今回は、和歌山県のスナック生まれのスナック専門店、定番商品【あんバタースコーンサンド】が人気となっている、『an and an』のHidden Story。

『an and an』を立ち上げたのは、和歌山県和歌山市の歓楽街にある『Quattro』というスナックのママ内藤ひさみさん。

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「『an and an』のきっかけは、それこそ2020年のコロナ禍が100パーセント大きなきっかけになるんですけど。休業とか営業時間も短縮されたりでお店がオープンできない状態になってきた時に、もう手の打ちようもなく、私よりもスタッフの女の子たちに不安とがっかり感がすごくあって。彼女たちを守らなきゃいけないことと、それから、全然違うことをやってこっちに希望があるよというのを見せたかったので、お菓子を作って、お客様に今は会えないけどお客様に持っていったり売ったりしようという話で立ち上げました。」

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コロナ禍で休業を余儀なくされ、お菓子を作ってお客様に持っていこうと考えた。ですが、内藤さんやスナックのスタッフの皆さん、お菓子作りの経験はあったのでしょうか?

いや、もうお菓子作りは私もスタッフも誰も経験がなくて。でも、私が商工会議所に入会してまして、結構、日本中、商工会議所の関係で出張に行った時に色んな県のスナックに行かせてもらったんですけど。その時に、どのスナックもあまり地域感のある、特色のあるスナックが少なくて。せっかく飲みに行ったんだから、その土地を感じるものを出したりとか買ったりとかできるお店があればいいのにな、という思いがずっとありまして。それで、コロナになる前から、スタッフたちには"何か和歌山市の名物になるようなものを自分たちが作れたら面白いのにな"という話はしてました。」

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和歌山市の名物になるものを作りたい。そこから【あんバターサンド】には、どう繋がっていったのでしょうか?

「あんバターサンドにしようと思ったのは、私の親戚が和歌山市で日本一古い製餡所を経営してたんですね、当時。そこの社長がおばさんだったんですけど、おばさんにお話聞いていたら、製餡所、つまり、あんこを卸す会社だったので和歌山の観光地さんなどに卸しに行ってたんですけど、やっぱり観光地もコロナでお客様がいらっしゃらなくて、かなり売り上げも落ちてて大変なんだよという話を聞いて。じゃあ、そのあんこを使って自分たちもお菓子を作ってちょっとでも足しになったらなという思いと、せっかく日本一古い製餡所が和歌山市にあるのに日本中の皆さんあまり知らないだろうなと。日本一古い製餡所が和歌山市にあるということで、名物になっていけばいいなという思いで、あんバターサンドを作ろうと決めました。」

今はもう工場を閉じられたそうですが、当時、日本一古い製餡所が和歌山にあって、そこを経営していたのが、内藤さんのおばさんだった!

そこで、あんこを使ったお菓子、あんバターサンドを思いついたということ。しかし、お菓子作りの経験がない内藤さん。レシピはどうやって考えたのでしょうか?

レシピをどうしようかってなった時に、和歌山の友達でパティシエさんがいらっしゃったので、その方に相談して。その方が今、東京でスマイルズっていう会社にいて、"レシピはもちろん僕はあげられるけど、そういうデザインとかいろんなことは僕は教えてあげられないから、もしよかったらスマイルズさんに相談してくれたら、みんなでいろんなことを分担して仕上げられますよ"というお話を聞きました。」

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スマイルズといえば、遠山 正道さんが創業された、Soup Stock Tokyoを立ち上げた会社です。そこの社員の方がお友達にいらっしゃった。そのお友達とは、葛川 敬さん という方で和歌山にあるフレンチの名店『hotel de Yoshino』でシェフ・ド・パティシエを務めた経験のある方でした。

さらに、『an and an』という名前も...。

「『an and an』という名前も、"スマイルズさんにお願いします"とお願いした時に、今でもすごく覚えてるんですけどスマイルズの会社に訪問した際に、そのパティシエの上司の方、当時社長さんだったと思うんですけど、遠山さんという方が"ずっと温めてた名前があるから、内藤さんの今回のプロジェクトにぴったりだと思うから、ぜひ"って言って、『an and an』という名前と、文字もその遠山さんが書かれた文字のままをもらって。その時、わたし小さいスナックで、もう全然小さい事業所の私に、こんな大事な名前くださるんだ、と思って感激したのをすごく覚えてます。」

スマイルズが伴走する形で、『an and an』は事業を拡大。最初は、夜の仕事がお休みになったホステスさんが中心となってお菓子づくりをされていたそうですが、その後...。

「しばらくはホステスさんたちが働いてくれてたんですけど、もちろん夜の営業もどんどん再開していくと、ホステスさんは夜の営業に戻る子と、お菓子の方に気に入って残ってくれて今メインで働いている製造責任者の子はホステスさんなんですけど。それで、足らないスタッフさんは、うちを卒業していった女の子たちが子供さんも産んで少し余裕もできたんでお昼だったら仕事できますっていう子たちが戻ってきてくれたりしてますね。すごく嬉しいんですよ。またこの子たちと一緒に働けるようになるんだなって。はじめから狙ってたわけでもなかったんですけど、嬉しかったですね。」

定番商品の【あんバタースコーンサンド】に付けられた名前は、

《ひとり》、《であい》、《わかれ》。

これは、人と人が出会う場所、スナックにちなんでいます。

そんなスナック生まれのお菓子が、今度は様々な場所で、人と人を繋ぎます。最後に、内藤ひさみママの今後のヴィジョン教えていただきました。

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「和歌山市の歓楽街出身の私が、東京駅でグランスタでお店をしてて。商品とかも、もっと良いもの、もっとお客さんに喜ばれるものを作って。で、和歌山の地元の人が"東京駅にあるあの店は和歌山の子なんだよ"って誇らしく自慢とかしてくれたら、すごく嬉しいですし。また、和歌山のお味のものをもっと作って、今度は和歌山のお土産物屋さんとか道の駅とかに置けるようになったら、また嬉しいなと思ってます。」

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