大統領選について、どんなことを考えていたのでしょうか?
「間違いなくそこで起きる結果によっては大混乱を生むということと、今よく世の中で言われてる分断的な。もちろんやっぱり考え方が違う2つの政党ですから、どっちかに移行するということは、当然その反対側にはそれをこう好ましく思わない人たちもいるという。ただ、やっぱり今の世の中っていうのはあまりにもおかしな感じになってきてると僕は感じるので。そしてこれから新しい政策を進めていく新しい大統領、トランプになりましたけど、その中で苦しんでしまうかもしれない人たちに対しての僕らなりのメッセージ、もしくはこれから新しいことを進んでやっていこうとしてる人たちに対する僕らのメッセージ。あくまでも世界平和というものをしっかりと念頭に置いてアルバムを作りたいなということを、すごく自分の中では結構、確信的な感じで作っていったという感じですね。」
そして、そんなニューアルバムのメインのプロデューサーは前作に続き、Rob Cavalloさんです。
「彼は今までプロデュースしたアーティストの中にMy Chemical RomanceというバンドだったりGreen Dayというバンドがいまして。特にGreen Dayの場合はですね、何枚か前に出したアルバムで政治的なことを歌ったアルバムがあって、それが大ヒットしてるんですけど、僕ら的にもこのタイミングでこういう政治的な話をしなければいけないんだという話をロブとも話して。彼、今僕らのアメリカのマネージメントをやってくれてるので、そういう部分でも全体の絵をしっかりと確認し合いながら、なぜ今回このアルバムを作らなければならないのかということを結構綿密に打ち合わせをして、それで彼がおこなってるサウンドプロデュースの面で、今まで彼が築き上げてきたそういう怒りだったりとかパンクの精神というものを音で表現する時に、彼の力を存分に借りてメンバーが録音していくという、そういう感じでしたね。」
Green Day、2004年の『American Idiot』。
2003年、アメリカのブッシュ政権が始めたイラク戦争へのメッセージを込めた内容のアルバムでした。こうした作品のことも思いながら制作がスタートしたONE OK ROCKのアルバム『DETOX』。
収録曲の作詞作曲は、ここ最近、Takaさんがチャレンジしてきた、[コライト]=複数のミュージシャンが一緒に作っていく、というスタイルをとっています。
ただ今回は、そのコライト、そしてプロデュースに参加するプロデューサーには、ある課題が科されたとか。
「実はこのアルバムの制作に入る前にですね、30ページから40ページ程度のバイブルを作りまして。このアルバムの説明書というか、そういう僕が作ったものをお配りして。で、それを読んでいただいて共感していただければこの制作のチームとして一緒にやっていただけるっていう、そういうような形で今回はチームを作ってったので、かなり皆さん最初から僕らのこのアルバムのテーマというのは頭に多分たたき込んだ状態で参加していただいてるんで。今までずっと一緒にやってきた人間もいますし、新しく入った人間もいますし、イギリス人もアメリカ人も、本当に人種・カルチャー関係なく、このアルバムのテーマに寄り添っていただける人間だけで構成されてるという感じですね。」
30ページから40ページにもわたる、アルバムコンセプトの説明書。気になる、その内容。どんなことが書かれているものなのでしょうか?
「日本から見たその歴史的な観点も踏まえて、僕たちが今感じてることを日本人として皆さんに知っていただく。これはやっぱりポリティカルな内容なんですけれども、やっぱり戦争を知らない僕らからすると、そういったことに対するアプローチってすごく難しいと思うんですよね。僕の先祖は亡くなってるかもしれないですけど、僕の今見てる人たちは亡くなってるっていう認識がないので、やはりそういったところはかなりセンシティブなんですけど、でも知らないことがたくさん僕自身も勉強させていただいてありましたし、やっぱり、そういったことが2度と起きないようにっていう思いを込めながら作ってはいるんですけど。どっちが悪い、どっちが正しいってことは、どこまでいってもこの世界ではないと思うんですけど、ただ、その状況の中で起きてしまった悲しい出来事っていうことは現実の世界に必ずあって。そこに対して目を向けてもらう、そして考えてもらうってことですね。もう同じ過ちを繰り返さないために。で、アメリカと日本の関係から見た時に、アメリカ人が多分この本を見たときにウッとなる部分はあると思うんですけど、原爆のことに関してはかなり深く切り込んで本には書いてあります。でも、あえてそれは消化していただいて、一緒に世界を平和に導こうっていう。そういうことでかなり僕もインタビュアーをつけて、しっかりと文字起こしして本を作ったっていう感じですね。」
取材の中で、Takaさんが繰り返した言葉は、《世界平和》。現状に対する怒りを含む激しさと、それでも忘れない希望、平和への願いを込めたアルバムが、『DETOX』!
「僕としては、世界を回る日本のロックバンドという視点から、アメリカに住みながら世界から日本を見て、日本から世界を見てという立場で、なかなかそういう立場で物事を発言できるミュージシャンというアーティストもいないなっていうのが自分の中であったので、これを絶対に逃してはいけないチャンスじゃないかという。僕ら的にはこれを伝えることによってバンドとしても成長できますし、もう僕らに与えられた使命だと思って今回向き合わさせていただきました。」