今回は、前回に引き続き、ONE OK ROCKのニューアルバム『DETOX』のHidden Story。
このアルバムは、前作2022年のアルバム『Luxury Disease』のリリースよりも前から、2024年にアメリカ大統領選挙があることを見込んで 構想をスタート。
アルバムのテーマは、分断が進む社会に、世界平和のメッセージを届けること。Takaさんが書いた30ページ以上にも及ぶコンセプトブックを読んだミュージシャン、プロデューサーが制作に集うこととなりました。
前回、ONE OK ROCKは コライトという複数のミュージシャンと一緒に作詞作曲をするスタイルをとっているとお話いただきました。
その制作が本格的に始まったのは、2023年。Museのオープニングアクトとしてツアーを回っている期間だったそう。
「制作は、実は今回Museのツアー中に2週間ガッツリ空けて、フランスの南の方で一軒家を借りてですね、そこにアメリカからイギリスからプロデューサーも何人も呼んで、僕らもそこにステイして2週間合宿・キャンプみたいな感じで曲を作り続けるっていうのが1番最初のスタートでした。プロデューサーもいっぺんに全員呼んだんで、もうそれこそ20人ぐらいですかね、最終的には。大所帯でしたね。メンバーそれぞれが家の中にコーナーを作って、そこでプロデューサーが回りながら、今日はこの人、明日はこの人みたいな感じで曲を。4セクション、3セクションあるんですけど、それが全稼働してる場合は1日でやっぱり3曲4曲っていうのは上がってくるので、2週間で単純計算。本当にもう膨大な数の曲がそのライティングキャンプで出来上がって、そこからさらにこう詰めていくっていう作業をしてました。」
アルバムに収録された曲で最初に世に出たのは、2024年7月リリース、映画[キングダム 大将軍の帰還]の主題歌【Delusion:All】。
「この曲自体が、歌詞の中にもあるbastard democracyっていって、民主主義の崩壊という。そういうことをこうテーマに歌ってる曲なんですが、[キングダム]自体は映画で中国の歴史のお話というか、中華統一というものを掲げたキャラクターたちが試行錯誤の連続の中で自分たちの場所を広げていくという椅子取りゲームみたいなことを、多分昔からやってることのお話なんですけど。僕自身、この曲に込めたメッセージっていうのも、今のこの世界で起きてること自体が本当に正しいのかどうかっていうこと掛け合わせながら作ってったっていう部分はあるので、こういったメッセージをあえてこの[キングダム]という皆さんが期待してる映画の中に少しメッセージとして、少しというかかなりなんですけれども、入れることによって皆さんがこの曲を聴いていただいて、で、僕らのライブに足を運んだ時に拳を突き上げて一緒に歌っていただければ、それが結果的に世の中に映像として配信された時に、日本人がどういう気持ちでこの曲を歌ってるのかっていうことが少し海外の人間にも伝わるんじゃないかなという。そういうちょっと意図もありまして、今回はこの強めのテーマを入れた曲を[キングダム]におくらせていただいたって感じですね。
そして、こんな曲も収録されています。
日本テレビ系報道番組〈news zero〉のエンディングテーマ【Dystopia】。
「実際問題、やっぱりニュース番組っていうのは色々な報道の仕方がありますけど、やっぱりしっかりと視聴者だったりとか国民だったりとか世界の人々に対して責任を持って誠実に真実を伝えるものがニュース番組だと思うんですよね。考え方、人それぞれ、右だったり左だったりあると思うんですけど、その中でやはり中道を目指すというのが僕はニュース番組のあるべき姿だと思いますし、そういうものに対して強いメッセージを持っている楽曲が届くことによって、タイトルはなかなかのタイトルなんですけど、歌詞を聞いていただければその中に光を探しているんだなということが分かるんじゃないかなという感じで。やっぱり、必ずそこに光があることを信じれないと今の世の中は生きていくことすら難しくなってしまう状況にあると思うので、本当に世の中で色んな人たちが大勢の人たちが苦しんでいる状況はいまだに多分変わらないんですけど、そういったことに対して目を向けながら僕ら自身もミュージシャンとして、ロックバンドとして、その先にある光っていうものを信じてるんだっていうことを歌に乗せることによって色んな人たちがそれで救われればいいなという思いですね。」
そして、この曲についても伺いましょう。【Puppets Can't Control You】。
「タイトルはまさに"操り人形は僕たちをコントロールできない"という意味がありまして。操り人形っていうのは、やはりその何か目の前に立っている、そういう人たちが実は物事を決めてるわけではなくて、もはや決められないところまで来てしまっているという。なので僕らは僕らの信念をしっかりと持って、何が正しくて何がいけないのかっていうことをやっぱ追求する必要がある。やっぱり色んなことが最初はピュアなところから始まってもですね、そこに慣れてしまって、どんどんどんどん、時代とはそぐわないような、いわば搾取的な考え方が満ち溢れながら自分のことしか考えない人たちっていうのがすごく増えたと思うんですね。で、このタイミングでやっぱりそういったことに対してしっかりとピリオドを打たないと、このまま行くと大変なことになってしまうんだよという僕らなりのメッセージというか、そういうものはすごくこの曲の中には入ってるかな。全体的に入ってるんですけど、特にこの曲入ってるかなと思います。」
非常にポリティカル、政治的で、怒りを含んだ激しさを持つアルバム『DETOX』。
このアルバムをリリースすることは、ONE OK ROCKがおこなってきた〔世界への挑戦〕の日々の中、どんな意味を持つのでしょうか?Takaさん、教えてください。
「僕らが奇跡的にアメリカだったり世界というものを目指した10年前ですね。本当に『Luxury Disease』でも言ってたんですけど、ロックのカルチャーがもう一度戻ってくる。だから、戻ってくるっていうのは、イコールやっぱり何か怒りに満ち溢れてる人たちがいるっていうことだと思うんですね。だからこそ今まで平和だったというか、無視し続けてきたそういった怒り。そういうものが、僕らもアメリカ・世界で10年間活動していく中でやっぱり見えてきて。それでいて、やっぱり僕らが日本人として世界を回るバンドだからこそ伝えなきゃいけないメッセージっていうのが僕らなりに出てきて、今こういう作品を作ってるんですけど、こういう作品に、テーマに僕らが10年かけて出会えたことは、やはり海外で諦めずに挑戦をする自分たちのすべてがここに答えとして出てるんだと僕は思ってるんですね。なのでこの作品を機に、さらにONE OK ROCKが世界で認知をしていただいて、日本というものにさらに目を向けてもらって、日本という国がどういう国なのか、日本の状況が今どういう状況なのかっていうのを改めて僕らを通して世界の人たちが見てもらえれば嬉しいなっていうことが根底にはあるんですよね。僕らもうロックバンドで20年やってきたんですけど、ここからは本当に、世の中のためにというか自分たちの旅というよりかは、本当に世の中の人のためにロックバンドとして何ができるかってことを真剣に考えなければいけないのかなっていう、そんな気持ちですね。」